腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

52話 精霊の涙

「っ…はあ…はあ…」
「いい加減諦めたらどうだい?僕の前にはあらゆる技も通用しないのさ…。」
疫神は手を広げながら由希に近づく。
「…ソードサンクチュアリ!」
「その技はさっきも見たよ。」
剣は疫神に当たるが全くダメージが入らない。
死の感染デス・パンデミック。」
「…サンクチュアリ!」
「聞かないと言ったよね!」
「…!」
由希の腕が紫色に腫れ上がる。
「…サンクチュアリ!」
由希は腕の中に聖域を張り、感染を止める。
「考えたね…。けど何時まで持つかな?」
「…はあ…おしゃべりな神ね。自分が優位にたったつもりかしら?」
「つもりじゃないさ。今は僕が優位だ。君の命は僕の手の中にあることを忘れるなよ?」
「…っ…」
ズバッ!
由希は腕を切り落とす。
そして精霊で止血した。
「うわぁ…痛そう…。」
「…ええ、ものすごく痛いわよ。だからやり返す…!」
「隻腕で何ができるんだい?」
「…飛び爪!」
「!」
疫神は間一髪で捌く。
「今のは魔物のスキルだね…。どこで手に入れたんだい?」
「…あなたには関係ない。あなたの能力…免疫の弱点は見切った。」
「弱点?なんの事かな?」
「…免疫ってことはつまり抗体を作り出すってこと。だから作るまで少し時間がかかる。」
「…それで?」
「…だから作り出す暇もないほどの連撃を繰り返せばいいだけ。…ニキ。」
由希の後ろに魔法陣が展開され、そこから純白の竜が姿を現す。
「精霊王ニキ…。君の守護精霊は大物みたいだね。」
「ユキ、ようやく私を呼んだね。なんなりと申し付けてよ。」
「…ニキ…少し時間を稼いでちょうだい…。」
「その前に腕を治そうか。」
由希の腕を聖なる光が包み込む。
「…ありがとう。」
「さーてと。連撃を喰らわせればいいんだっけ?」
ニキの周りに無数の魔法陣が展開される。
「エターナルジャベリン。僕の主を随分と痛めつけてくれたそうじゃないか。…億を超える槍の嵐。受けきれるかな?」
「面白い…!全て受け切ってやるよ…精霊王…!」
槍の嵐が疫神に降り注いだ。



「へえ…生きてるんだね。さすがは神と言ったところか…。」
「ゲホッ!ガホッ!…たかが霊風情が神に勝てると思っているならそれは驕りと言うやつだよ…。」
「思っちゃいないさ。私1人じゃね。」
「!」
疫神の上に何層もの魔法陣が展開される。
「…時間を稼いでくれてありがとうニキ。おかげで完成した…!」
「こんな大技打たせると…」
「…ニキ!」
「はいはい、分かってるよ。」
ニキの瞳が怪しく光る。
「!…何だこれは?!」
疫神の動きが止まる。
「…王の前で許可なく動けると思わない事ね。」
「っ…こんなもの…」
「…遅い!はぁ!!」
疫神の周りを精霊達が渦巻く。
「…あなたの免疫の弱点はもう1つある。あなたは攻撃を受けなければ免疫を作り出すことが出来ない。それならば一撃で仕留めるだけよ。」
「っ…僕を舐めるなよ!」
疫神から禍々しいウイルスが放たれる。
「君のちゃちな魔法ごとき僕のウイルスで…!」
「…無駄よ。この魔法は私の取っておき。そう簡単には受け止められないわよ?」
「おいで、ユキ。」
「…ええ…!」
由希はニキの上にまたがる。
そして空高く飛び上がった。
「一思いに死にたかったら無駄な抵抗はしないことだね。これが僕達の取っておき…」
「「…女神の微笑みゴッド・セレナ!」」
そのままニキは聖なるオーラをまといながら急転直下。
疫病の祭典パンデミック・フェス!」
ドス黒いウイルスと精霊を纏ったニキが衝突した。




