転生屋の珍客共〜最強の吸血鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜
第73話 執事の悪魔と
魔界を訪れるのはこれで何度目になるだろうか?
そもそも魔界というのはポピュラーな世界で数え切れないほど点在している。このベルが産まれ育った魔界もその一つに過ぎない。
話を聞いてみるとやはり俺が来たことない魔界でここは五つの貴族悪魔が統括し、その中から選ばれた悪魔が魔王を務めるという。
問題はその魔王だ。
転生屋でいうところのバルドルの座が空席であるというのは非常に危険な状態だ。特に狡猾で残忍な悪魔たちが跋扈している世界となると尚更で各地で争いが起こっている。
誰も止める者はおらず、大地は抉られ、野原には草一本残らず燃え尽きてしまった。
「相変わらず、風情のかけらもない世界だ。それでベルの家はここから遠いのか?」
「あの城が私の家です」
指差されたその城は如何にも魔界にありそうなものでそこに魔王がいると言われても不思議ではないほど立派なものだった。
「ほう、ベルは貴族の娘だったか。あの珍しい能力は血筋に関係がかるのか……しかし、まずは現状を知りたいが知り合いはいないのか?」
「親はダメ、絶対に怒られるから……」
「そうか、仕方がない。用事だけ済ませて帰るか」
元々この魔界にはベルの過去を断ち切る為に来ている。わざわざ魔王争奪戦に巻き込まれる必要もない。
しかし、それを止める悪魔が上空から舞い降りた。
「申し訳ありませんがベル様を帰らせる気は旦那様にはないようです」
丁寧な口調で語るその黒髪の男はスーツを身に纏い、悪魔には珍しく会釈する礼儀がある。
「誰だお前?」
「フェゴル家の執事を勤めさせていただいておりますハゼンという者です。今回はベル様をお迎えにあがりました」
「お迎え? 魔王の座を奪い合うのに忙しいんじゃなかったのか。それともお前の主人は相当暇なのか?」
「いくらベル様の知り合いでも旦那様の侮辱は許せません。旦那様が魔王になる為にベル様の協力が不可欠なのです」
「それはどういうことだ」
ベルは特殊な能力を持っているが戦闘に向いているとも思えないのだが。
「部外者の貴方に話す義理はありません。さあ、ベル様帰りましょう」
「うん。でも私が帰るのはお父さんに協力するからじゃない。お別れを言いに行くだけだから」
その覚悟の篭った一言にたじろぐ執事悪魔。そして彼女の成長を肌で感じ取り、背を向ける。
「ベル様……。私が命じられたのはベル様を連れ戻すところまでです。その後、どの様になさるかはご自由にして下さい」
「随分と物分かりのいい悪魔だな」
悪魔が全て我儘で自分勝手というわけではない。機械ではないのだからそれぞれ性格があり、こういった者もいる。
この世界では変わり者の部類になるだろうが。
「はい。ハゼンさんは昔から優しいんです」
その優しい執事とやらの案内で世紀末のように荒れている周囲を気にもせず、まるで散歩をするかのごとく三人は目的の城まで歩く。
「それにしてもビュートはどうした? 小煩いあいつがだんまりとは」
「そ、それが呼びかけても全然反応がなくて……」
「王冠の中にはいるのだろ? まあ、心配しなくとも文句があれば勝手に出てくるだろ」
「そう……ですよね」
もうベルは使い魔がいなくとも十分に悪魔としてやっていける。それをきっと、この魔界で示してくれるだろうという期待を抱きながらその城の扉を叩いた。
そもそも魔界というのはポピュラーな世界で数え切れないほど点在している。このベルが産まれ育った魔界もその一つに過ぎない。
話を聞いてみるとやはり俺が来たことない魔界でここは五つの貴族悪魔が統括し、その中から選ばれた悪魔が魔王を務めるという。
問題はその魔王だ。
転生屋でいうところのバルドルの座が空席であるというのは非常に危険な状態だ。特に狡猾で残忍な悪魔たちが跋扈している世界となると尚更で各地で争いが起こっている。
誰も止める者はおらず、大地は抉られ、野原には草一本残らず燃え尽きてしまった。
「相変わらず、風情のかけらもない世界だ。それでベルの家はここから遠いのか?」
「あの城が私の家です」
指差されたその城は如何にも魔界にありそうなものでそこに魔王がいると言われても不思議ではないほど立派なものだった。
「ほう、ベルは貴族の娘だったか。あの珍しい能力は血筋に関係がかるのか……しかし、まずは現状を知りたいが知り合いはいないのか?」
「親はダメ、絶対に怒られるから……」
「そうか、仕方がない。用事だけ済ませて帰るか」
元々この魔界にはベルの過去を断ち切る為に来ている。わざわざ魔王争奪戦に巻き込まれる必要もない。
しかし、それを止める悪魔が上空から舞い降りた。
「申し訳ありませんがベル様を帰らせる気は旦那様にはないようです」
丁寧な口調で語るその黒髪の男はスーツを身に纏い、悪魔には珍しく会釈する礼儀がある。
「誰だお前?」
「フェゴル家の執事を勤めさせていただいておりますハゼンという者です。今回はベル様をお迎えにあがりました」
「お迎え? 魔王の座を奪い合うのに忙しいんじゃなかったのか。それともお前の主人は相当暇なのか?」
「いくらベル様の知り合いでも旦那様の侮辱は許せません。旦那様が魔王になる為にベル様の協力が不可欠なのです」
「それはどういうことだ」
ベルは特殊な能力を持っているが戦闘に向いているとも思えないのだが。
「部外者の貴方に話す義理はありません。さあ、ベル様帰りましょう」
「うん。でも私が帰るのはお父さんに協力するからじゃない。お別れを言いに行くだけだから」
その覚悟の篭った一言にたじろぐ執事悪魔。そして彼女の成長を肌で感じ取り、背を向ける。
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「随分と物分かりのいい悪魔だな」
悪魔が全て我儘で自分勝手というわけではない。機械ではないのだからそれぞれ性格があり、こういった者もいる。
この世界では変わり者の部類になるだろうが。
「はい。ハゼンさんは昔から優しいんです」
その優しい執事とやらの案内で世紀末のように荒れている周囲を気にもせず、まるで散歩をするかのごとく三人は目的の城まで歩く。
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