腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

20話 小宮&松山side 悲しみを越えて

勇者全滅の報告から数日。
小宮達2人にとってそのショックはあまりに大きすぎた。
そのためまだこの街を動けずにいた。
「由希、あのな…。」
「…うん、どうしたの…?」
「そろそろロキアに向けて旅立たないか?」
「…」
「君の気持ちは分かるが…ここで留まっていても危険なだけだと思う。」
「…そう…だよね。」
「もちろんゆっくりでいい。」
「…ううん!今から行こう。」
由希は決意したように立ち上がった。
「…ここにいても強くなれないものね。」
「由希…。」
「…そうと決まれば準備準備!」
「ああ。」


「…強がっちゃって…馬鹿みたい…。」
松山は自分の部屋に戻り、鏡の中の自分に語りかけた。

ダメだ…。
松山の目元に一筋の涙が垂れる。
「…菜々…!」
中学の時あなたが私に話しかけてくれたから私は…自分に正直になれた。あなたがいつも私に笑顔をくれた。
「…っ…ダメ…」
パン!
松山は自分の頬を両手で挟むように叩いた。
「…しっかりしなさい!由希。」
荷物をまとめて小宮の元に向かった。


小宮は自室に戻り、荷物の整理をしていた。
「ん?これは…」
小宮がアイテムボックスから見つけだしたのは大きめの角のようなものだった。
「これは確か…」
!…そうだ。グランドドラゴンを倒した時の…。
あの時は由希と…江ノ島のおかげで勝てたんだったな。
「江ノ島…。君は藤山と仲直りするんじゃなかったのか…。」
少しの間グループになっただけだったが江ノ島と過ごした時間は素直に楽しかった。振り回されたりしたが彼女の明るい性格のおかげで僕達のグループは賑やかになった。
「…変だな。辛いのに涙が一滴も出てきやしない…。僕は…グループリーダー失格だな。」
小宮はグランドドラゴンの角を眺めながら1人呟いた。
ふと別れ際江ノ島に言われた言葉を思い出した。
「由希を泣かせるな…か。そんなの…君が死んだら無理に決まっているだろう…。」
「…陸、準備できた?」
「もう少しだ。」
「…そう。」
「由希…。」
「…ん?」
「すまない。」
「…どうしたの?急に。」
「君を…泣かせない約束だったのにな…。」
「…」
「直ぐに準備を終わらせる。ちょっと待っててくれ。」
「…うん。」


「待たせて悪かったな。行こう。」
「…うん。でもちょっと寄りたいところがあるの。」
「寄りたいところ?」
「…実は私この街に1度菜々と来たことがあるの。その時にいい場所を見つけて…ほら、ここよ。」
「ここは…」
目の前には綺麗な海が広がっていた。
「綺麗…だな…。」
「…でしょ?菜々のお気に入りの場所よ。」
「…」
「…私ね、意外と涙脆いのよ?」
「え?」
「…私はこれからも沢山泣く。菜々の事を思い出して泣き続けると思う。」
「…」
「…だから菜々との約束は元々無理な約束なの。」
「由希…。」
「…だからね!その約束は無し!」
「え?」
「…だからね…もし私が泣いたら…その時は…陸が慰めて?」
「…っ…僕に…そんな資格はない。」
「…資格なんて…いらない。私は…陸に慰めてもらいたいの。」
「でも…。」
「…私、陸のことが好き。」
「!…そ、それは…」
「…陸も…私の事を好きって言ってくれた。」
「それは…そうだが…。」
「…でも、付き合ってくれとは言わない。どうなるか分からないもん。」
「そう…だな。」
「…それでも!…約…束!私は…絶対泣くから…私の事を絶対慰めてね?」
「…分かった…。」
「…ふふふ絶対よ?」
「ああ。」
「…それと…最後に…お願い。」
「ん?なんだ?」
「…目…瞑って?」
「?…こうか?」
「…私がいいって言うまで絶対開けちゃダメだからね?」
「ああ。…!」
唇に柔らかい感触。
「な?!なな…何を…」
「…まだいいって言ってないのに…。」
「す、すまない!…で、でも…」
「…藤山くんから逃れたら…私…待ってるから。」
「!…由希…。」
「…絶対…強くなろうね。」
「ああ、由希は絶対僕が守る。藤山に負けないくらい強くなる。由希の悲しんだ顔は…もう見たくない。」
「…ありがとう。」
さざ波の中2人の唇が再び重なった。


ピルーク王国
「どうして…外したの?」
「…」
「優くん…。」
「勘違いするな。お前に俺が言った言葉を覚えてるか?」
「…」
「お前には苦しんで死んでもらう。そんな簡単に死ねると思うなよ?お前には…地獄を見せてやる。」
「どうしても…由希ちゃんを殺すの?」
「当然だ。お前に地獄を見てもらうにはそれが一番だろ?」
「由希ちゃんは…小宮くんが守るよ。」
「それがどうした?小宮も一緒に殺すまでだ。」
「…」
「じゃあな。松山を殺したら迎えに行く。それまで精々…余生を楽しめよ?」
「優…くん…。」
押しつぶすような殺気から解放された江ノ島はその場に腰を着いた。
(優くん…ごめんね…)
そのまま江ノ島は気を失った。


「善は急げだ。ロキアに向かおう。」
「…うん。…菜々…絶対…絶対私は生き抜いてみせる。藤山くんに負けないくらい…強くなるから…!」
二人は再びロキア帝国に向かって歩き出した。

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最近遅めでほんと申し訳ないっす。
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コメント

  • ノベルバユーザー515118

    小宮が切りかかってきた瞬間に松山を目の前にテレポートさせれば復讐成功じゃね←サイコパス

    0
  • ノベルバユーザー366207

    なぜ人は、
    いがみ合い、傷つけ合い、殺し合うのか、、、、人間は愚かだね

    0
  • 望月

    はやく氏ねよ江ノ島

    2
  • ダイアーさん

    小宮と松山もついにリア充かぁ、よし殺せ

    3
  • 12AI11

    やっぱり作者様神
    江ノ島に地獄を

    4
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