俺の異世界体験法~自分で作った人工異世界で無双します

デコポッジスペシャル

9章「罪の竜と罰の鎖(4)」

 「それじゃあ、いくぜこれで終わりだ!」

 と派手に勝利宣言をして、俺たちは散り散りに走った。
 そして、走りながら再び身体能力upと浮遊を使い、テレポーテーションでアマルティアは後ろ側に回り込む。
 そして、
 さっき、茜に渡された真っ白な刀身に持ち手に紅い装飾の施されたこのエリアのクエストで手に入る最強の片手剣『白剣 クラシス』を具現化させ、失われたメインアームに設定する。ていうか、1回もクエストに行かずにこれを握るのはなんか気が引けるな…。そんなこと言っていられる状態じゃないのはわかってるんダケドネ。

 「ウォォォォリャーーー」
  と、声を荒らげながら剣技ソードスキル「リドル」を思いっきりぶち込み、罪竜アマルティアのタゲをを俺一人に向ける。

 「グアルルルルァー」
 と荒ぶったら咆哮を放ち、また4つの鎖が俺に向かってくる。

 「その攻撃はもう見飽きたぜ!」

 と言いながらテレポートでスレスレを避け続ける。

 「行くよ!」
 「行きます!!」

 息の合った掛け声の後に無数に打ち付けられるレーザー弾と氷柱のような形をした氷塊のマシンガンがまるで横殴りの嵐だ。
 そして、また。

 「グルルアルアーーーーー」

 と雄叫びをあげ今度は冬弥と碧にタゲを取ろうとするが…。

 「させるかよ!!」

 と、首を横向け俺から視線を外した瞬間にまぁ目は潰れてんだけど…なんとなく顔が…ね理解して!!
 今度は、首筋を思いっ切り剣技ソードスキル「スライト」で切り裂く。これで、残りのHPは1本半、
 そろそろ、あれが来る。

 「茜、予定通り待機しろ!!」
 「り、了解…でもほんとに上手くいくの?」
 「大丈夫、冬弥たちが踏ん張ってくれたらなんとかなる!!」
 「人任せかよ!」
 「違うぜ、仲間を信じてるだけだ。」
 「クサッ」
 「うるせえ」

 ちょっと自分で言ってて恥ずかったけど言ってみたかったんですヨーダ。
 そして、冬弥と碧に向けて
 
 「それじゃあ、あと半分頼むわ!」
 「うん、任せて」
 「が、頑張ります。」

 と告げ、俺も一時前線から抜ける。正直無茶だと思うが、あと2分少々で1本のゲージの半分をあの二人に削らせるのは…でも次の5分を待つのは絶対に無理だ。なぜなら…
 
 「グルルァァァヴヴヴァァァーーーーー」

 今までの咆哮とはまるで別種の悲鳴のような声がこの地に深く低く響き渡った。その時、もう日は沈みかけ、空が鮮やかな赤に染まりかけた時、まるで穴が空いたかのように黒く黒く真っ黒に揺らめくのは…

 「やっぱ設定変わってねーか…」

 さっき前線から離脱し、テレポートを酷使しながら、あの黒き物体から距離を取りながらため息のように呟いた。
 あれは、罪竜アマルティアの狂乱ハサークモードである。いくら、ゲームの世界であっても命ありと設定されたからには死を恐れ、生物は死なないために進化をする。そして、アマルティアは死を間近にした時に狂乱モードになり巨大な体を固める黒紫色の鱗が黒き焔を全身に纏う。触れれば100%確実に火傷のデバフを受ける咎の焔を対処するには、取り敢えず遠距離攻撃を持つあの二人に戦ってもらっている訳だがそれではアマルティアを倒す前に全滅してしまう。
 そこで、今からしようとしている完全に博打だが、上手く行けば圧勝、ミスればジ・エンドという超極端な話だが多分上手くいく。
 
「うちのパーティーはチートが多すぎるぜ…」

 そうこうしているあいだ、まぁ20秒ぐらいしか経ってないんだがな。

 そんじゃあ、始めるか。

 俺のスキルは、いや俺はアビリティスキルを繊細に使うことが出来ることに戦っているあいだに気づいた。それは、剣を振るときに腕にかけてある身体能力upを肘と肩のところに集中させることで振るう速度を上げ手と手首に集めることで狙いを定めて、的確に切りつける、という感じに意外と応用が効く。なので、

