ひつじ、ひつじ。
暗がりの親ひつじ。
「はあ…」
あれからどれくらい経っただろう。
なぜかあの男の子が忘れられない。
またお話したい。そんな気持ちに駆られていた。
「なあ。」
夫に呼びかけられてはっとする。
「はい、あなた。」
「うちの社員の鹿沼という子が最近、母親を亡くしてから会社に来なくなってな。ちょっとお前、見に行ってきてやってくれんか?」
「私がですか?」
「きっと母親が恋しいんだと思うんだ。お前もすっかり母親らしくなったし、俺なんかが行くよりも気楽で適役なんじゃないかと思ってな。」
「そうですか?なら行ってまいります。」
「うん、よろしく頼むな。」
それから夫に鹿沼さんという方の住所を聞いて、その家へ向かった。
「鹿沼さんてどんな方だろうか。」
道中考えていたが、社内にそんな人がいただろうか?
ここね、と見上げた家は林に近い立地もあってか少し薄暗く寂しげに見えた。
「おうちにいらっしゃるのかしら…」
チャイムを鳴らそうとした時、突然に家の中から大きな物音がした。
何か起きているのかと思い、窓から中をのぞくも中は見えない。
「鹿沼さん?お邪魔しますよー?」
玄関をそっとのぞき、声をかけながら玄関を抜け、室内に入る。
中は小綺麗にされているが、ところどころに殴られて凹んだような傷がある。
リビングに入るとおそらく鹿沼さんと思われる1人の男の子が座っていた。
「鹿沼さん?大丈夫ですか…?
私、あの様子を見に行くよう言われてきたんですけど…」
本当は怖くてすぐに帰りたかった。
でも夫に言いつけられたのだからせめてそれを全うしてからにしなければ。
ものかげで膝を抱えていた小さな体がはっと息をのみ、顔を上げた。
「え…っ、奥さん…?!」
「あ、あなたは…」
それはあの天然パーマかかった栗毛の男の子だった。
あれからどれくらい経っただろう。
なぜかあの男の子が忘れられない。
またお話したい。そんな気持ちに駆られていた。
「なあ。」
夫に呼びかけられてはっとする。
「はい、あなた。」
「うちの社員の鹿沼という子が最近、母親を亡くしてから会社に来なくなってな。ちょっとお前、見に行ってきてやってくれんか?」
「私がですか?」
「きっと母親が恋しいんだと思うんだ。お前もすっかり母親らしくなったし、俺なんかが行くよりも気楽で適役なんじゃないかと思ってな。」
「そうですか?なら行ってまいります。」
「うん、よろしく頼むな。」
それから夫に鹿沼さんという方の住所を聞いて、その家へ向かった。
「鹿沼さんてどんな方だろうか。」
道中考えていたが、社内にそんな人がいただろうか?
ここね、と見上げた家は林に近い立地もあってか少し薄暗く寂しげに見えた。
「おうちにいらっしゃるのかしら…」
チャイムを鳴らそうとした時、突然に家の中から大きな物音がした。
何か起きているのかと思い、窓から中をのぞくも中は見えない。
「鹿沼さん?お邪魔しますよー?」
玄関をそっとのぞき、声をかけながら玄関を抜け、室内に入る。
中は小綺麗にされているが、ところどころに殴られて凹んだような傷がある。
リビングに入るとおそらく鹿沼さんと思われる1人の男の子が座っていた。
「鹿沼さん?大丈夫ですか…?
私、あの様子を見に行くよう言われてきたんですけど…」
本当は怖くてすぐに帰りたかった。
でも夫に言いつけられたのだからせめてそれを全うしてからにしなければ。
ものかげで膝を抱えていた小さな体がはっと息をのみ、顔を上げた。
「え…っ、奥さん…?!」
「あ、あなたは…」
それはあの天然パーマかかった栗毛の男の子だった。
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