腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが

けん玉マスター

61話 行き過ぎたショーの代償

ミーシェside
ギリース王国ギルド
ここでミーシェはひとり退屈に星を眺めながら紅茶を飲んでいた。
「…遅いな…ユウ。」
「わん!」
「…マシュマロ。…寂しいなぁ…ユウがいないと…」
「わう!」
「一緒に寝てくれるの?」
「わん!」
「ふふふ…ありがとねっ。そうだ、そんな君には私の特製ミルクをあげよう!」
「わおーん!」
「ふふふ…ちょっとまっててねー、マシュマロ?」
「わん!」
「…そうだよね。ユウなら大丈夫!私が信じてあげなくちゃ…!」
「わん!」



ユウside
ズドーン!
「…」
「どうしました?避けてばかりではありませんか?つまらないですねぇ…」
ユウはギリース王国の城の王室で、ひとり血の教団の幹部マリクと戦いを繰り広げていた。
「…国王や、王女をマリオネットにするなんて…いい趣味とは言えないな。」
「そうですか?こういう刺激も大事だと思うのですが?」
「さいですか…」
ユウはかわしながらナイフを繰り出す。
「おや?ナイフ投げがなかなか上手いですね。私のサーカス団にいらっしゃいませんか?」
「そうだな。人数減ったもんな。」
国王の額にナイフが刺さる。しかし国王が倒れることは無かった。
「は?不死身なの?」
「私のマリオネットはこんなことで壊れませんよ?」
「めんどくせえな。」
「めんどくさいとは失礼な。国王と王女の親子でのショーです…楽しんであげてください!」
「ちっ…!」
なんでだ?なんで死なないんだ?カラクリがわからん。ナイフは確かに額に刺さったはずだ…脳にも届いてるはず…まさかとは思うが…
「…なあ、まさかそいつら既に死んでたりしないよな?」
「死んでいる?当たり前じゃないですか…人形に命を吹き込むのです。それが一流の傀儡師というものでしょう?」
「なるほど…そいつらはお前が操ってるってわけか。」
「わかったところで何ができましょう?この2人は不死身のマリオネットです!この2人をなんとかしない限り私の元へはたどり着けませんよ?」
「ご丁寧に教えてくれてどうも。こいつらが人形ならぶっ壊せばいい。」
「不死身ですよ?何ができるんですか?」
「取り敢えず魔法でバラバラになってもらうか…エクスプロージョン!」
ドゴォン!!!
「この狭い場所で…正気ですか?」
「魔力は抑えてあるさ。これで仲間が死んでたらいい笑いもんだしな。」
「優くん…笑い事ではないと思うよ…」
「ああ、それと…あとひとつ言い忘れていました…私のマリオネットは魔法を吸収して強くなるのです!」
ビキ…バキバキ!…
国王と王女の体が不気味な音を立てて大きくなっていく。
「まじか…王女の面影ゼロだろ。」
「ふふふ…結局あなたは私のマリオネットを強くしただけ…これでわかったでしょう?あなたに打つ手はないのですよ。」
うん…今までで1番ピンチかも。大罪魔法使えないのってきついよね!ふざけてる場合じゃない。どうしよう。
「物理的にぶっ壊すか…」
優はアイテムボックスからミノタウロスの斧を取り出した。
「ふふふふっ!やはりあなたは面白いですねぇ!そうです!そう来なくっては面白くないというものです!」
「よい…しょっとぉ!」
遠心力を利用して回転しそのまま国王の巨体に斧を御見舞する。
バキン!
国王の体にヒビが入った。
あ、もう完全に人形なのね…
「こっちはあなたの強大な魔力のおかげで強化済みです。ちょっとやそっとじゃやられませんよ?」
「いちいちうるさい…」
「何を言いますか!私はピエロですよ!話してなんぼなんですよ!話すのが私の仕事だ!」
「そうかよ!グランドフォース!」
優は斧に土属性魔法を付与した。
「はっ!」
優は地面に斧を突き刺した。
「何を…」
地面から土でできた檻が出てきて2人を閉じ込めた。
「これでおーけー。お前だけだな、マリク。」
「ふむ…流石です。あの檻は2人に壊せそうにないですね…仕方ありません。私が相手いたしましょう。」
マリクは数本のナイフを取り出しジャグリングを始めた。
「怪我するぞ?」
「舐められたものですねぇ…ナイフの扱いはお手の物なんですよ。」
「…マジで?それ教えてよ。俺前それやって血がめっちゃ出たんだよね〜。」
「怖がらないことがコツですね。」
「へぇー…」
「随分と呑気な人ですね。行きますよ?」
「どこからでも。」
「はぁっ!」
5本のナイフが同時に飛んできた。
キンキンキンキン!
あと1本…
ドスッ!
「っ…」
1本が優の肩に刺さった。
「ブラインドです。飛んでいくナイフの後ろに隠していたのですよ。」
「ははは…やってくれるじゃねぇか…」
「強気ですね…大丈夫ですか?」
「…痛くも痒くもないね!」
痛い痛い!死ぬ〜。血が!血が出てる!うわぁーん…ミーシェー…
