人間不信様のハーレム世界

和銅修一

学園長からのクエスト

「おいおい、なんだこれ?」
 悠斗は掲示板に張り出された紙を見て驚いた。紙を張った魔道士らしき人物はもうどこかへ行ってしまって話は聞けなかった。
「ふむ。あれはイシリア学園の制服じゃな」
「知ってるのかアリア」
「ん、ああ。あれは世界的に有名な魔法学園イシリアの制服じゃ。これまで名だたる魔道士を排出しておる。まぁ、この世界に来て間も無い主は知らなくても仕方ないがの」
 確かにそんなものは知らない。だがあのゲームではこんなところなかった。
 今までとは違う感じで、これからが本番なんだと改めて理解する。
「で?なんて書いてあるんだ」
「イシリア学園の学園長が参加者を探しているからと書いてあるの。参加者は学園の来て欲しいと」
「ふ〜ん、でもその世界的に有名な学園の学園長が俺たちみたいな奴探してるんだ」
「それはわからんが、何かあったのは間違いないじゃろう。どうする主?」
「そうだな、まずはレイナの帰りを待って……」
「ゆ、悠斗様!」
 噂をすればレイナが走って帰ってきた。だが彼女は何か焦っているようだ。
「おう、レイナ。宿は取れたか?」
「いえ、それが……参加者は泊めないと言われたんです。どうやら参加者は嫌われているようで、悠斗様に何かあるのではと急いで駆けつけたんです」
「そうか、俺はこの通り大丈夫だ安心しろ」
「はい。ですかどうしましょう。このままでは今晩は野宿になってしまいます」
「そうだな。なら学校に泊めてもらおうぜ。幸い、俺たちを必要としている学園長がいるし、部屋ぐらいは用意してくれるだろ」
 悠斗は再び張り紙を見て、イシリア学園に向かうのだった。



「あれ? 何だろう」
 授業が終わり、昼休み。
 ミノスはいつも通りに廊下を歩いているといつもより騒がしいことに気がつく。
 いうもみたいに笑っておらず、何か焦っている様子だ。自分の話をしているわけではない。
 気になって耳を傾けて、盗み聞きする。
「おい、聞いたか? この学園に参加者が来てるらしいぞ」
「マジかよ!でも何でこんなところに来てんだよ」
「それが学園長が呼んだらしいんだよ。俺さっき学園長室の前で見たけど凄い剣持ってたぜ」
 二人の話はさらに熱を帯びて行くが、ミノスはそれだけ聞いて学園長室へと走った。



「いやはや、来てくれて嬉しい限りじゃよ。来なかったらどうしようと思っておったところじゃよ」
 学園長室には学園長と悠斗たちの五人だけ。副学園長は留守にしている。
「そうか。でも、まずはなんで俺たちを呼んだか、それを教えてくれねーか?おっさん」
「ほっほ、威勢がいいのぉ。若い者はそうぇなくては困る。では単刀直入に聞くがギランカというモンスターを知っておるか?」
 残念ながらそんなモンスターはゲームの時には出てこなかった。どうやらゲームの時の情報はあまり役に立たないらしい。
「いや、知らないな。どんなモンスターだ」
「簡単に言えば、魔力を食べてしまうモンスターじゃよ。だがここは魔法都市じゃ。騎士がおらんし、有効な手立ては今の所はない。他の都市に応援を呼ぼうにもここからでは遠すぎる」
 騎士ぐらいは知っている。
 街、都市、国の護衛をしているNPCノンプレイヤーキャラクターだ。
 ゲームの時はただの背景のような存在だったがここでは頼りにされているらしい。
「そこで君たち参加者が使う不思議な技があるということを思い出した」
「ああ、あるぜ」
 多分、固有技のことだろう。
 前に一度、レイナから聞いたことがある。固有技は魔力を必要がないから便利だと。
 なら何を使って技を出しているからというと、それは参加者をここに連れてきた神、つまり現在の神から与えられた力を使っている。
 この力は参加者全員が体内に持っていて、時間が経つごとに自然と回復している。
「それを使ってこの都市を危機を救ってもらいたのだ」
 何でそんなことを……面倒だから断ろうとしたが悠斗の中である考え生まれて心変わりした。
「いいぜ。引き受けてやるよ」
「おお!そうかそれは心強い。自己紹介がまだじゃたな。わしはここの学園長をやっとるシグダリアじゃ。これからよろしく頼むぞ参加者よ」
 握手を求めてきたので、渋々握手する。
 その手はシワシワでとても細かったが、温かく、力強さを感じ取れた。
「俺は榊  悠斗だ。だが爺さんよ。俺にタダ働きさせる気じゃねーよな」
 これはもはやクエストだ。
 報酬なしのクエストなどありえない。ゲームでは安全だが、今は命を懸けて戦うこととなる。
 そんはリスクがある中で何も得れないのはあまりにも悲しすぎる。
「ふむ。そこのところは問題ない。お主らが望むものなら大抵のものはやろう。何が欲しい?」
 シグダリアの問いに悠斗は笑って答える。
「なら、魔道士を一人くれ」

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品