腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

57話 幕開けのベル

魔神領南の丘。
「んぐ〜!んぐ〜!」
頭が地面に埋まり足をバタバタとさせている少年が苦しそうに叫ぶ。
するとその場に1人の天使が舞い降りた。
「…何やってんですか?…エト様…。」
「ん〜っ!ん〜っ!」
「はいはい、今助けますよ…。」
ズボッ!
天使はエトと呼ばれた少年の足を掴み引き抜いた。
「ぶはっ!はあ…死ぬかと思った〜…。」
「ご冗談を。あなたは創造神でしょう?死ぬなんてことはありませんよ…。」
「む…つまらないこと言うな〜。…ザドキエル。」
「真実を言ったまでですよ。それよりもエト様…1週間も神界に戻らずに何をしていたんですか?ずっと探していたんですよ?それになんか埋まってるし。」
「1週間埋まってたんだよ!ていうか君の力があれば普通に見つけ出せたよね?なんで1週間もかかったのさ?」
「…」
「もしかしてめんどくさくて探してないとかないよね?こっち見て話しなよ。ねえ!ザドキエルってば!」
「…無事でよかったです。」
「話しそらした!」
「…そんな事よりもどうしてこんな所に埋まっていたのですか?」
「そんな事って…はあ…もういいや…。ちょっとね…。見解を改める必要があるね。」
「?…何の話ですか?」
「僕が言いたいのは魔神のことについてさ。」
エトはザドキエルに手を握る。
すると景色は変わり、神界のエトの部屋に変わっていた。
「ふぅ…転移魔法って便利だよね〜…。」
「…魔神…サラについての見解…ですか?」
「そう。…甘く見すぎていたよ。彼女は封印されている間にも強くなっていた。」
「封印されている間に?」
「うん。彼女の強さはもう僕にも制御出来ないかもしれない。」
「エト様に?」
「うん…彼女の強さは…僕や優くんすら凌ぐ…。」
「まさか…!もしかしてエト様…魔神と戦ったんですか?」
「うん。それであのザマさ。創造神のメンツ丸つぶれだよ。」
「…いかがなさるおつもりですか?」
「別に?何もしないさ。サラを丸め込まなくたって優くんは必ずハーディスと対決する。彼女を敵に回したら僕もしかしたら死んじゃうかもしれないし。」
 「あなたがそういうのなら間違いないのでしょうね。」
「ああ。それよりもこっちでは色々起きたみたいだね。僕の配下の天使がかなり減っているようだけど?」
「…申し訳ございません。あなたを狙った刺客の対処に手こずりました。」
「…僕を狙う刺客ねえ…。邪神の復活に合わせて僕は処理しておきたいんだろうね。君の部隊がこんなにも手こずったってことは同じ天使なんだろう?その糸を引いたほかの神がいるはずだ。」
「!…まさか…。」
「…どうせこれも聞いているんだろ?」
「!」
エトは何もいない空間に話しかける。
「この気配は前に感じたことがあるね…。破壊神の元の天使長が何の用だい?…アザゼル。」
すると何も無い空間が歪んだ。
そこから金髪の男の天使が姿を現す。
「…流石は創造神。何もかもお見通しって訳だ。」
「破壊神は元々ハーディスのことをしたっていたからね。破壊神はハーディスを復活させようとしていることくらい簡単に見抜ける。大方僕についての情報を集めていたところなんだろう?」
「…」
「それとも僕とやりに来たのかな?」
「…創造神エト。新しい力を得た俺の実験相手には丁度良さそうだ…。」
「!…アザゼル…さん?その姿は…!」
ザドキエルが驚きの声を上げる。
なぜなら天使の象徴である羽がアザゼルのものは黒く染まって行ったからだ。
「…なるほど、文字通り堕ちた訳だ。天使長アザゼル。いや、こういった方がいいのかな?堕天使アザゼル。」
「ククク…お前は破壊神…シバ様の計画の邪魔になる。ここで消えてもらうぞ!」
アザゼルは細身の剣を取り出しエトに切りかかる。
ギンッ!
その剣を止めたのは同じく天使長のザドキエルだった。
ザドキエルの短剣とアザゼルの剣がぶつかり合う。
「行かせませんよ…アザゼル。」
「お前程度に何が出来る?俺の力は…絶対だ…!」
「!…この…力は…!」
するとアザゼルの額に真っ黒な目玉が浮かび上がる。
「!…まさか…この力は…アザゼル…どこまで堕ちたんですか?!悪魔と…契約したのですか?!」
「消えろ…ザドキエル!」
「きゃっ!」
ザドキエルはアザゼルの一振で吹き飛ばされてしまう。
「クハハハハッ!俺の力は絶対だ!お前程度が勝てる相手じゃねえんだよ!」
「ぐっ…エト様…。」
「なるほどね…悪魔と…」
「次はお前の番だ!創造神!死にやがれぇ!」
アザゼルは腕を突き出すと、漆黒の爪が出てきた。
そしてその爪はエトの首目掛けて振り下ろされた。
ガシッ!
しかしエトはそれを片手で止める。
「何?!」
「やれやれ…。めんどくさい事になったねぇ…。」
「っ…クソ!離しやがれ!」
「…穢らわしい堕天使風情が…僕の部下に何してる…?」
エトの瞳が赤く輝く。
「ひっ…!」
「シバも堕ちるところまで堕ちたねぇ…。悪魔と手を組むなんて…。」
「クソが!離しやがれぇ!!」
「消えなよ…ゴミが…。」
「!」
ズドーンッ!!
アザゼルのいた場所を雷が落ちる。
「バカ…な…!」
雷はアザゼルを黒焦げにした。
「悪魔らしい滑稽な終わり方じゃないか…。さて…大丈夫かい?ザドキエル。」
「は、はい。それよりも…。」
「分かっているさ。最早神界は安全じゃないね。僕も少し焦ってるよ。」
「まさか…悪魔と契約を結んでいたなんて…。」
「さーて、これから忙しくなるよ?ザドキエル。…最早いがみ合ってる場合じゃないね。彼女にも協力してくれるよう頼んでみるとするか。」
「そうですね…。」
「行くよ、ザドキエル。」
「はい…!」

神界で起きたひとつの戦い。
しかしこれはこのあと起きる大きな事件の幕開けに過ぎなかった。




今回の話は2章以降に関係のある話です。
昨日は忙しくて出せませんでした。すいません。
ギリギリ間に合いましたね。
エトくんsideは初めてかな?

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コメント

  • けん玉マスター

    しぃさん
    コメントありがとうございます。
    ですよね〜。
    どこか憎めないキャラですよね。

    1
  • LLENN_p

    エトくん結構好きかもしれん

    1
  • ノベルバユーザー252836

    ますます群像劇になってきたなーと思った

    16
  • トゥルントゥルン5331

    更新お疲れ様です。創造神が優に神級魔法でも教えるのかなあ

    1
  • かつあん

    サラさんってそんな強いの!?おそロシア...w
    っていうか創造神って意外と強かったんだーw

    3
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