聖剣を抜いたのが僕でごめんなさい!
第九話 サプライズはお好きですか?
ー中央区・国立能力開発局第一研究所ー
通称・第一能研。
ローランド王国における、魔法やスキルなどのあらゆる個人技能の研究や開発を行う特務機関であり、国民なら誰でも5グルト払えば自分の能力を調べる事が出来る。
(ちなみに1グルトは前世で言う100円程度だと思って貰えばわかりやすいだろう。)
この研究所はローランド王国内の主要都市にそれぞれ“第五”まであり、王都にある“第一研究所”は、特に優秀な研究者が集まる、言わば総本山の位置付けとなっている。
ー第一能研1F・待合室ー
「番号札23番でお待ちのユタロウ様ー!結果が出ましたので3番受付で[ステートログ]をお受け取りください!」
「、、、、はい」
すごく懐かしい掛け合いだ。
この世界での能力測定と言うのは、前世で言うところの健康診断のようなものらしい。
国民には1年に1回受ける義務があるんだとか。
(ど田舎に住んでいた僕は初聞なのだが、、)
[ステートログ]と言うA4サイズの羊皮紙1枚を軽く丸めて紐で結んだ物をを受け取ると、そのまま退館し、長く大袈裟な石階段を降りる。
下には既に診断を終えたゴトーとリーンが待っていた。
「おお!ユタロウ殿!お疲れ様でございます」
「あんたどんだけ時間掛かってるのよ!心配、、じゃなくて待ちくたびれたじゃない!」
「初めてだったから色々手続きがあったんだよ!」
「ほーら御覧なさい!リーン様は、心配だから様子を見に行くんだと言って聞かなかったのですよ。ハッハ!」
やっぱりこの2人といると落ち着く。
心も体も大きくて強い“軍神”とわがままで気が強いけど、本当は誰よりも優しい“王女様”。
自分が入るには勿体ないパーティーだ。
「何ニヤついてるのよ?ほら、ステータス確認するわよ!」
思わずニヤついてしまったのは不覚だったが、気を取直す。
そもそも僕がここまで来た目的はこれなのだ。
ここでステータスを確認し、なぜ僕に[聖剣エクスカリバー]が抜けてしまったのかを明らかにする為の旅だった。
「、、、行くぞ」
2人は思わず息を飲む。
僕はもらった[ステートログ]を一気に開いた。
名前:ユタロウ
年齢:15
職業:村人
『ステータス』
心力:B
技力:C
体力:B
筋力:B
脚力:B
魔力:C
知力:C
『スキル』
(固有)暴力耐性:S
(固有)サプライズ:S
「、、、え。」
思わず目を疑った。
おい、発光体!約束と違うぞ!
「どれどれー、、あら!思ってたより良いじゃない、、、え!!スキルSが2つですって!!」
わかる。そこも驚きポイントだよな。
俺も初めて知ったし、暴力耐性はまだしも「サプライズ」って何?って思う。
でもそこじゃ無いのですよ!
「ほー、、ろくに鍛錬もせずにこれですか、、中々見所のあるステータスだと思いますぞ」
そこです!もしも「サプライズ」というスキルを使ってしまったのなら、今この瞬間なんです。
「あり得ない!信じてもらえないかも知れないけど僕のステータスはオールCの筈なんですよ!!」
「何故ですか?」
「なんでよ?」
思わず口ごもる。
まさか転生の時、光る玉に設定してもらったなんて言えない。
「、、、そうゆう家系、、なんです!」
「そんな家系聞いた事無いわよ!」
「私も存じ上げないですな、、霊峰キュアランブルを遊び場にしていたユタロウ殿でしたら、自然と基礎体力が上がっていたのかも知れませんぞ」
確かに。ここ3年は前世のしがらみから解き放たれ、嬉しさのあまり毎日のように山で走り回っていた。
「それにこの[サプライズ]という聞いた事も無いスキル。文字通りの意味だとすれば、ステータスが思った以上に上がっていたのは、もしかしたらそのスキルが発動したって可能性もあるわね。基礎ステータスに影響するスキルなんてそれこそ[サプライズ]だけど」
やはりその可能性もあるのか。
そうだとすればなんと厄介なスキルだ。
平穏な日常とは真逆の特性を持つスキルではないか。
「ちなみに僕のステータスって強いんですか?」
まじまじと僕の[ステートログ]を見つめる2人の出した答えは一緒だった。
「弱くはない、、普通よ」
「普通ですな」
「王国騎士アカデミーの1年生にいそうな感じだわ」
「そうですなー。しかし自力でこれは立派なものですよ」
とりあえず2人の口から普通と言う言葉を聞けて良かった。まだ日常に戻れる芽が残っているように思える。