「ユキ、怪我はないかい?」
「…ええ、大丈夫よ。ありがとう…ニキ。それよりも…」
「さすがにこれをくらって生きていないとは思うよ。」
「…そうね…。」
「ふふふ…本当に…そうかな?」
「「!」」
そこには頭だけになった疫神がいた。
「…あなた…どうやって…!」
「安心してよ。僕は死ぬ。だけどタダでは死なない。」
「…どういう意味?」
「さっき僕が感染させたウイルスの中にあるウイルスを混ぜておいたんだ。」
「!」
「おい…ユキに何をした?」
ニキの雰囲気が変わり、怒りの口調で詰め寄る。
「安心してよ。僕特製のウイルスを感染させてあげただけだよ。名付けてスナッチウイルスとでもしておこうか。このウイルスはその名の通り奪うんだよ。」
「奪う…?」
「そうさ…僕が彼女から奪ったのは寿命。」
「!」
「彼女の寿命を半分貰った。」
「…」
「これで彼女の未来を奪ったことになる。」
「…未来なんて今考えることじゃない。」
「…は?」
「…私は少しの間でも陸やニキと一緒にいたい。寿命が半分減ったから何?そんなことで私が絶望するとでも思った?」
「ユキ…。」
「ふ…ほざくがいいさ。はぁ…君が死んでいく様子を見れないのは実に残念だよ…。」
「いいからとっとと死ねよ…。」
ニキのブレスにより、疫神は消滅した。



「ユキ…。」
「…ニキ、ありがとう。もう戻っていいわよ。」
「…ユキ…。」
「…ふふ、あの話本当かしら?」
「…恐らく。奴の言う通り君の体はウイルスに侵されてる。」
「…寿命を半分…か。私…あとどれ位生きれるのかな…。」
「っ…ユキ…。」
「…そう言えば精霊王様は見た者の寿命が見れるんだっけ?…ニキ…私はあとどれ位生きれるの?」
「…最大でも…30年。」
「…そっか…そんなもんだよね。人間なんて。」
「ごめん…私がちゃんと警戒していれば…」
「…ニキのせいじゃないわよ。それに…陸よりも先に死ぬっていう私の密かな願いは叶うみたいだしね。」
「…ユキ…。」
「…それに…30年もあれば…陸と…色々…」
由希の 目から涙が溢れる。
「…そっ…かぁ…30年か…30年も…じゃないね…30年…しか…陸やニキと一緒にいれない…んだ…。」
「ユキ…私との契約を…切ってくれ。」
「…え?」
「私と契約を切れば君は…君は私と契約を結ぶ前の体に戻る。私と契約を切れば君は…」
「…いやよ。」
「ユキ…!」
「…だってそうしたら私はあなたのことを忘れてしまうんでしょう?」
「そう…だけど…」
「…それだったら却下。あなたは私の大事な仲間だもの。絶対に忘れたりなんかしたくないわ。仲間との大切な思い出を失うくらいだったら…死んだ方がマシ。」
「ユキ…。」
ニキは由希に顔をすり寄せる。
「…ふふ…あと…30年しかないけど…みんなで思い出を作りましょう?」
「…ユキ…」
ニキは涙を流す。
「…ふふ、精霊も泣くのね…。」
「私は…君が死んだら悲しいよ…ユキ。」
「…そう思ってくれるなら…嬉しいな…。」
「ユキ…。」
「ニキ…。」



「フーム…こんなに結束の強い精霊と人間を見るのは何百年ぶりだろうな。」
「「!」」
「…誰?!」
気がつくと後ろに長髪の男がたっていた。
「そんな…!あなたは…!」
「…ニキ?知ってるの?」
「霊神…様…」
「初めましてだね。由希。私は霊神ハーレ。君の使っている精霊魔法を作ったものって言えばいいかな?つまり精霊の神だよ。」
「…精霊の…神…」
「精霊の涙が落ちる音がしてね…。精霊ってのは泣かないんだよ。それでも涙の落ちる音がしたってことは駆けつけない訳には行かないだろう?…精霊王ニキ…いいパートナーを見つけたね。」
「…はい。」
「いい絆を見せてくれた君たちにご褒美だ。由希…君の寿命…戻しておいた。」
「「!」」
「あ…ああ…ユキ…君の寿命…戻ってる…!」
「…ほ、本当に?」
「ああ!戻ってる!」
「ご褒美さ。これからも仲良く励みたまえよ?それじゃね。」
「…あっ!ちょっ!まだお礼を…!…もうっ!」
霊神はどこかへ消えてしまった。
「ユキ…!」
「…って、ちょ…」
ニキは竜の姿のまま飛びつく。
「良かった…!ユキ…!」
「…ふふふ、これからもよろしくね?




…ニキ。」





書く暇がないので夜中に出しておきます。
そして明日も早くからバイト…社畜になりつつあるwあ、バイトだからバ畜かw
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コメント

  • かつあん

    霊神いいわー優しいわー。
    それにしてもやっぱ松山さんとニキのコンビはつえーなー

    店長にスナッチウイルスを感染させましょう!

    1
  • KIA

    霊神が敵にならないことを祈っておきます。
    これからもがんばってください!

    3
  • イルネス

    これはもう店長にゴッド・セレナを放つしかないですな

    1
  • 負け犬

    まさかの霊神もいたなんて!とても面白かったです。次の話しを期待してます。

    1
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