ネームイーター

河内三比呂

サイド ネームイーター

「ど・・どういうことだ!?私は確かに・・!!《ネームイーター》を奪った!!なのに!!お前は誰だ!!?」
 動揺を隠せない堀内を尻目に、「ネームイーター」は彼に近づくと蹴り飛ばし、そして首を叩いて気絶させた。
 そのあまりの手際のよさに舌打ちをする朝倉に彼は声をかけた。
「御覧の通りですよ刑事さん。ワタシは響也も愛芽も殺してなどいません。ましてや不審者事件もね」
「そんなの、流石にわかるってー枇々木直紀くん?」
「おや、お気づきでしたか?流石は超エースですね」
 皮肉っぽく言われてさらに不機嫌になる朝倉と、それを気にもとめない枇々木。
 二人とも口調は穏やかだが、漂う空気は緊張感を増していく。
「どうしてお友達は助けなかったのー?見ず知らずの吉澤くんは助けたのに?いや、『シルバーな俺達』を助けたのにって言った方が正しいかな?」
 その問いに枇々木は静かに答える。
「助けなかったわけではありませんよ。ただ間に合わなかっただけです。それに、彼らも喜んでいる事でしょう。・・彼らの尊い犠牲によって音芽ヒビキは伝説になるのだから」
「はい・・?」
「正直なところ、《ネームイーター》というのは手段でしかないんですよ。ヒビキを輝かせるためのね。そもそも、この設定自体響也が中学生時代に作ったらしいですし。まぁ、なんにせよ、《ネームイーター》と共にヒビキ伝説となり、女神になります。ああ!!なんて素晴らしいことだ!!」
「あのさー・・意味が全く分かんないんだけど・・なに?えーつまり・・ボーカロイドを評価させるためだけにあんなことしてたわけ?結果的に・・殺人事件まで起きたっていうのに?」
 やや怒りを含めながらの朝倉の言葉に枇々木はさも当然かのように頷く。
「ええそうですよ?彼女はワタシ達が産み出した次世代の女神です。これから世界を席巻する!彼女が評価されるということは、すなわちワタシ達が評価されるということと同意なのだ!!そう、これからだ!!」
 あまりの意味不明さに朝倉はただただ茫然とするしかない。
 なにせ、ことの発端がただの承認欲求、それも子供じみたものだったのだから。
「・・ねぇ?そのためにどれだけの人たちが恐怖して、傷ついたと思ってるの?・・ふざけんなよ。」
「?あなたこそ何ふざけているんですか?あなただって同じでしょう?評価されたいから、こんな無茶をした」
「ッ!」
「誰だってそうでしょ?目立ちたい、褒められたい、誰かに認めてほしい。だからあの手この手でそれを満たそうとする。そのためにワタシ達は《ネームイーター》を手段として選んだ。あ、ついでにこの偽物もね」
 そう指さすと、先程からピクリともしない堀内を見下ろしそして言う。
「ではそろそろ・・失礼!!!」
 ジャンプと同時に近くの木に登ると、驚くほどのスピードで飛び跳ね障害物をもろともせずあっという間に消え去っていく。
その姿はまるで、怪物のようだった。


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