「なぜこれで[聖剣]が抜けたの?」
「仮説ですが、、、我々が聖剣を探しに[聖なる丘]まで行った、あの時。一番驚くとすれば何でしょうか?」
「そりゃー聖剣が抜けてしまっている事、聖剣が無い事だわ、、驚きよ!サプライズ、、あ!!」
「そうです。驚くべきスキルです、、」
2人は揃って肩を落として深いため息を吐いた。
僕はそれが凄い悪い事のように思え、思わず謝ってしまう。
「ごめんなさい、、」
「ユタロウ殿のせいではありません。我々、王国の人間もまさか、そのようなスキルが存在するなんて知らなかったのですよ」
「知ってたら、もっと厳重に管理してたわ!」
「でも、、、」
ユタロウは自分のスキルを呪った。
平穏な日常を乱してしまったのは自分自信の「サプライズ」というヘンテコな技能らしい。
 俯いてる僕にリーンは力強く話しかけてきた。
「しょうがないわね!私のステータスを特別に見せてあげるから、顔を上げてシャキッとしなさい!」
リーンはそう言うと自慢気に[ステートログ]を突き出して見せる。
名前:リーン・エス・ローランド
年齢:15
職業:王女
『ステータス』
心力:A
技力:A
体力:B
筋力:C
脚力:A
魔力:A
知力:A
『スキル』
魔法強化:B・物理強化:C ・高速詠唱:C
高速の剣技:C・強者の風格:C・魅惑の美貌:D
博識:C
(固有)勇者の器:B
「これは強いの?」
「あんたこれ見て何もわかんないわけ!」
あからさまにコケて見せるリーン。
正直、他人のステータスを見るのが初めてだった僕にはなんの物差しも無いのだった。
「どれどれ、、ほー!またステータスが上がってますな!その歳でこの能力値は早々いませんぞ」
「そうなんだ」
そう言われて見てみるとステータスはほとんどAだし、スキルもいっぱいある。
「魅惑の美貌って、、ププッ」
リーンをまじまじと見てみるが何も感じない。
「なるほど。スキルがD程度じゃほとんど無意味なんだな!」
「何ですって!ほら、ほらほらどうよ!どうよー!」
リーンは自分なりに魅惑の美貌を表現してみるが、返って気持ち悪くなってしまう。
「リーン、、頑張ろうぜ!」
「ムカツクー!!」
「これこれお二方。」
取っ組み合いになりかけた所をゴトーに静止され、2人はまるで子猫のように持ち上げられた。
「あんたはそれぐらい元気があった方がいいのよ!」
「、、、、ありがとう」
そいういとリーンが満足そうに笑って見せた。
その笑い顔は今まで見た中で一番魅力的であったため、僕は少しドキッとした。
「そうだ!ゴトーはどうだったのよ!私も見せたんだし、あなたも見せなさいよね!」
「仕方ないですな。私なんてここ最近は下がって行く一方で、、お恥ずかしい。」
そういうと、[ステートログ]の紐を時控えめに、表にして出した。
名前:フランシス・ゴトー
年齢:64
職業:王国軍指揮官
『ステータス』
心力:S
技力:SSS
体力:A
筋力:SS
脚力:S
魔力:A
知力:S
『スキル』
鬼神の心得:S・武神の心得:S・剣神の心得:S
竜殺し:S・魔獣殺し:S・英雄の風格:A
(固有)軍神の領域:S
「「はあ!?」」
これは素人の自分でさえわかる。
圧倒的強者のステータスだ。
[ヨーデル]で見た強さに改めて納得が言った。
「なあリーン。愚問だとは思うが、ゴトーさんのステータスって凄いんだよな」
「当たり前でしょ!私もゴトーのステータスなんて初めて見たけど、破格過ぎるわ、、」
ほぼ全てのランクがS以上というのも凄いが、リーン曰く“最上級スキル”の異様な多さと、そのランクの方が凄いらしい。
「あーもう、、やめやめ!やる気が無くなっちゃうわ!」
リーンはイライラを募らせてはいたが、僕は逆にホッとしていた。一時はあの発光体を責めたが、僕が凡人である事は2人を見れば一目瞭然だったからだ。
僕の旅はこれで終わりだ。
魔王どころか魔獣と戦う事も無いだろう。
[聖剣エクスカリバー]は抜いてしまったが、僕には戦う力が無い。
聞けば世界にはまだ[七聖剣]と言う魔王に対抗できる力の宿った聖剣があると聞く。
そいつを探してもらおう。
この剣はこっそり台座に戻そう。
別れの挨拶をしようとした瞬間。
リーンは僕の手を掴む。
「あんたアカデミー入んなさい!王女からの命令よ!」
「はぁ?」
本当にこの子は僕のカルマを無断で変えてくる。
