教科さんち。-Side5-

MINON

3時間目:本部と5教科

「…ついにこの日が
やってきてしまった…。」
「一日中罵られる最悪の日…」
「反抗したら追放されるから
反抗もできない…」
「だからといって不参加には
できないわねぇ…」
と英語以外の4教科が
溜息交じりに言った。

そう。
今日は本部との打ち合わせの日。
本部の人間は教科課の者たちを
とことん蔑んで罵る。

「なんだい?どうしてこんなに
どんよりとしてるのか?」
と英語が出てくる。

「あぁ…ヒデさん、今日はもう
悪口しか言われませんよ。
ヒデさんも覚悟しておいた方が
いいですよ…」
と数学が疲れた様に言った。

そして、教科課と本部の
打ち合わせが始まった。

「だいたいねぇ、君達教科課は
私たちが雇ってやってるんですよ?
私たちに服属するのは
当たり前ですよね?」
と、一番偉い青柳総長が言う。
「ねぇ、“社会”さん?長生きしている
貴女なら分かるでしょう?」

「……そうですね。」
社会はこう言ったが、
机上の握り拳が震えていた。
つまり、彼女も人間によって苦汁を
舐めさせられてきた1人なのだ。

「…チッ。」
「マナブさん、キレちゃダメです!」
と数学がキレそうになるのを
理科が抑える。

「と。まぁ、青柳総長が言いたいのは、
経費をもう少し抑えて欲しい、
ということです。なので、
気分を悪くなさらないでくださいね?」
と、青柳の側近である山崎が続ける。
「でも山崎さん、俺らなんも
悪くないのになんでコイツらに
謝んなきゃなんないんですかぁ?」
と幹部の1人である小野が呟いた。
その時社会の顔が引きつったのを
見たのか、
「そういうことを言うなって
言ってんの!」
と山崎が少し怒った。

「まあいい山崎。第一、コイツらは
人間のふりをした人外生物なんだ。
小野はそう思っただけだろう。」
と青柳が言った。
山崎は何かを言おうとしたが、
ある声に掻き消された。

「あ、じゃあしつもーん!
なんで日本って人間の方が上で
教科は下なんですかー?
外見は変わらないと思うんですけど?」
と英語が言ったのだ。
(アイツ…やった!)
と4教科全員が思った。

「なん…だと…?」
と青柳の顔が引きつった。
しかし、山崎は続ける様子で、
その上ずっと無言だった久保が聞いた。
「その言い方だと、他の国は
違う様だけど、どうなの?」
すると英語はこう言った。

「アメリカでは、教科も人間と
同じ扱いでしたよ。
日本の様な差別なんてありません。
さっきも言いましたが、
外見は同じなんです。
同じ語学系の友人に聞いた話ですが、
ロシアでは逆に教科は
「人間の教育を支える大事な者たち」
として大切にされていたようです。
教科課の皆さんに聞きましたが、
日本では人間が教科を
蔑んで罵っているんですね。
この先の未来、
この世界から教科という生物が消えたら
人間はどうなるでしょうか?
原始人に戻っちゃいますよ?
それでも良いなら、
どうぞ、教科を差別しても結構です。」

会議室の中が静まり返った。

「…チッ、こんな奴ら…消えたって
人間は原始人になんざ戻らんよ。」
と青柳はそうこぼして
本部の方へ歩いて行った。
「…フン、口だけは達者だな。」
小野もそう言って青柳に付いて行った。

「…もう、ビックリしたじゃない、
青柳総長に刃向かうなんて。」
と社会が安心したかの様に言った。

「あの…」
と誰かが言った。





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