My precious one

有賀尋

I protect my brother

会えた日のことを僕ははっきり覚えている。

薬効体質の僕は研究施設から逃げ出した。

実験のせいで背も伸びず、精神も幼児で止まっているのに、年齢は18のまま、ただただ遠くへ逃げたくて逃げた先は、偶然にもお兄ちゃんのいる組織の前だった。

白衣を着た兄が怖くて、初めて見る人が怖くて。

痛い事をされる。
また変な事をされる。

そう思うと怖かった。

だけど、お兄ちゃんや、ひーちゃんやみっちゃんはそんなことをしなかった。
優しく撫でてくれたり、一緒に遊んでくれたり、一緒に寝てくれたり、抱き締めてくれた。
僕が知らないことをたくさん教えてくれた。

色んな楽しい思い出も、辛い思い出も、たくさん作って乗り越えてきた。

『強くなれ。俺がいなくても生きられるようになれ』

ある時お兄ちゃんはそう言った。

どうして?
甘えちゃいけないの?
お兄ちゃんはどこに行っちゃうの?
またお兄ちゃんと離れてしまうの?

いろんな考えが出てくる中で、僕は「うん」としか答えることが出来なかった。

甘えちゃいけない。
お兄ちゃんを守れるくらい強くなりたい。

今でもずっと思っている。

今まで守ってもらった分、今度は僕が守りたい。
離れたくない。

「強くなれ」と言ったお兄ちゃんだけど、たまに甘えさせてくれる。

僕はそんな兄、怜が大好きだ。


.........絶対に言わないけどね。

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