Dear.ハウンド
プロローグ
私は貴方を殺しに来た。
なのに、なぜだろう?
貴方のその睫毛も、
艷やかな白い肌も、髪の毛も
私をいつも通り
見据える瞳も、何もかも
惜しい。
惜しいのではなく、
これは………。
愛おしい。
愛情なら、あの時
あの場所で捨てたのに、
何故、狂おしいほどの
爪先が私の心臓に爪を
立てるのだろう?
貴方を殺す為だけに
今まで生きてきたのに、
貴方を愛してしまえば
全てが終わり、全ての
パズルのピースが当てはまるだろう。
だけど、
貴方が殺したあの子達が
私に耳打ちをするんだ。
──その牙を剥け、
その爪を立てろ。私達が
笑えなくなった、理由を
教えて………。
Dear.ハウンド。
貴方に死を。
貴方に報いを。
貴方に愛を持って、私は
この引き金を引く。
神よ、どうか。
生きとし生けるものに
たった一粒の救いだけでも。
二度と母なる大地に
涙が流れぬように。
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