通称・第一能研。
ローランド王国における、魔法やスキルなどのあらゆる個人技能の研究や開発を行う特務機関であり、国民なら誰でも5グルト払えば自分の能力を調べる事が出来る。
(ちなみに1グルトは前世で言う100円程度だと思って貰えばわかりやすいだろう。)
この研究所はローランド王国内の主要都市にそれぞれ“第五”まであり、王都にある“第一研究所”は、特に優秀な研究者が集まる、言わば総本山の位置付けとなっている。
ー第一能研1F・待合室ー
「番号札23番でお待ちのユタロウ様ー!結果が出ましたので3番受付で[ステートログ]をお受け取りください!」
「、、、、はい」
すごく懐かしい掛け合いだ。
この世界での能力測定と言うのは、前世で言うところの健康診断のようなものらしい。
国民には1年に1回受ける義務があるんだとか。
(ど田舎に住んでいた僕は初聞なのだが、、)
[ステートログ]と言うA4サイズの羊皮紙1枚を軽く丸めて紐で結んだ物をを受け取ると、そのまま退館し、長く大袈裟な石階段を降りる。
下には既に診断を終えたゴトーとリーンが待っていた。
「おお!ユタロウ殿!お疲れ様でございます」
「あんたどんだけ時間掛かってるのよ!心配、、じゃなくて待ちくたびれたじゃない!」
「初めてだったから色々手続きがあったんだよ!」
「ほーら御覧なさい!リーン様は、心配だから様子を見に行くんだと言って聞かなかったのですよ。ハッハ!」
やっぱりこの2人といると落ち着く。
心も体も大きくて強い“軍神”とわがままで気が強いけど、本当は誰よりも優しい“王女様”。
自分が入るには勿体ないパーティーだ。
「何ニヤついてるのよ?ほら、ステータス確認するわよ!」
思わずニヤついてしまったのは不覚だったが、気を取直す。
そもそも僕がここまで来た目的はこれなのだ。
ここでステータスを確認し、なぜ僕に[聖剣エクスカリバー]が抜けてしまったのかを明らかにする為の旅だった。
「、、、行くぞ」
2人は思わず息を飲む。
僕はもらった[ステートログ]を一気に開いた。
名前:ユタロウ
年齢:15
職業:村人
『ステータス』
心力:B
技力:C
体力:B
筋力:B
脚力:B
魔力:C
知力:C
『スキル』
(固有)暴力耐性:S
(固有)サプライズ:S
「、、、え。」
思わず目を疑った。
おい、発光体!約束と違うぞ!
「どれどれー、、あら!思ってたより良いじゃない、、、え!!スキルSが2つですって!!」
わかる。そこも驚きポイントだよな。
俺も初めて知ったし、暴力耐性はまだしも「サプライズ」って何?って思う。
でもそこじゃ無いのですよ!
「ほー、、ろくに鍛錬もせずにこれですか、、中々見所のあるステータスだと思いますぞ」
そこです!もしも「サプライズ」というスキルを使ってしまったのなら、今この瞬間なんです。
「あり得ない!信じてもらえないかも知れないけど僕のステータスはオールCの筈なんですよ!!」
「何故ですか?」
「なんでよ?」
思わず口ごもる。
まさか転生の時、光る玉に設定してもらったなんて言えない。
「、、、そうゆう家系、、なんです!」
「そんな家系聞いた事無いわよ!」
「私も存じ上げないですな、、霊峰キュアランブルを遊び場にしていたユタロウ殿でしたら、自然と基礎体力が上がっていたのかも知れませんぞ」
確かに。ここ3年は前世のしがらみから解き放たれ、嬉しさのあまり毎日のように山で走り回っていた。
「それにこの[サプライズ]という聞いた事も無いスキル。文字通りの意味だとすれば、ステータスが思った以上に上がっていたのは、もしかしたらそのスキルが発動したって可能性もあるわね。基礎ステータスに影響するスキルなんてそれこそ[サプライズ]だけど」
やはりその可能性もあるのか。
そうだとすればなんと厄介なスキルだ。
平穏な日常とは真逆の特性を持つスキルではないか。
「ちなみに僕のステータスって強いんですか?」
まじまじと僕の[ステートログ]を見つめる2人の出した答えは一緒だった。
「弱くはない、、普通よ」
「普通ですな」
「王国騎士アカデミーの1年生にいそうな感じだわ」
「そうですなー。しかし自力でこれは立派なものですよ」
とりあえず2人の口から普通と言う言葉を聞けて良かった。まだ日常に戻れる芽が残っているように思える。
「なぜこれで[聖剣]が抜けたの?」
