腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

16話 正義の代償

天城の目の前に現れたのは橘の仇、元クラスメイトの藤山優だった。
「藤山…!何故お前がここにいる?!」
「…たまたまな。さて…この状況の説明をしてもらおうか…。」
「お、お前には関係ない!!ダークエルフを処刑しようとしているだけだ!」
「ユウお兄ちゃん!」
「そうだな…。俺には関係ないかもな…。でも…」
ドゴーン!!
屋上に通じるドアが破壊され、天城が連れてきたであろう兵士が吹き飛ばされてきた。その後から大剣を担いだミーシェが出てきた。
「ミーシェはブチギレてるぞ?」
「そいつ?カナちゃんを傷つけたのは?」
「ああ。」
「ま、魔神の…妹?!」
「天城くんだっけ?久しぶりね。」
「あ、ああ…あ…。」
国民からどよめきが起きた。
「ミーシェ、カナのこと頼む。」
「うん…。ちゃんとぶっ殺してよね?」
「ああ、分かってる。」
ミーシェはカナの体を縛るロープを断ち切った。
「お、お姉ちゃん!」
「もう大丈夫よ…カナちゃん。怖かったよね…。」
「うう…お姉ちゃん…!お姉ちゃん…!」
「…ユウ、下で見てるから。」
「ああ。」
ミーシェはカナを抱えて屋上を後にした。

―――おい!いい所だったのに邪魔すんな!
―――お前は魔神の見方か?!
―――帰れ!

「ちっ…雑魚どもが…喚きやがって…。」
天城は聖剣を構えて優の前に立ちはだかった。
「皆さん!安心してください!こいつはダークエルフより凶悪な悪です!俺がうちはらってみせます!」
歓声が起きる。

「はぁ…めんどくせえな。」
「うおお!!」
優はひらりと躱す。
「コホン…さて、少し演説たれてやるか…。」
「何を…。」
「あー…あー…聞こえてるか?雑魚ども。」
―――!
優の声が町中に響き渡った。
「よく聞け、一つお前らの考えを正してやる。」


「うおお!」
天城は優に切り掛るが、優は危なげなく躱す。
「こいつが今やってることは正義だと思うか?」
「黙れ!うおお!シャイニングアロー!」
優は見ることなくそれを相殺する。
「無抵抗な女の子を捕らえて、処刑にする?そんなのが本当に正義か?」
国民はその言葉に耳を傾ける。
「いつだってダークエルフは忌み子として毛嫌いされてきた。その歴史は否定しない…だけどな、あいつらはあいつらなりに生きようとしてんだ、あいつらがお前らに何かしたか?言ってみろ。確かにミーシェはエルフの里を壊滅に追い込んだ。でもどちらが仕掛けた?有名な歴史だからみんな知ってるはずだ。髪が黒いからなんだ?お前らも黒だろ?俺は親近感が湧いていいと思うけどな。」
「黙れぇ!藤山ぁ!」
「それをこんなに正義正義うるさい、自分をこんな鎧で守ってる偽善者の言いなりになって…。」
優は躱しながら天城の鎧をコンコンと2回軽く叩いた。
カシャァン!
「な?!」
鎧は音を立てて崩れた。
「そんなのは正義じゃない。」
「馬鹿な!鎧が…」
「お前らの言う正義ってやつはあんな小さな女の子を縛って処刑することなのか?もしそうだと言うなら…」
天城は渾身の一撃を優に繰り出した。
「うおお!死ねぇ!藤山ぁ!賢治の仇だ!!」
優はひらりと躱す。
そして…
ズボッ!
「がっ…はっ!」
「俺がぶっ壊す…!」
優の腕が天城の胸を貫いたのだった。

