ひつじ、ひつじ。

ノベルバユーザー206812

ひつじ、鳥かごに迷う。

両親は私に素晴らしい部屋をくれた。
上に兄姉がいながらも何かをお下がりとして与えるのではなかった。綺麗な洋服、綺麗なおもちゃ、綺麗な家具、その他私が必要とあればなんでも揃えてくれた。

「ひつじさん」

おばさんが呼ぶ声がする。

「なあに、おばさん」

「すこし出かけてくるわね」

「うん、わかった」

父の経営する会社役員はみな親戚ばかりで、会社に隣接するこの家には自然と親戚の出入りが多い。
特におばさんは毎日この家に顔を出す。


「ひじりちゃん!かなたくん!行くわよー」

「まってよーーーっ!」

賑やかだった玄関先にひとりぽつんと残された私。

おばさんは私をいつもおいてけぼりにする。
おばさんは私だけ『 さん』付けで呼ぶ。

私はどうして連れてってもらえないんだろうか。

かなた兄とひじり姉とは一緒に外へ連れ出してはもらえない。

出ようとすれば親戚の誰かがどこからともなくやってきて私を叱りつける。

1人残った私を連れ出すのは父か母だった。

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