人殺しなのに飼われるだなんてありえない!

小豆しおん

第6話

「人狼だ!逃げろ!」
その言葉を聞いた僕は、声とは逆方向に走り出す。
「(ソリッド…?いや、彼はバレるなんて馬鹿なことはしないだろう)」
一緒に暮らすご主人様の顔を思い浮かべるも、あり得ないと結論づける。
人々は混乱しながらも、懸命に逃げている。時々何かが引き裂かれる様な音が聞こえる気がするが…構っている暇はない。
「(銃は持ってるけど、人狼には敵わない。何より、この子供を守らなくては…)」
子供は周りの騒音も気にせず、スヤスヤと眠っている。全くもって図太い神経の持ち主だ。

「はぁ…はぁ…」
一度森まで戻ってきた。ここまで来れば、流石に人狼も気づかないだろう。
「参ったな…また振り出しだ…」
子供と出会った場所まで戻ってくると、僕は嘆く。どうしたらこの子供を連れて帰れるだろう。親もきっと心配しているのではなかろうか…。

「何お前連れて帰ってんだよ」
一度体制を整えるため、僕は家に戻った。ソリッドに子供を見せるのは怖いが、街に出た人狼に遭遇するよりは遥かにマシだと判断したのだ。
「森で迷子になってたんだ」
「は??この森にガキ1人迷い込んでたって言うのかよ」
「その通りだ。一度街に連れて行ったんだけど、人狼が出てね…」
ソリッドの目つきが鋭くなる。
「俺じゃねーぞ」
「分かってるよ。君はこんな真昼間に姿を見せるほど馬鹿じゃないさ」
子供をソファで寝かし、ソリッドの方を向く。
「……明日まで、この子を置いていてもいいかい?」
「ガキの肉は美味いんだよな…」
「やめてくれ」
「冗談だよ。別に俺は構わねーよ」
「明日、もう一度街に出るよ。そこで親を探す」
「なら俺も行くぜ。1人より2人の方がはえーだろ」
「ありがとう、助かる」
子供が起きてソリッドに驚かないといいが…取り敢えずは、明日を待つことに僕達は決めた。

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