人間不信様のハーレム世界

和銅修一

ミノスの真実

「さて、彼奴ちゃんと主の役に立つか心配じゃがこちらはこちらの仕事をするかの」
 残されたアリアとレイナ。 
 レイナはミノスの魔力を探しつつ森の中を動き、アリアは悠々とその後ろからついていった。
「ミノスさんの魔力はこちらの方から感知出来ます。ですがここからは気を引き締めた方がいいかもしれません」
「何故じゃ。あの天使共が何匹いようともあの眼鏡小娘を救い出すくらい簡単じゃろ」
「問題はそこではありません。ミノスの魔力に異変があります。前まではとても不安定なものでしたがこれは歪でまるで……」
 そこからの続きは彼女の口から出ることはなかった。仕方なくアリアが問いかける。
 しかし、レイナにではない。茂みに隠れていた天使にだ。
「何者じゃ。そこにおるのは分かっておるぞ」
「待ってくれ。戦う意思はない」
 手をあげて茂みから現れたのはあの孤島で出会った天使の片方。この捜索をするきっかけとなった転移魔法をした天使だ。
「お主はあの二人を転移させた天使か。何故そんなズタボロになっておるのじゃ」
 以前は小綺麗な鎧に包まれていたがそれは所々傷だらけになっている。その傷はどれも深く、まるで怪物の爪で引っ掻かれたみたいだ。
「あの後、こちらも転移をして邪魔者だけを消そうとしたら逆に返り討ちにあった。目的は達成できたからいいが、あれをどうにかしてくれないか。これでは我々の拠点が危うい」
「虫のいい話じゃの。そちらから仕掛けてきたというのに困ったら助けを請うとは」
「ですがアリアさん。私たちが悠斗様に頼まれたのはミノスさんを助け出すことです。多少の修正は必要ですがそれに変わりはないはずですよね」
「分かっておる。余計な意地を張るなと言いたいのじゃろ」
 悠斗が攻め込みに行った今時間を無駄にしたくはない。
「では詳しい説明をお願いします。ミノスさんの身に何が起こったのですか?」
 レイナの問いを皮切りに傷だらけの天使は腰をおろして深刻な面立ちで話し始めた。
「我々の天使の力の影響で本性が現れてその力をコントロール出来ず暴れている。自我はもうほとんどないだろう」
「本性? 一体何の話をしておる」
「一緒にいて気づいていなかったのか。あの女、人間ではない。魔の血が混ざっている」
「魔の血じゃと?」
 あの校長は何も言わなかった。知っていてあえて言わなかった可能性もあるが……。
「人間と異形の間に産まれた存在ということですか。それは驚きですが何故暴走という事態に?」
「我々天使の力は聖なる力で元々は異形殲滅のためのもの。あの転移も天使の力によるものであの女に流れていた血が反応をしてあの様な姿になったのだと考えられる」
「あの様な姿……じゃと」
「見れば分かる。あれはもやは人間とは呼べない」
「自我はほとんどないと仰っていましたがその天使で元に戻すことは出来ないのですか?」
「残念ながら天使の力とて万能ではない。可能性があるとしたら魔力を使い果たさせるしかないが」
 メールでの転送後に見たあの光景。あれは
ミノスがやったもの。だがそれまでの時間を考えるとまだ魔力は相当な量が残っている。
「ならばやることは決まったの。あの眼鏡小娘には前々から説教をしてやろうと思っておったのじゃ」
「アリアさん。仲間同士なんですから手加減はしてあげてくださいよ。暴走しているのは彼女の意思とは関係ないんですから」
「まさかあれを相手に魔力を枯渇させるのを前提に戦うつもりか⁉︎ あまりにも無謀だ」
「無謀でも主の命令は絶対なのじゃ。あの方の悲しむ顔を見ることになるくらいなら地獄に落ちたほうがマシじゃ」
「それでは悠斗様は更に悲しんでしまわれます。なのでここは早々に事を終わらせてしまいましょう」
「分かっておるわい。全く、例えばの話じゃというのに冗談の分からん奴じゃな」
「冗談でも言っていいことと悪いことがあります」
「では代わりにあの眼鏡小娘の冗談みたいな遊びに付き合ってやるかの」
 二人は天使を置いてミノスを止めに歩み始めた。

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