人間不信様のハーレム世界

和銅修一

再度の会議

「これはこれは学園長。どうしたのですか?まさかもうギランカの対策がお見つかりになったのですか」
 学園長は足を組んでいる本部長の前に座る。
「そのまさかじゃよ」
 予想外の答えに本部長は眉をひそめる。
「ほう、ならば聞かせてもらいませんか」
「最初からそのつもりで来とる。安心せい」
「なるほど。そうですかそれを聞いて安心しましたよ」
「そうじゃな。だが詳しくは話せんのじゃ。そこは我慢してくれ」
「詳しくは? 何か隠しているようですね」
「いや、隠しておるではなくてただ単に警戒しておるんじゃよ。誰が聴いてるとも限らんからの」
「盗聴の心配はありませんよ。この建物は徹底した警備をしていますから」
「お主が聴いておるではないか」
 ………………。
 本部長は唖然として口を開けてぼーっとした。
「ま、まさか僕を疑ってるんですか」
「どんな可能性も考えて行動せねば足を引っ張りれるとある若造に忠告されての」
 ギリギリという音がした。
 本部長が歯ぎしりしている音だ。
「では会議室に行こうではないか本部長殿。会議は早めに終わらせた方がいいじゃろ」
「そ、そうですね。では他の役員たちに連絡するので学園長は先に会議室に行っていてください」
「了解じゃ」
 杖を支えにして立ち上がり部屋を出て行く。
「あのジジイなに考えてやがる。誰かになんか吹き込まれたと考えるべきだが、それは誰だ? あのジジイは頭が固いと有名なのだが。ジジイより上の奴が来たのかそれとも……。考えても無駄だな。あのジジイが何をしようと問題ない」
 本部長は役員たちを収集するために立ち上がる。



 会議は順調に進んだ。
 とりあえず、ギランカの集団のいる方角にこの都市から集めた魔道士を守りの陣形で配置して戦う。
 戦いの際は自分の身を優先して危険だと思ったら後退すること。
 無駄な死が嫌いなジジイが考えそうな甘い作戦だと本部長だけでなく他の役員も思ったことだろう。
 だが現状はどんな作戦でもよかった。彼の、イシリア学園学園長の作戦であることが重要なのだ。
 そして会議はその作戦ということで満場一致してそれを指揮するのは学園長のなった。



「ふぅ、年寄りには辛いのぉ」
 会議室のピリピリした感じ、あそこに十分いるだけで少ない寿命がさらに短くなってしまいそうだ。
「よぉ、爺さん。会議とやらは終わったよ鵜だな」
 彼はここの生徒ではない。
 参加者。神を選ぶ戦いに身を投じている者の一人だ。そんな彼とは協力関係にある。
「ああ、若造のおかげですぐに終わったわい」
 本部長に喧嘩を売る形となったが、それのおかげで早く返してくれたのもある。
「でも、気をつけろよ。もう歳なんだから体のこととか考えろ」
「なんじゃお主。悪いもんでも拾って食べたか?」
 不気味なほどに様子が変わったから自然とそう思ってしまう。
「ホグアじゃないんだからそんなことしてねーよ。ただ俺の爺さんと似てたから……そのだな」
「ほっほ、大丈夫じゃよ。まだ若造に心配されるほど衰えてはおらんて」
「だな。元気有り余ってるって感じするわ」
 普通の人と比べて、気迫が違う。
 一介の騎士では到底出せない気迫。彼はそんな気迫を息をするがごとく出している。
「あと、軽く十年ぐらい生きるつもりじゃ」
「今何歳だよ?」
「……どうじゃったかの?」
「忘れたのかよ!
「あまり大声出さんでくれ。これでも疲れておるんじゃ」
 と、いっても精神的にだ。肉体的には問題ない。いつでも戦えるぐらいに問題はない。「す、すまん。あまりにも元気だからよ他のやつと同じように接してたわ」
 それはこの年寄りとは思えない気迫と元気にあふれていて、一瞬だが同年代に感じてしまったから自然とそんな態度のなってしまったのだ。
 つまり彼のせいでもある。
「よいよい。それより何か用かの?わしの部屋を訪ねたんじゃから一つぐらいはあるのじゃろ」
 いつも隣にいる仲間たちがいない。それほど重要な用事ではなく、彼個人の用事ではないだろうか。
 シグダリアはそう読んだ。
「それがな。爺さんが帰ってくるまでの暇つぶししてミノスにこの学園を案内してもらったんだが……。最後の方に寄った寮でミノスが魔法を暴発させて俺たちの部屋を吹き飛んじまったんだ。だから新しい部屋を用意してくれないか?」
 ミノスは学校のものをよく壊しているから慣れているが、やはり気持ちが落ち込む。 
 それを直すのにどれほどのお金が掛かっているか……。
「そうか。しかし空いている部屋はあそこで最後じゃたんじゃ。すまんがミノスの部屋で寝てくれるか?」
 ここで寝かすわけにもいかない。参加者に手を借りるとはまだ副学園長に報告していない。
「わかった」
「それよりお主」
 これ以上話すことはないから、学園長室を
出て行こうとしたら部屋の主に止められた。
「ん?」
「目の当たりにしたんじゃろ。彼女の魔法を。お世辞にもあれは上手いとは言えん。それなのにお主はまだミノスを仲間にしたいと思うか?」
「変えるつもりはない。今はまだあんなのだが俺が引っ張ってでも強くしてみせるさ。あいつは他の魔道士にはないもの持ってるしな」
 それは心。まっすぐで汚れのない心。
 だから今は魔法を上手く扱えないからといって、切り捨てたりはしない。
「そうか。部屋の件だが、は今言った通りにしてくれ。それとここには普通の生徒を住んでおる。あまり騒ぎを起こすでないぞ」
「わかってるよ。爺さんの負担を増やしたくはないからな」
 もう既に負担は増えているが、何も言うまい。
 ただ彼が出て行くのを見守って、面倒ごとが起こらないのを祈るばかりだ。

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