民衆の間に悲鳴や、困惑の声が広がる。
「藤…山ぁ…!がはっ!げほっ!」
優はマイクの魔法を解いて天城に話しかける。
「残念だったな、天城。橘の仇取れなくて。」
「はぁ…はぁ…ぐそがぁ!うおお!」
バキン!
優は素手で聖剣をへし折った。
「直したんだな、聖剣。」
「馬鹿な!俺は…俺は正しかったはずだ!いつだって俺は正義だ!なのに…なんで!?」
「少しぐらいお前らに猶予を与えてやっても良かった。元クラスメイトの好だ。一年くらいは自由にさせても良かったんだ。だがお前は俺の恩人であるスコットさん、妹のカナに手を出した。」
「よ、よぜ!ぐるなぁ!!」
「感情で動きすぎたな。それがお前の正義の代償だ。」
優は口元に笑みを浮かべる。
「!…くそがァ!!」
ズバン!
天城の首は綺麗な音を立てて宙に舞った。
国民の間に沈黙が流れた。
優は今一度国民達に向き直る。
「いいか、正義ってのは代償が必要なんだよ。行き過ぎるとこうなる。」
優は広場の中央に向かって天城の首を放り投げた。
広場にいた人はパニックになり大騒ぎを起こす。
「お前らがダークエルフを毛嫌いしようと自由だ。俺にそれを否定する資格はない。だが…」
優は殺気を放つ。
「もし、カナやミーシェ、ダークエルフに危害を加えるのなら…その時はお前らの敵はダークエルフじゃない。この俺だ。危害を加えたやつはその偽善勇者みたいになるから覚悟しておくんだな。」
殺気のせいか演説のせいか、広場は沈黙に包まれた。
「…さて柄にもなく喋りすぎたな。他の勇者は…あそこか。」
優はその場から転移した。



勇者達は宿屋の大きな部屋に身を潜めていた。
「やばいよ!藤山がいるなんて聞いてない!」
「急いで逃げる準備だ!」
「馬車はまだ手配出来ないの?!」
「今やってる!!急かすな!」
「なんで…なんでこんなことに…。」
「知らねえよ!全部天城のせいだ!」
「嫌だよ…死にたくないよ!」
「…なるほど。お前らは無理やり連れてこられたって訳だ。」
!!!
扉の前には先程までビルの屋上にいたはずの優がいた。
「お、終わりだ…。」
「いやぁぁぁぁ一!」
「終わり…か。よく分かってるじゃねえか。」
泣き叫ぶもの、絶望しきった顔で伏せるもの、反応はそれぞれだった。
「だがおかしいな。数人の姿が見えない。江ノ島はどこだ?小宮、松山もいないな…。」
「あ…あ…ああ…。」
「まあ後で探せばいいか…。さてとお前らはどうするか…。」
「お、お願いです!助けてください!」
「と、友達だよな?!俺ら!!」
「藤山!俺だよ?!佐野だ!よく一緒に移動教室とか行ったよな?!覚えてるだろ?!殺さないでくれ!」
「藤山くん!私は…」
「うるさい。」
ズバッ!
名前も覚えていない女子生徒の首を飛ばした。
「きゃぁぁー!」
「嫌だ…もう嫌だ…。なんで…こんな…」
「最高だ。見知ったクラスメイトが泣け叫ぶ様を見るのは。」
「く…狂ってる…!」
「なんとでも言え。俺はお前らに復讐するためだったらなんでもする。悪魔に魂を売ってでもな。」
「そんなの…俺らは関係ないだろ?!なんでこんなこと…」
ズバ…
「忘れるかよ。お前らのあの時のゴミを見るような蔑む目。今はどうだ?お前らの目は絶望しきってる。最高に気分がいい。関係ないとは言わせない。少しでも俺をゴミだと思ったからあんな目をしたんだろ?どうだ?お前らが蔑んだゴミに殺される気分は?」
「あ…ああ…ああああああああぁぁぁ!」
「ククク…ハハハハッ!」
「うわぁぁぁ!!」
「…レーヴァテイン。」
優は大剣に黒炎を纏わせた。
「じゃあな、ゴミ共。」
優が放った炎は宿屋のこの一室だけ、綺麗に焼き尽くした。
目撃者によるとこの部屋で怒った火事の中高らかに笑う一人の少年を見たという。中は地獄になっており、焼けたまま死ねずに悶える何人もの少年少女がいたという。

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もう少しやってから小宮様sideに移れそうです。
お待たせしてすいません。
フォローorコメントよろしくお願いします!

コメント

  • ノベルバユーザー515118

    Fooooooooooooooo

    0
  • けん玉マスター

    しぃさん
    コメントありがとうございます。
    誤字報告感謝です!

    2
  • LLENN_p

    味方が見方になってると思いますよ!

    2
  • アキ

    お前は魔神の見方か?!

    お前は魔神の味方か?!
    ではありませんか?

    2
  • らう

    partyダーーーーーーーーヾ(≧∇≦)

    3
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