転生屋の珍客共〜最強の吸血鬼が死に場所を求めて異世界にて働きます〜
第17話 風のように駆ける
「疑問に思っていたがよく敵国に潜入出来たな。関門のようなものは存在しないのか?」
敵国に潜入するというのは簡単な事ではない。特にこの世界は長く戦争が続いていると聞く。となると守りは頑丈となっているはずだが。
「あるけどずっと前から封鎖されてる。戦争中だからどんな人も通さないようにしてあるの」
「となると関門とは別の場所から潜入したという事か。それはこのユニコーンで行ける所か?」
「問題ない。私が通ったのはあの岩山。あそこには凶暴な獣が生息しているから誰も近づかないの」
アンネが指差すその先にある岩山は帝都の周りを取り囲む壁のように高く、登るのに苦労するであろうというのはここからでも見て分かる。
「ふむ、ここを通ったのか。徒歩だったならかなりの時間がかかっていたな。これはこれで正解だったかもしれん」
二人乗りをしているがユニコーンはこの険しい岩山をスイスイと進んでいる。普通の馬ではこうはいかないだろう。
「けどグラハグ領の人間に見つかったから一巻の終わり。貴方にもあんな目に遭う必要はないわ」
「俺がたかが人間の軍勢に屈するとでも?」
残念ながらこの体は軍勢に襲われようと関係ない。不死身なのだから。
もしそんな事で死ねたらまず転生屋に来ていない。
「それは頼もしい。しかし、油断はしないで。グラハグ領に勇者はいないけど三剣豪と呼ばれる強力な騎士がいますから」
「ほう、それは楽しみだ。最近は移動ばかりで腕が鈍っていたならな。まだ聖剣の制御が完璧ではないだろうからアンネは道案内だけしてくれれば後は俺がやろう」
「いえ、これは私の戦いです。全てを任せるというのは私の意思に反しますので一人くらいは残しておいてください」
「では残りの二人と他の軍勢は引き受けた。それでこの獣はどちらが担当にする?」
ルインが視線をやる方には背丈の三倍はあろう黒い毛に覆われた巨大な獣がいた。その鋭い爪と牙を見せ、唸り声を上げ、こちらへ敵意を示している。
「初めて見る獣だ。中々面白い形をしている。しかし、災難だな」
「悲観している暇なんてない! こいつはプレーグ。見境なく襲って来て何でも食べる恐ろしい獣なのよ」
彼女の慌てようからこの獣が恐れられているのが見て取れるがルインは動揺する事なく、獣を冷たい視線で睨みつけていた。
「勘違いをするな。悲観ではなく、同情をしているのだ。俺に会ってしまったこの獣にな」
縄張りを荒らしていると勘違いしたのか、それともただ獰猛なだけかは不明だがプレーグという獣は二人へ突進してきたがユニコーンから降りていたルインは拳を確実に顎に当てて空中へと吹き飛ばした。
「そんな……プレーグを一瞬で倒すなんて。どうやら口だけじゃないって事ね」
「さて、先を急ぐとしようか。いちいちこんなものを相手にしていたらキリがない」
「でもユニコーンでもこの岩山を抜けるには半日はかかると思うけど」
一度この道を通ったアンネが言うのだから間違いないだろうが、この岩山には多くの獣の気配があるからまた襲われる可能性は高い。となるともう少しかかると考えられる。
「ならばこいつにはいつも以上に頑張ってもらうとしようか」
ルインはそう言うと赤い液体をそっと差し出し、ユニコーンに飲ませると白目が黒くなり、黒目が赤へと変色した。
「何を飲ませたの?」
「俺の血だ。吸血鬼の血には飲ませた相手を吸血鬼にさせて眷属にするとい効果があるが俺の血は少し特殊でな。飲んだ者は吸血鬼と同等の力を得ることができる。一定時間経つと元に戻ってしまうが」
本来、吸血鬼は眷属を増やして自身の力量を他に知らしめつつ闇に生きる化け物だが、俺はその化け物にもなり損ねたという事だ。
