人間不信様のハーレム世界

和銅修一

灼熱の地

「あ、あっち〜」
 ここはまさに灼熱という言葉が似合うだろう。
 額から滝のように汗が吹き出してくる。今は防具を脱いで、半袖の半ズボンとなっているがそれでもこの暑さはしのげない。
「大丈夫ですか悠斗様」
 顔を覗き込んでくるレイナの顔には汗など一滴もなく、まるでこの暑さが嘘みたいだ。
「ハッハッハ。主はまだまだじゃな。この程度の暑さで音を上げるとは」
 と、強がっているアリアの体からは悠斗の二倍ほどの汗が流れ出ている。そのせいで服なんかはビショビショになって、少し透けて見えてしまう。
「アリアン。強がらなくていいんすよ。おいらは竜人だから違いが出てくるのは当然っす」
 出会った時から涼しそうな服装だったホグアはこの暑さでも笑っている。
 竜人だから暑さには強いのかもしれない。
「あの二人は何してんだ?」
「どちらが暑さに強いか勝負しているらしいですよ。ここまで聞こえました。勝った方が悠斗様を好きにできるとか」
「なんで俺が賞品になってんだよ。俺は知らねーからな。自分がこの暑さに耐え切るのに精一杯なんだよ」
 悠斗は昔から夏と冬が嫌いなのだ。夏には毎日クーラーをつけて、冬にはコタツに潜りこんで凌いでいたがこの世界にクーラーやコタツは存在しない。
 つまり、耐えるしかない。
「まったく、争うなんて野蛮ですね。勝敗など差別を生むだけです。こんな暑さ、神に祈りを捧げていれば気になりませんよ」
 そう言いながら、手を合わせるエルだが汗でべたついている。
「いや、無理だろ。その格好じゃ」
 彼女は着替えなどを鞄に詰めて来たが、服はほとんど同じ白いローブ。
 肌の露出度が低いその格好では風が通らず、さらに暑さを増していることだろう。
「だ、大丈夫です。聖職者ですからこの格好でいいんです。気にしないでくだはい」
 限界に達したのか、ろれつが回らなくなってきている。
「オイオイ、大丈夫じゃないじゃねーか。おいレイナ! どうにかなんねーか?」
 このままだと、いつかぶっ倒れてしまいそうだ。あまり期待はしないが一応レイナに聴いてみる。
「ありますよ。では、少し準備するのでここで待っていてください悠斗様。エルさんは私についてきてください。ミノスさん、それにお二人も」
 単調に返したレイナは隠れるように棘の後ろに隠れた。
 本当に対策法があるとは知らなかった悠斗は素早いレイナの動きに呆気にとられて一人となって暇となったので下の一匹に愚痴を吐くことにした。
「オラス……なんでここはこんなに暑いだ。前の街はこんな暑くなかっただろ。なんでこんなに暑くなったんだ」
 この長生きして知識を蓄えいる竜ならば知っているのではないかと思った。そしてその予想通り、オラスはこの暑さの原因を知っている。
「ここは活火山が多くそのため、地中にマグマがその分点在しておる。その熱でここら一帯は暑くなっとるんじゃよ」
「ふ〜ん」
 何と無くスッキリしたが、暑さは変わらない。
「ったく、何してるんだあいつらは」
 隠れてからかれこれ十分ぐらい経っているのだが一切姿を現さない。
 女子特有のテンションの高い声が時たま聞こえるだけだ。
 そしてその声が止んで数秒後、
「お待たしました悠斗様」
 とレイナを先頭に五人が水着姿で現れた。
「な! お、お前らなんてもん着てんだよ」
 ホグアは最初から布少なめの服を着ていたが、今回は全員なので目のやり場に困る。
 黒を基調とした水着を着たアリアも、水色ストライプ水着のレイナもピンクで花柄の水着姿のミノスもエ……ルは大丈夫だ。問題ない。
 ただエルだけ学校指定のスクール水着なだけだ。とても似合っている。
 これが神を崇拝する聖職者なのだから、おかしくてたまらない。
「ちょっと榊さん。今、失礼なこと考えていませんでしたか?」
「いや、何も」
 咄嗟とっさに目を逸らすが、エルの疑いの目が鋭く光る。
「ふん、この聖職者などどうでも良いわ。それより主! どうじゃこの水着、セックシィーじゃろ」
 両手を足につけて胸を強調してくるアリア。着ている黒いビキニもまた似合っている。
「ああ、セクシーだなー」
「おい! 感情がこもっとらんぞ」
「つーか、なんでお前ら水着着てるんだよ。遊びならとっとと着替えろ」
「遊びではありませんよ悠斗様。みなさんが暑いと仰るので私が前々から頼んで、先日頂いた水着を着ただけです。服を変えたのと同じですよ」
「た、確かにそうだな。暑いし仕方ないか……」
 だが一番困るのは視線にあれが映ることだ。
 エルとかなら何ともないが、直視するのは男として困る。
「ん? 悠斗さん、あれなんでしょう」
 山が続く中ミノスが指差したのは大きな海原であった。
「う、海? こんな暑いところに海があるのか」
「とにかく行ってみましょう悠斗様」
「そうだな。オラス、頼むぞ」
「うむ、分かっておる」
 高度がぐんぐんと下がる時、海に浮きながら見つめる者がいたが着陸すると同時に海の底へと潜って行ってしまった。

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