「そうですか…まだまだ行きますよ!」
「こっちからも行くぜ!」
マリクはブラインドを混じえ合計7本のナイフを放った。
対して優は1本である。
優はそれら全てを見切り全てかわした。
「あなたもブラインドですか?甘いですね!」
マリクは高速で2本を叩き落とした。
「なに?!」
ドスッ!
遅れてナイフが数本マリクに刺さる。
「ぐっ…!がっ!」
「お返しだ。」
「…ふふふ…こんな正確にブラインドを放てるとは…あなたやっぱり私のサーカス団に来ませんか?」
「…」
「まあいいです…ですがまだまだこれからですよ?私の…」
ヒュン!
マリクの髪の毛が数本落ちた。
「お喋りに付き合うつもりは無いぞ?お前のショーはもう飽きた…」
「あなた…よくも私のナイスな髪を…」
「うるせえよ…お前はミーシャが選んでくれたコートに穴を開けたんだ…少しは遊びに付き合ってやったが気が変わった。」
「この殺気は…そんな…」
「やっと立場がわかったか?お前は俺という客に芸を見せていた猿に過ぎないんだよ。お前がどんな芸をしようと俺にはかなわない。」
「馬鹿な…」
「終わらせるか…」
「くっ、来るなぁ!」
「お前も敬語設定が崩れてきたなぁ?」
「く、くそ…舐めるなぁ!」
マリクは短剣を取り出し切りかかる。
バキン!カラカラ…
「握りが甘い。剣に迷いがあるな?」
「…くそっ!喰らえぇ!」
マリクはトランプのカードを手裏剣のように放ってきた。
「トルネード。」
それら全ては風で空高く舞い上がった。
「馬鹿な!私のショーが!あなた…何者だ?」
「敬語設定か普通に喋るかどっちかにしろよ…俺は藤山優だ。よろしく。」
「あ…あ…そんな…ことが…私が負けるなど…ありえない!こうなったらあなただけでも殺す!喰らいなさい!」
カリッ
マリクは奥歯で何かを噛んだ。
「自爆スイッチです!これから20秒後にこの城もろともあなた達は…」
「…実は俺、空間魔法が使えるんだぁ…」
「え?」
「城の100メートル上あたりでいいか。」
「馬鹿な!!」
「…綺麗な花火を見せてくれよ?お前の最後の晴れ舞台だ。用意してやったんだから感謝しろよ?…じゃあな。」
「そんな…馬鹿なこと…」
シュン。
その場からマリクの姿が消えた。
ドゴォン!!
「たっまやー…」
マリクは城の上空100メートルで塵となった。
「…終わりっと。江ノ島、3人の様子はどうだ?」
「大丈夫。命に別状はないよ。今は寝てる。」
「そうか。」
「優くん!」
「ん?」
「怪我してる…肩…」
「大丈夫。ミーシャに治してもらうさ。」
「でも…応急処置だけでも…」
「すぐ帰るからいいの。とっととこいつら運ぼうぜ?」
「…うん。」
「江ノ島は松山を持ってってくれ。…あ…橘もいるじゃん…2人じゃ無理だろ…」
「心配するな…僕は大丈夫だ。」
小宮が起き上がった。
「小宮くん…安静にしてなきゃ…」
「ただの火傷だろう?歩けるさ。」
「でも…」
「んじゃ橘頼むわ。」
「優くん…」
「わかった。」
3人で1人ずつ抱えながら城の出口に向かい歩き始めた。
「藤山、今回は君のおかげで助かった…本当にありがとう。」
「どういたしまして…」
「普通じゃないな…君。そんな力をどこで?」
「さあな。俺にも事情がある。」
「そうか。」
「待って、二人とも。」
「どうした?江ノ島。」
「この2人を埋葬してあげたくて。」
そこには元の姿に戻り横たわる国王と王女の姿があった。
「…早めにな。」
「うん!」
30分後墓ができ、江ノ島と小宮は手を合わせている。
「俺も一応やっとくか…」
優も後ろで軽く手を合わせておいた。
「帰るぞ。江ノ島。」
「うん、ごめんね?わがままに付き合ってもらっちゃって。」
「いいさ。…変わらないな…江ノ島は…早く殺したくなる。」
「え?何か言った?」
「なんでもない。行こう。」
「うん。」
こうして2日に渡るギリース城攻略は幕を閉じた。


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夜もう1話出します。今度は絶対です。
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コメント

  • にせまんじゅう

    306165そういうのは1話の時点で書いた方がいいですよ!

    0
  • キャベツ太郎

    306165 ここまで読み続けてる時点でその嘘は通用しないことに気がつかない餓鬼の図

    0
  • ヒカッチ

    うーんあのピエロ食べたらいろいろとスキル手に入りそうだったんだけどなー

    1
  • 本大好き{デアラ}

    ピエロ~

    1
  • HARO

    306165 話の分からん奴は帰れ

    3
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