Umbrella

高嶺

嫌いなのは

知るたびに、優しくされるたびに、苦しくなる。

認めたくないのに。


あたしばっかり最低で、あたしばっかり汚くて。

だって彼女は素敵な人だから。
あたしの好きな彼の好きな人だから。




岸川 美鶴きしかわ みつるさん、彼女はさくらんぼさんの大切な人だ。


バイトに入ったばかり馬鹿なあたしにとって、美鶴さんは頼れるお姉ちゃんのような存在だった。

周りから群を抜いて美人、そしてあたしでも名前を知ってる有名な大学に通っていた。

まるで漫画のヒロインだ。


さくらんぼさんと美鶴さんが付き合っているのは間もなく分かった。

だからといってあたしは辞めなかった。


仕事が楽しいのもあった。
でもそれ以上にさくらんぼさんのことが諦めきれずにいた。



あたしに勝算なんて1%だってありはしない。
それでも頑張ったって罰は当たらない。



時々、さくらんぼさんが美鶴さんを見つめるときのあの優しい目が嫌になる。

こんなに好きなんだって思い知って、苦しくてどうしようもなくなる。



ああ、美鶴さんが最低な人ならいいのに。


どれだけ彼女の嫌なところを見つけようとしてみても、美鶴さんはやっぱり素敵な人で、その分だけあたしが嫌になっていく。


だってあたしは美鶴さんのことも同じくらい好きなのに。




あたしは、あたしが大嫌い。


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