 「いくぜ」
 
 まず、体に神速スキルを30%ぐらいの効果でかける。間違いなく100%にすると、数時間前の二の舞いになってしまうからな。
 そして、初速を上げるために太ももの付け根から下にあとこれが一番大事なんだが、目に身体中に使っていた身体能力upスキルを集める。コレも数時間前のことで一つの仮説が立ち、さっきの戦闘で確信へと変わったのが、身体能力upスキルには動体視力、体感時間を伸ばす効果がある。だから、目にかけることにより前回は全く反応できずに崖にぶつかった力でも反応することが出来る。

 「間違ってたら…考えたくねぇ…。」

 そうこう言ってる間に身体能力upスキルが切れかけてきたので、始めるとしよう。

 「茜、準備できたか?まぁ出来てなくても始まるけど。」
 「ええ、いつでも。上手くいかなかったら殺す。」
 「大丈夫、うまくいかなかったら全滅だから。」

 とメッセージのやり取りをした。ちなみに、パーティを組むとパーティメンバー全員のグループとパーティメンバー個人宛のチャットができるようになる。

 「んじゃあ、いくぜ」

 とこの街の大通りの端の方から一直線に続くこの道をクラウチングスタートで思いっきり地面を蹴飛ばし動き出す。

 「やっぱりそうか」

 どうやらさっきの仮説は当たりだったようでちゃんと動体視力が上がり体感時間が長くなっている。そして、ここからが勝負だ。

 物体には、動いていたら動き続けようと、静止していれば静止し続けようとする「慣性」というものが存在する。なので俺は今、この超スピードで動いている自分をテレポートさせた時に俺はそのまま動いてるという事に気づいた。
 だから、俺は、ここからアマルティアと「時計塔」を一直線に結んだ位置にテレポートし、浮遊スキルで少しずつ高度をあげ、突き進む。


  日が沈みかけ、茜色の空に夕闇が広まりかけている中、朝凪 茜は天高く昇っている世界の隙間のような黒色の塊を眺めている。
 いつでもとは言ったものの、いくらゲームの中とはいえ命をかけて戦うなんて事に緊張しないわけがない。この現代日本で、一般人として生きてきた一概の社会人(現在は自宅警備員)に何をしろというの!!
 
 「はぁ、こんなスキル欲しくて持ってるわけじゃなかったのにな…」

 私には2つのアビリティスキルが備わっている。それは、
 「加速」と「炎を舞う戦姫スカーレット
  まるで、今回の作戦のためにあるような組み合わせのアビリティスキル。
 今回の作戦は、冬弥と碧がアマルティアを抑え、超スピードで時計塔の屋根の上にいる私に向かって飛んでくる haku に合わせてここから屋根をけってアマルティアの方向へ飛び、あとは 彼が私に合わせて私を押し飛ばし、アマルティアを斬る。簡単に言えばこういうことになる。
 「加速」は字を見ての通りで自分の動く速度が徐々に加速する。これで彼に押し飛ばされた私はグングンと速度をあげて飛ぶことになる。
 そして、「火を舞う戦姫スカーレット」は、火傷耐性Lv3(ゲーム中盤まで火傷でダメージ受けないレベル)プラス火傷状態時ステータス2倍プラス火属性の攻撃の付加の火属性に対しての天敵スキル。確か、設定ではこのスキルが火傷に対しての耐性が「覚醒」されていないアビリティスキルでは最強だったはずだ。
 
 「はぁ、考えても仕方ないや。やらなかったら死ぬだけだし。」
 
 VRMMORPGの中が今、この世界で最も巨大な牢獄となり未だ約10万以上の人が囚われている。
 そんな世界に、配信創造されて2日で人類滅亡の危機にさらされるなんてクソゲーにも程がある。
  
 「女は度胸なんて一体どこの誰が行ったのやら…。」

 そろそろ覚悟を決めよう。もう前しか見ない。

 後ろを見たら、もう前に飛べないから。
 背中にあるものに囚われ縛られるから。
 過去に嘆いて目を逸らしてしまうから。
 
 只今をもって私の迷いは消しさろう。

 そうして、私は目の端に映る飛行物体に向けて空に駆け出した。








 

  

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