雪が降る世界

lemon

第45話 〜辛い?辛い?〜

「全範囲って…。あんだけ教えたのに。」
「全国トップがあっさり死んでたまるかよ。」
「お前だって大差ないだろ。」
「壁がデカすぎっての。あと2年か…。修学旅行くらいは行けんじゃね?その前に、体育祭、今年こそ勝ってもらわねぇと。あと文化祭もあるからな?」
「鬼か。」
「お前はいけるって。エリートさんよ。」
「エリートと病気は関係ねぇ。…まぁ、外出許可が出たら行くわ。勉強は別に困らないだろうし…。
はぁ、やっぱ仲良くならなきゃ良かったな。」
「なんで?」
「だって寂しいじゃん。中学生の頃は自殺するくらいだったのに。人間って本当に変わりやすいよね。」
自殺が衝撃的過ぎて…。後の内容が頭に入らないだろうが。

ゆるーく話していると七海の先生が入って来た。
「あ、先生、七海学校行けますか?」
「行けないことは無いが少し危険だね。」
「じゃあちょっと回復したら行くわ。」
「「は?!」」
「いや…直前ぐらいまではちゃんと寝とけよ?」
「体育しなけりゃいい。」
「そういう問題か?」
「俺が一番よく分かってる。一応脳もやってたから。」
「そうは言っても君ね…。」
「いいじゃん。卒業間に合うか合わないかでしょう?今まで頑張ったんだから、俺も遊びたい。もう医者なんてどう願っても無理なんだよ?」
「え…?待って、ホントに七海死ぬの?」
今までの経緯が何かのドッキリだと春瀬は思っていたらしい。随分と大掛かりだな。
「信じてなかったのかよ…。お前らしいな。大丈夫、いつか忘れるものだから。」
お前みたいなキャラ設定の奴忘れる奴いんのか?嫌でも脳裏に焼き付いてるわ。
けど、俺だってドッキリであって欲しかった。こんな人間、この先一生涯かけても会えない気がする。



それから、七海は少しだけ回復して一応学校には行けることになった。何するんだろうな。クラスに春瀬以外友達つくってないくせに。
「ちゃんと前田先輩に言わないとな。お礼と、謝罪。」
「「謝罪www」」
あ、馬鹿組がツボにハマった。
確かに意味わかんねぇな、よく考えると。俺もじわじわ来てるわ。
「何謝んだ?」
「んー?先輩の社会人一年目の最初に会えないこととか?」
「結構深いとこまで行ってた…。」
「文系なめんなよ?」
「「「お前理系だろ。」」」
久しぶりにシンクロした。相変わらず気持ち悪ぃ。
「ははっ。それもそうだな。」
七海はこんなことになっても、目だけは笑っていない。ただ、意識的に、目を細めるくらいだった。




学校では案の定、新入生からメディア並に話しかけられ、同級生には無用の心配をされ。あいつも大変だ。
でもだからって。
「なんで今日来るとかそんなことになってんの?」
俺と加衣が知らないうちに、俺の家で遊ぶ、という事だ。行動早すぎ。いつも言ってるじゃん、春瀬の方が数倍快適で楽しいって。
「え?こまのご飯美味しいから。」
「は?何時までいる気だ?」
「さぁな。」
けどここで七海のお願いを断るのはできない。いつもと同じように。馬鹿組には分からない、何かが隠れてる。



「で?何食べたいんだよ。」
「お前の中で一番印象に残ってるもの。」
「…はいはい。」
なんだそれ。印象っつってもいろいろあるだろ。じゃあもう独断で…。

あ、やべ、ひき肉も玉ねぎもねぇ。
「スーパー行ってくるわ。ちょっと遅くなるかも。」
「了解。」
あんなに冷蔵庫貧相だったかな…。


最近仕事の成果が出てきたのか、街でよく声をかけられることが増えた。別に、自分で選んだ道だからいいんだけど…。小さい子どもとか小学生に話しかけられると緊張すんだよな。親がいるか集団かだし。どっちも苦手…。
驚きなのは、男子学生にも写真頼まれることか。残念ながら七海は今いねぇ。見りゃ分かんだろ?



どうせなら、楽しく食べようと思って、特に悪気はないがロシアンルーレットを作ってみた。もちろん、七海に当てられると困る。…まぁいい。加衣も春瀬もいる。
「できたよー。」
「お前ハンバーグ好きだな。」
「だって一番印象に残ってるものっていうから。」
────…
「何これ?!辛い!」
あー、春瀬に当たったか。
「びっくりした?」
「した…。俺辛いのあんまり好きじゃないのに…。」
「七海に当たらなくて良かった…。」

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