人間不信様のハーレム世界

和銅修一

白い炎の惨劇

「そういえば悠斗さんタリエス先生のこと学園長に話してませんでしたね」
 オラスに乗り始めた時は高い、怖いと泣き叫んでいたが今ではまるで住み慣れた我が家のように思っている。ただ一つ難点をあげるとしたら下が鱗でゴツゴツしていることだがそれは我慢するしかない。
「まあな。爺さんはかなり大変だったからあれ以上の心配事をかけたくないから、あの本部長さんに罪をなすりつけといたんだよ」
 本部長はあの高さから落ちても奇跡的に無事だったが魂が抜けたみたいな様子で何も喋らなかったそうだ。
 それにそいつがタリエスをそそのかしたのは事実。調べればわかることだ。
「やっぱり悠斗さんは優しいんですね」
 ミノスは悠斗の横顔を眺めてふと、微笑んだ。
「ぬ〜、眼鏡っ娘! 主を独占するな。主は私のものだぞ」
「俺はお前のものになった覚えはねーぞ」
「そうっす。悠斗はおいらのものっす」
「ちげーよ。お前が出てくると話がややこしくなるだけだからすっこんでろ」
「そうです! 悠斗様はみんなのものです。仲良くしてください」
「レイナ……。お前綺麗に片付けようとしてるけどそれ方向性間違ってるぞ。俺は誰のものでもない」
「大変ですね」
 ミノスは三人に翻弄ほんろうされる悠斗の姿を見て、少し可哀想に思えてきた。
「まったくだ」
「おい、背中で何を騒いでおる。もうすぐ次の街に着くぞ」
 黙って飛んでいたオラスも呆れたように呼びかけてきた。
「ん? そうか。だけどイベントがないならよらないぞ。他の参加者に追いつかれたくないしな」
 魔法都市イムホテギアでは騒動に巻き込まれて、思ったより時間を取られてしまった。
「だがもう一人、仲間が必要だと思うぞ」
「いや、いらないだろ。魔道士も揃ったし、十分なほどに戦力はあるだろ」
 防御力の高いレイナ、動きが俊敏なアリア、空が飛べて偵察ができるホグア。さらに魔法が使えるミノス。
 ミノスの場合はまだ杖を上手く扱えていないからまだ戦力として数えられないが。
「確かにそうだが、補助的な役目のものが一人もおらんぞ」
「そうだなミノスも回復系の魔法を使えないから誰かが怪我したら大変だな」
 今までは誰も怪我をしてこなかったが、これからもそうだとは限らない。
「ま、待つのだ主よ。それは……つまり、また女を作るということか?」
「おい、それだと変な意味に聞こえてくるだろ。ミノスの時と同じで必要だと言ってるんだ。それにまだ女と決まったわけじゃないだろ」
「む……主がそういうことなら。だが浮気はするなよ」
「浮気って……まあわかった。で、その街に回復系の魔法を使える奴がいるのか?」
「魔法ではない。聞いた話によると特別な力で傷をいやす女性がいるらしい。その街はルーチェと言って、教会が多く存在して彼女は天使と呼ばれて慕われている」
 アリアは顔をしかめた。仲間候補にあがったのが女だと知って怒っているのだ。
「なら、その街に寄ってみるか」
 この先の進路が決まった途端、森から白い炎が空へ立ち上った。 
「な、なんすったか」
 以前、ホグアが出した合図の時の炎よりも格段に大きい。
「気になるな。白い炎を出すモンスターなんて聞いたことないし、そんな魔法もなかった。オラス、あそこまで頼む」
「了解した」
 オラスに頼んで白い炎が上がった地点へと向かう。なぜかあの炎が気になった。
 見たことがないものだったらということもあるが、何かに似ているようで見過ごすことはできなかった。



「うひゃ〜、凄いっすね」
 ホグアは白い炎が上がった地点に着くと驚きの声をあげた。
 無理もない。人だったと思われる物体が白い炎で焼かれているのだ。
 あの勢いでは骨まで燃やし尽くしてしまいそうで怖い。
 それと気になることが一つ。なぜか木は一切、燃えていない。
 ここはほとんどが森で覆われているので、炎なんて使ったらどれかに燃え移って大火事になるのは必至。
 だが木の葉の一枚すら燃えていない。これは不自然すぎる。
「どうやら山賊がやられたようじゃの。そこら辺に斧が転がっておる。数からしてそれなりに大きいものじゃたらしいが……」
 辺りを見渡すが、人っ子一人いない。
「何かわかったか?」
 悠斗はこの場を備わっていた機械で調査していたレイナに話しかける。
「はい。魔力と微かに他の力が発見できました。ですがそれがなんなのかは不明です」
 つまり、あの白い炎は悠斗が使ったスターバーストのような合わせ技の可能性がある。
「にしても、残忍な奴じゃ。骨も残さず灰にするとは恐ろしい」
 しかし、ミノスはアリアとは別の考えを持っていた。それは少し離れた場所に石が積み上げられていたからだ。
「そうでしょうか。ここにお墓らしきものが立ってます。もしかして……」
「なら犯人は人か、人型のモンスターだな。どちらせよ、もうここにいても意味ない。オラス、街まで頼むぞ」
 小さく頷いたオラスは五人を乗せてルーチェへと向かった。

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