異能びより

上条康

#01話ー退屈で面白くない世界とお別れ

「ハァハァハァハァ………」
もうダメだ体力の限界でキツイ、皆んなについて行けない、今日はやけに足が重い、疲労が溜まってる証拠だな。

黒羽辰十くろばねたつとはそう思いながら午後の部活に励んでいた。

「おい!黒羽くろばね、離れるな、ついて行け!ほらもっとペース上げろ!」
「…はい……!」
コーチに怒鳴られながらも必死になって走る。
そして返事はしたもののやっぱりペースが上がらない、足はもう限界、ピンチだな。
そして先頭との差がどんどん広がる。

ああ何でこんなキツイ思いまでして走ってんだろ……まあ駅伝部なんだから仕方ないんだけど。
そう黒羽の所属している部活は駅伝部だった。


黒羽辰十くろばねたつとは勉強が大の苦手だっため公立の高校は全てと言っていいほど行ける高校がなかった。

私立の高校は親がお金の関係上「私立の高校は受験させん、公立の高校しかダメやぞ」と言って俺を怒鳴るだってくるだけ。

では、何で俺が今こうして高校の部活をして高校に通えているのか言うと、
中学一年の時に陸上部に入り長距離として活動していた。
すると中学3年の受験勉強真っ只中、高校の監督から俺を特待生として駅伝部に来ないかと言う話が来た。
当然だが親からは特待生なら私立の高校に行っていいと了承をもらっていた。

俺は公立か私立のどっちに行くか迷っていた、受かるか分からない公立の高校を受験するか、特待生とし私立に行くか。

本当は高校生になって部活に入るのだけは嫌だったが、俺自身公立の高校を受験しても受かる気がしなかった。
高校に行けるだけでもありがたいと思い特待生の駅伝部として私立の高校へ行くことにした。

当然だが高校生になった今部活で忙しくて、アニメを見たり、漫画、小説を読んだり、ラノベを見たりと自分の趣味に充てられる時間は無くなった。

部活のおかげで毎朝4時半起き、そして帰宅が8時過ぎ、これが毎日続く。
正直ニート生活を送りたい俺にとってはキツイ日常。

俺は勉強をして公立の高校を受験しておけばよかったと後悔していた。

いっそ俺を異世界召喚してくれ、いやしてください。
ああ漫画の主人公になりたい。

そんなことは起こるはずもなく1日1日がすぎて行く。

俺の思い描いていた高校生活とはかけ離れた高校生活を送ることとなっていた。
現実から逃げたい……。

そんな事を考えているうちに今日の10キロのペース走は終わっていた。



「ただいまー」
「お帰り……風呂沸いてるぞ」
お父さんが台所で料理をしながら静かに言う。
「ウィー」
気さくな返事をして返す。

その後風呂に入り夜飯を済ませた俺は自分の部屋に行き布団でスマホをいじりながらくつろいでいた。


「ああ、また明日も朝から部活か……退屈でつまんない学校生活だなハハッ……ん、なんだ……」

黒羽が一人でブツブツと独り言を言っていたそのとたん黒羽の頭の中で誰かの喋り声が聞こえてきた、とても若々しい声が頭の中でぐるぐると聞こえ続ける。

(やぁこんにちは、今君たちの頭の中に直接話しかけてるだけだから安心してね。あとこれは僕が話してるだけだから君たちの声は僕には届かないよ。君たちということはこれは全国の人たちの頭の中に直接話しているという事だからね。よし、それでは自己紹介といくね僕の名前は神を司る者、デット神様一言で言えば神様的な存在だね)

ど、どう言う事だ? 異世界召喚か何かの予兆か何かか?
デットと名乗った神様はそう言ってまた喋り始めた。
(それでは本題に入るとしようか)
黒羽は唾を飲み込み耳を傾ける。

(この世界を退屈で面白くないと思っている学生が約6割を超えたためこの世界の学生たちに異能つまり超能力を渡したいと思います、そしてみんなで楽しく使ってね。あとこれは学生の人にしか渡さないから、まあ学生でも使うことのできない人もたくさん出てくると思うけど、異能をどう使うかは持った本人の自由。自分の異能が何なのかはあとでのお楽しみ、そして君たちの頭の中で自分がどんな異能を使えるかはこの後に頭の中に流れてくるからよく聞いているように、あとそを見てみて綺麗な景色が今なら見放題、さぁ楽しい日常の始まりになるといいね!)

そして夜の暗い空に光が差し込み夜の世界を照らし始めた。
黒羽はベランダへと出でその光景をずっと見ていた。
「本当に、夢じゃないよな……これ」
その後数分も経たないうちにまた元の暗い夜へと戻っていた。

「ハハッマジかよ……本当にこんな事があっていいのか……すげぇ!」

そして超常現象が起き始め学生の約2000万人のうち約4割の600万人が異能の能力に目覚め始めた。

そして、黒羽辰十くろばねたつとは異能の力に目覚めることはなかった。



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