深く、深く。

栄戸 音春

1章 ~薄情青年~



「親の心子知らず」
と言う言葉があるが、結城秋人と言う男ははその言葉を体現するかの様な人間であった。

...と、自分で言うのもなんだが、僕は自他共に認める”ひねくれ者”だ。

そうなった原因として僕の父親が挙げられる。

僕の父親はとても短気な人で、何かあるとすぐに怒鳴ったり、ものに当たったり、ある時は殴ったりしてくる。

そんな父親に育てられると自ずと怒られるのに慣れてくるものだ。

今思うと気持ちが悪いが、中学生になる頃には、大人を怒らせる事を楽しいと感じるようになった。

何か怒られるような事をして、自分の思った通りに怒鳴り散らす大人を見るのが快感で仕方なかったのだ。

まあ、中学3年になる頃にはそんなひねくれた性格も多少は良くなっていたが。

本当はビビりで女々しいくせに、威勢だけは良くて、、、本当に情けない人間だ。


そんな僕も恋はする。

初恋は小学生の時、幼馴染の女の子だ。
しかし、そんな初恋も日を追う事にに冷めていった。

その次は、同じクラスの女の子、その次は違うクラスの女の子と、何回も何回も恋をした。
......1年の内に。

そう、僕は気が変わるのも早い。

この性格が良い方に傾く事もあるだろうが、恐らく、デメリットの方が多いだろう。

中学生になると、交際する人々が増えてくる。

勿論、僕も人並みに交際していた。

中学生の時に付き合った人数は10人...

いや、人並み以上だ。
そうだ、自分でも思う。
ただの女ったらしじゃないか。

恋の数は多くても、一つ一つの重みがない。
薄っぺらい恋なのだ。

まあ、かと言って、中学生時代ずっと女の子と遊んで、勉強もしないで、、、
という生活を送ってきた訳ではない。

部活動は小学生の頃からやっていた、水泳部に入った。
運動は得意な方だったので、大会に出ればいつも上位争いをしていた。

高校は勉強して行こうと考えていたが、運良く、県内屈指の進学校にスポーツ推薦で入学する事が出来た。

春休みから高校の練習に参加している事もあって、入学式が終わって数日しか経っていないが、先輩方とも仲良くやっている。


そんな僕は今日、高校に入って初めての
「”恋”」
         をした。

コメント

  • ノベルバユーザー209459

    自分と重なるところがある…
    次回更新楽しみにしてます

    2
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