1度全て失った俺が伝説の王になるまでの復讐譚
序 雨の中
 
細かな雨がしとしとと降り続く夜のことだった。
大きな国の片田舎、その辺で一番大きな屋敷の、最後の明かりが消えた。
それを合図としたのか、一斉に屋敷の周りで蠢く者達がある。
軽装の防具を身に纏い、好みの武器を装備した、一見バラバラな集団に共通するのは白い仮面。
 
目の部分以外をすべて隠す不気味な白い仮面が、薄く発光するように青白く闇に浮かんでいる。
彼らは一切無駄のない足取りで油断なく辺りを見回しながら、確実に屋敷へと進んで行く。門の前に立つ二人の衛兵を難なく沈め、やすやすと敷地に侵入する。
少しして、女中だろうか、甲高い女の悲鳴が辺りに響き渡る。しかしもう遅かった。名もない彼女が悲鳴を上げる頃には、既に屋敷にいた兵はすべて命を刈り取られていたのだから。
とうとう侵入者達は屋敷の深部へと足を踏み入れる。
大きな屋敷を持つだけのことはあってかなりの資産家なのだろう。奥のほうに進むにつれ、畳敷きの部屋が多くなった。
そして、その一室へ。
おそらくはこの屋敷の主人とその夫人なのだろう、なにが起きているのか知る術もなく、根拠の無い明日を信じて安らかに眠っている二人の男女を、侵入者達は一息に殺す。
そして、更に奥の間に。
そこには、5歳くらいの小さな少年が、静かに寝息をたてていた。
高級な寝具に包まれて、両腕を無防備に広げている。
侵入者達は子供であろうと全て殺すつもりであった。
彼らの内の一人の男がナイフを振り上げる。白い仮面の奥からは何の感情も読み取れない。
男はまるで動物を捌くかのようにナイフを振り下ろした。
真っ白な敷布団が血に染まるかと思われたそのときである。
 
少年の体が淡く光り始めた。
ぼうっとした青い光が、優しく少年を包んでいく。
さすがに驚いたのか、周りを囲んでいた侵入者達は一様に少年から遠ざかった。
先程のナイフの男が不振がって少年を包む青い光に触れた。
数秒後、男の体は死体となっていた。
 
侵入者達は声こそ上げないものの、驚きの表情は仮面をもってしても隠せない。
だがしかし、彼らの驚きは終わらない。
光が部屋全体へと広がってきたのだ。
光に触れた者から順に、侵入者達はバタバタと倒れていく。
驚きは恐怖へと変わった。
そして、光は徐々に屋敷全体を包んでいった。
翌朝、領主とその屋敷にいた全ての人間が殺された状態で発見された。
しかし不思議なことには、明らかに襲撃した側と思われる者達までもが死体となり、屋敷の中に倒れていたのである。
運良く逃げることが出来た昨晩の侵入者の内の少数は、屋敷を不気味がり、それ以降、屋敷に近づくことは無かった。
もう一つ、不思議なことがある。
領主には5歳になる男児があった。
同じ屋敷にいたのだから殺されていないとは思えない。しかし、領主の息子の遺体は見つからなかった。
それとも息子は誘拐されたのか?だとしたらなんのために?なにしろほかの家族は皆殺されているのだ。
謎は深まるばかりだった。
けれども、幾つかの点を除けば、これはよくある話。
いつ誰が殺されても、そんなことはありふれた世。
大抵の人は歯牙にもかけない。
そう、これはよくある話、だから秋雨の静かな音と共に、いずれかは忘れられていく-
そのはずだった。
 
 
細かな雨がしとしとと降り続く夜のことだった。
大きな国の片田舎、その辺で一番大きな屋敷の、最後の明かりが消えた。
それを合図としたのか、一斉に屋敷の周りで蠢く者達がある。
軽装の防具を身に纏い、好みの武器を装備した、一見バラバラな集団に共通するのは白い仮面。
 
目の部分以外をすべて隠す不気味な白い仮面が、薄く発光するように青白く闇に浮かんでいる。
彼らは一切無駄のない足取りで油断なく辺りを見回しながら、確実に屋敷へと進んで行く。門の前に立つ二人の衛兵を難なく沈め、やすやすと敷地に侵入する。
少しして、女中だろうか、甲高い女の悲鳴が辺りに響き渡る。しかしもう遅かった。名もない彼女が悲鳴を上げる頃には、既に屋敷にいた兵はすべて命を刈り取られていたのだから。
とうとう侵入者達は屋敷の深部へと足を踏み入れる。
大きな屋敷を持つだけのことはあってかなりの資産家なのだろう。奥のほうに進むにつれ、畳敷きの部屋が多くなった。
そして、その一室へ。
おそらくはこの屋敷の主人とその夫人なのだろう、なにが起きているのか知る術もなく、根拠の無い明日を信じて安らかに眠っている二人の男女を、侵入者達は一息に殺す。
そして、更に奥の間に。
そこには、5歳くらいの小さな少年が、静かに寝息をたてていた。
高級な寝具に包まれて、両腕を無防備に広げている。
侵入者達は子供であろうと全て殺すつもりであった。
彼らの内の一人の男がナイフを振り上げる。白い仮面の奥からは何の感情も読み取れない。
男はまるで動物を捌くかのようにナイフを振り下ろした。
真っ白な敷布団が血に染まるかと思われたそのときである。
 
少年の体が淡く光り始めた。
ぼうっとした青い光が、優しく少年を包んでいく。
さすがに驚いたのか、周りを囲んでいた侵入者達は一様に少年から遠ざかった。
先程のナイフの男が不振がって少年を包む青い光に触れた。
数秒後、男の体は死体となっていた。
 
侵入者達は声こそ上げないものの、驚きの表情は仮面をもってしても隠せない。
だがしかし、彼らの驚きは終わらない。
光が部屋全体へと広がってきたのだ。
光に触れた者から順に、侵入者達はバタバタと倒れていく。
驚きは恐怖へと変わった。
そして、光は徐々に屋敷全体を包んでいった。
翌朝、領主とその屋敷にいた全ての人間が殺された状態で発見された。
しかし不思議なことには、明らかに襲撃した側と思われる者達までもが死体となり、屋敷の中に倒れていたのである。
運良く逃げることが出来た昨晩の侵入者の内の少数は、屋敷を不気味がり、それ以降、屋敷に近づくことは無かった。
もう一つ、不思議なことがある。
領主には5歳になる男児があった。
同じ屋敷にいたのだから殺されていないとは思えない。しかし、領主の息子の遺体は見つからなかった。
それとも息子は誘拐されたのか?だとしたらなんのために?なにしろほかの家族は皆殺されているのだ。
謎は深まるばかりだった。
けれども、幾つかの点を除けば、これはよくある話。
いつ誰が殺されても、そんなことはありふれた世。
大抵の人は歯牙にもかけない。
そう、これはよくある話、だから秋雨の静かな音と共に、いずれかは忘れられていく-
そのはずだった。
 
 
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コメント
暁 達平
個人的に好きな物語です!
これからも頑張ってください!!