俺の異世界体験法~自分で作った人工異世界で無双します

デコポッジスペシャル

8章 「残酷にもこの世界は美しく」

 「イヤー」「ヴァーーー」「キャー」とまるで世界が絶望に飲み込まれる音がしたかのように壮大な悲鳴が聞こえた。そして、たくさんの人の体を赤色のエフェクトが包み、体がヒビ割れ、紅い光の欠片となり消えていった。 
 「ねえ、茜ちゃん一体何に気付いたの?」
 「おい、一体どういうことなんだ。」 
 と説明を求めてくる。冬弥と碧に私はあの時感じた違和感を明かした。
 「あいつが言っていることは矛盾しているのよ。あいつは、こう言った。」
 「絶望と悲鳴の協奏曲コンチェルトで彩られる殺戮SHOWをな」
 「だけど、今ここでもし、全員がリアルに戻ろうとして自殺した場合あいつにとってはなんにも嬉しくないどころか今までの頑張りが無意味になってしまう。でも、あいつは絶対そんなことはしない。だってあいつみたいな奴は損をする事を、無駄なことを、自分の思い通りに行かないことを最も嫌う人種なんだから。」
 「確かに、でもそれだけで…」
 「いいえ、それだけでは…」
 「それだけじゃないさ、」
 いきなり、さっきまで時計塔の上にいた奴がいつの間にか私の後ろにいた全く気づかなかった。でも私だけじゃなく、周りにいるまだ生きている人間は全員気づいた素振りを見せず、未だに時計塔の上を見ている。私だけ、私だけにしか見えていないのか、
 「そう、今は君にしか見えていない。安心しろ、今はそういうことにしているのさ。それにしても良く見抜いたね。みんながみんな俺を疑うことを忘れ、ほんとうに自殺するなんて思っても見なかったよ。もちろん俺が楽しむために痛覚シャットの設定を出しておいたからあいつらは叫んでいるんだが最高だな。おっと今攻撃するなよ、俺は今なら誰でも殺せるんだ。リアルでな。」
 心の中を読まれた。いや、それ以上にこいつは今、この空間の主導権自由を握っているのか。と1歩後ずさりし、剣を抜き、構えたがもう目の前にはいなかった。
 「ああ、美しい、とても美しい、生命は儚く残酷に消える時が最も美しい。最高だったよ。俺は満足超満足した。だから次は命令が出るまでは、君たちを殺さないでいるよ。じゃあね。」
 「待て!」
 と、冬弥は叫ぶがそんなことには全く反応せず闇の中に姿を消した。そして、空は再び回り、月が沈み日が昇った。だがそれに気づけたのは、西の空が赤く燃えるような光景に変わり始めた頃だった。別にぼーっとしていたわけではなかった。あいつは去り際にあるひとつのプレゼント呪いを送りつけてきたからだ。それ呪いを断ることはできずただだだ押し付けられたそれは、あいつが時計塔の上から私たちを見ていた時の光景だった。プレイヤー人間が悲鳴をあげ、絶叫し、嘆き、震え、泣き、そして静かに砕け散っていき明るい月夜に真紅の光がまるで揺らめく獄炎のような存在感でまた、儚く消える雪のように舞う、こんな地獄絵図のようなものが「美しい」と一瞬でも思ってしまった自分への罪悪感がまるで呪いのように私を話そうとせずへばりついてくる。それは一生消えることはないのだろうと、永遠と夢に現れ私を許そうとはしないのだろうと思ってしまう。なんで、この世界は希望の光は淡く薄く残酷な呪いは濃くまた、美しく感じてしまうのだろうか。
 


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コメント

  • ノベルバユーザー206957

    なんすかこの表現のうまさ、とても面白かったです。茜ちゃん主人公の7章、8章は特に良かったです。

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