中二病は死んでも治らない

ocean

第3話

 ———まもるまさるが事故にあった場所に向かう途中、守の状態について何が出来て何が出来ないのか色々試してみた。


一つ、勝以外の人間に守を見ることが出来るのか。

 守と勝の妹、結季ゆきには見えていない様子だったが———結果は同じ。通り行く人々に声を掛けるが守、誰も返事をしない。


 なぜ僕だけ見えるのだろうと不思議に思う弟、勝。


 二つ、人や物に干渉は出来るのか。
 先程家で壁を行ったり来たりした守だが———

 “物体や生物を持とうとする、触ろうとする意思を持ち合わせていれば持つことが可能”。

 “壁や建物も物体や生物と同様、通り抜けようとする意思を持ち合わせていれば通り抜けることがある可能”。


 実に恐ろしい。もはや意思を持ったスタンドじゃあないか。やろうと思えば女風呂にだって覗くことが出来るし、人に気付かれずに攻撃だって可能だ。...兄さんが馬鹿な中二病で良かった。きっとそんなことは考えないだろう


 「うっはー!スゲー!俺ってまるで意思を持ったスタンドじゃん!これであの吉武よしたけチョップ次元斬り喰らわしても気付かれないな!...女風呂覗けんじゃね?」


『 .....................。』


 前言撤回。早々に成仏させんと心に誓う勝であった———


 三つ、食欲や眠気、便意等の生理現象を持ち合わせているのだろうか。


 「そういえば腹減らないな。眠くもないし。いや、まだ昼だからか。今のところ状態異常に問題は感じられないな。むしろ、気分が凄く良いな。これもこの俺の心臓に埋められし輝石”インフィニティニウム”のお陰だな」


 元気そうで何よりだ。


 まあ一応、”幽霊”だからそう言うのは無いか。


 幽霊...。何故、霊感も何も持ち合わせていないはずの僕に、僕だけが見えているのだろう。


 幽霊とはまた、別の存在なのだろうか。


 全く見当がつかない。

 
 顎に右手を添え、足元のアスファルトをただただ見つめながら歩き、しばらく考える勝。


 『思い当たる事は大体試してみたな。兄さん、他に何か自分の身体に異変とかある?......て、えぇ!?』


 足元のアスファルトから守の方へ目を向ける勝。途端、守の身体がが浮き上がり、そのまま平行移動して勝に近づいてきた。


 「見ろ勝!たった今俺は飛行フライを使いこなせるようになったぞ!!ふははははははっ!」


腕を組み、嘲笑うかの如く表情の守。


 『うわっ!気持ち悪っ!こっち来んな!』


 なんでもありかよ。


 兄の中二病が悪化してしまうと懸念する勝。だが、時既に遅し。


 「漆黒の無限の竜ダークインフィニティドラグーンの末裔、勝よ。我、マモリエンテ•チャゲ•サドゥはこの額に宿られし刻印の名の下にウンタラカンタラなのでこの場を後にする。さらばっ!」


 『待て漆黒のウンタラカンタラ。もう目的地はすぐそこだ。その後にしてくれ。』


    ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎



 ————目的地。買い出しの帰り、兄さんが事故にあった場所。


 兄さんがトラックに跳ねられた横断歩道。


 あの時と何も変わっていない。


 『兄さん、ここが兄さん•  •  •  が死んだ場所•  •  •  •  •  •  だ。...何か思い出した?』



「..........。」


 考え込む守。そして


 「.....何も思い出せない。...やはりあの時の”聖戦”が関係してるか.......。」


 『思い出せない、か。...一体、どうなっているんだ。』


 結局、分かったことは兄さんが異常•  •であることだけだった....。


いや、もしかしたら異常なのは、僕かもしれない。


 僕は、今まで兄さんの幻覚を見ていたのかもしれない。


 今、目の前にいるのは幻。僕が作った幻想だったのなら、それは納得の出来る話だ。


 目の前で兄さんが死んだのだ。


 そりゃあ、僕も気が気じゃあ無いだろう。幻覚、幻想、幻、一つや二つ見えてしまっても可笑しくないはず。


 あはは、なんだか哀しくなってきた。


 センチメンタルな勝。


 すると突然


 「黄昏れている所悪いがちょっといいかな?」


 ひょっこりと守。続いて


 「家を出た時からずっと気になっていたんだが、あの大きな二人組•  •  •  •  •  •  •  •  はお前の友達か?」


 へ?と後ろを振り向く


 道路を挟んで反対側の歩道

 
 そこには、上下黒ずくめの服を着た大柄な体格の二人組が信号の前に立っていた。


 まだ残暑の残る九月の頭。まだ昼間だというのに、彼らは暑くは無いのだろうか。
 

 一人はソフトモヒカンの髪型をした金髪の大男。もう一人は口元に、まるでサバイバルナイフで斬られたような傷跡をした黒髪ロン毛の大男。どちらもアメリカ人ような顔立ちで、黒いサングラスを掛けている。


 その大男二人組が、サングラスで分からないがずっとこちらを見ている気がする。


 『僕にグローバルな友達は持ち合わせていないよ。てか、家から気になっていたって、どう言う事?というか...』


 ...というか、こちらに近づいて来てる。


 岩のような拳を握りしめ


 僕の方へ


 確実に


 「勝、とりあえずここでセーブしとく?

      ︎︎はい             ▷いいえ 」


 『.......お願いします。』


 


 

 

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