Umbrella

高嶺

告白

最後のお客様が扉を押して出ていった。
ベルが鳴る。

さくらんぼさんが「open」のふだを裏返した。

奥でエマさんが皿洗いをする音が聞こえる。




「...もし、嫌なら言わなくていいし、苦しい
 なら辞めたっていい」
さくらんぼさんが優しい声で言った。

「ただ、僕は雫ちゃんを助けたい」

その言葉に揺れたのが自分でも分かった。

「雫ちゃんに何か辛いことがあるとしたら、
 僕は死ぬ気で話を聞くよ」
さくらんぼさんが真っ直ぐに私を見つめた。

「私...」
かすれた声がでた。



「私...私は、弱い自分が嫌いなんです」
涙がこぼれそうになるのを必死でこらえた。

「いつまでも過去にとらわれて、消えなくて、
 変わらなきゃって分かってるのに、私...」

さくらんぼさんはずっと、優しい顔で、
私の話を聞いてくれた。

何度もうなずいて、決して否定はしなかった。


さくらんぼさんが湧れてくれたコーヒーに、
1粒の滴が落ちた。


「現代ドラマ」の人気作品

コメント

コメントを書く