「仮説ですが、、、我々が聖剣を探しに[聖なる丘]まで行った、あの時。一番驚くとすれば何でしょうか?」
「そりゃー聖剣が抜けてしまっている事、聖剣が無い事だわ、、驚きよ!サプライズ、、あ!!」
「そうです。驚くべきスキルです、、」
2人は揃って肩を落として深いため息を吐いた。
僕はそれが凄い悪い事のように思え、思わず謝ってしまう。
「ごめんなさい、、」
「ユタロウ殿のせいではありません。我々、王国の人間もまさか、そのようなスキルが存在するなんて知らなかったのですよ」
「知ってたら、もっと厳重に管理してたわ!」
「でも、、、」
ユタロウは自分のスキルを呪った。
平穏な日常を乱してしまったのは自分自信の「サプライズ」というヘンテコな技能らしい。
 俯いてる僕にリーンは力強く話しかけてきた。
「しょうがないわね!私のステータスを特別に見せてあげるから、顔を上げてシャキッとしなさい!」
リーンはそう言うと自慢気に[ステートログ]を突き出して見せる。
名前:リーン・エス・ローランド
年齢:15
職業:王女
『ステータス』
心力:A
技力:A
体力:B
筋力:C
脚力:A
魔力:A
知力:A
『スキル』
魔法強化:B・物理強化:C ・高速詠唱:C
高速の剣技:C・強者の風格:C・魅惑の美貌:D
博識:C
(固有)勇者の器:B
「これは強いの?」
「あんたこれ見て何もわかんないわけ!」
あからさまにコケて見せるリーン。
正直、他人のステータスを見るのが初めてだった僕にはなんの物差しも無いのだった。
「どれどれ、、ほー!またステータスが上がってますな!その歳でこの能力値は早々いませんぞ」
「そうなんだ」
そう言われて見てみるとステータスはほとんどAだし、スキルもいっぱいある。
「魅惑の美貌って、、ププッ」
リーンをまじまじと見てみるが何も感じない。
「なるほど。スキルがD程度じゃほとんど無意味なんだな!」
「何ですって!ほら、ほらほらどうよ!どうよー!」
リーンは自分なりに魅惑の美貌を表現してみるが、返って気持ち悪くなってしまう。
「リーン、、頑張ろうぜ!」
「ムカツクー!!」
「これこれお二方。」
取っ組み合いになりかけた所をゴトーに静止され、2人はまるで子猫のように持ち上げられた。
「あんたはそれぐらい元気があった方がいいのよ!」
「、、、、ありがとう」
そいういとリーンが満足そうに笑って見せた。
その笑い顔は今まで見た中で一番魅力的であったため、僕は少しドキッとした。
「そうだ!ゴトーはどうだったのよ!私も見せたんだし、あなたも見せなさいよね!」
「仕方ないですな。私なんてここ最近は下がって行く一方で、、お恥ずかしい。」
そういうと、[ステートログ]の紐を時控えめに、表にして出した。
名前:フランシス・ゴトー
年齢:64
職業:王国軍指揮官
『ステータス』
心力:S
技力:SSS
体力:A
筋力:SS
脚力:S
魔力:A
知力:S
『スキル』
鬼神の心得:S・武神の心得:S・剣神の心得:S
竜殺し:S・魔獣殺し:S・英雄の風格:A
(固有)軍神の領域:S
「「はあ!?」」
これは素人の自分でさえわかる。
圧倒的強者のステータスだ。
[ヨーデル]で見た強さに改めて納得が言った。
「なあリーン。愚問だとは思うが、ゴトーさんのステータスって凄いんだよな」
「当たり前でしょ!私もゴトーのステータスなんて初めて見たけど、破格過ぎるわ、、」
ほぼ全てのランクがS以上というのも凄いが、リーン曰く“最上級スキル”の異様な多さと、そのランクの方が凄いらしい。
「あーもう、、やめやめ!やる気が無くなっちゃうわ!」
リーンはイライラを募らせてはいたが、僕は逆にホッとしていた。一時はあの発光体を責めたが、僕が凡人である事は2人を見れば一目瞭然だったからだ。
僕の旅はこれで終わりだ。
魔王どころか魔獣と戦う事も無いだろう。
[聖剣エクスカリバー]は抜いてしまったが、僕には戦う力が無い。
聞けば世界にはまだ[七聖剣]と言う魔王に対抗できる力の宿った聖剣があると聞く。
そいつを探してもらおう。
この剣はこっそり台座に戻そう。
別れの挨拶をしようとした瞬間。
リーンは僕の手を掴む。
「あんたアカデミー入んなさい!王女からの命令よ!」
「はぁ?」
本当にこの子は僕のカルマを無断で変えてくる。
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