しかし、これはこれで便利なものだ。本来は吸血鬼のノウハウを教え込んで駒を育てるところから始めなくてはいけないがこれはその必要がない。何せこの血を飲ませただけで一人前の吸血鬼が完成してしまうようになっているのだから。
「まさか聖なる獣を吸血鬼にさせる日が来ようとは思いもしなかったが、ここの神に遠慮は必要ないしすぐに戻る。それよりもしっかり掴まっていろ。振り落とされないようにな」
吸血鬼の力を得たユニコーンは速度が急激に上がり、それからたった数時間で岩山を超えた。
敵国に潜入するというのは簡単な事ではない。特にこの世界は長く戦争が続いていると聞く。となると守りは頑丈となっているはずだが。
「あるけどずっと前から封鎖されてる。戦争中だからどんな人も通さないようにしてあるの」
「となると関門とは別の場所から潜入したという事か。それはこのユニコーンで行ける所か?」
「問題ない。私が通ったのはあの岩山。あそこには凶暴な獣が生息しているから誰も近づかないの」
アンネが指差すその先にある岩山は帝都の周りを取り囲む壁のように高く、登るのに苦労するであろうというのはここからでも見て分かる。
「ふむ、ここを通ったのか。徒歩だったならかなりの時間がかかっていたな。これはこれで正解だったかもしれん」
二人乗りをしているがユニコーンはこの険しい岩山をスイスイと進んでいる。普通の馬ではこうはいかないだろう。
「けどグラハグ領の人間に見つかったから一巻の終わり。貴方にもあんな目に遭う必要はないわ」
「俺がたかが人間の軍勢に屈するとでも?」
残念ながらこの体は軍勢に襲われようと関係ない。不死身なのだから。
もしそんな事で死ねたらまず転生屋に来ていない。
「それは頼もしい。しかし、油断はしないで。グラハグ領に勇者はいないけど三剣豪と呼ばれる強力な騎士がいますから」
「ほう、それは楽しみだ。最近は移動ばかりで腕が鈍っていたならな。まだ聖剣の制御が完璧ではないだろうからアンネは道案内だけしてくれれば後は俺がやろう」
「いえ、これは私の戦いです。全てを任せるというのは私の意思に反しますので一人くらいは残しておいてください」
「では残りの二人と他の軍勢は引き受けた。それでこの獣はどちらが担当にする?」
ルインが視線をやる方には背丈の三倍はあろう黒い毛に覆われた巨大な獣がいた。その鋭い爪と牙を見せ、唸り声を上げ、こちらへ敵意を示している。
「初めて見る獣だ。中々面白い形をしている。しかし、災難だな」
「悲観している暇なんてない! こいつはプレーグ。見境なく襲って来て何でも食べる恐ろしい獣なのよ」
彼女の慌てようからこの獣が恐れられているのが見て取れるがルインは動揺する事なく、獣を冷たい視線で睨みつけていた。
「勘違いをするな。悲観ではなく、同情をしているのだ。俺に会ってしまったこの獣にな」
縄張りを荒らしていると勘違いしたのか、それともただ獰猛なだけかは不明だがプレーグという獣は二人へ突進してきたがユニコーンから降りていたルインは拳を確実に顎に当てて空中へと吹き飛ばした。
「そんな……プレーグを一瞬で倒すなんて。どうやら口だけじゃないって事ね」
「さて、先を急ぐとしようか。いちいちこんなものを相手にしていたらキリがない」
「でもユニコーンでもこの岩山を抜けるには半日はかかると思うけど」
一度この道を通ったアンネが言うのだから間違いないだろうが、この岩山には多くの獣の気配があるからまた襲われる可能性は高い。となるともう少しかかると考えられる。
「ならばこいつにはいつも以上に頑張ってもらうとしようか」
ルインはそう言うと赤い液体をそっと差し出し、ユニコーンに飲ませると白目が黒くなり、黒目が赤へと変色した。
「何を飲ませたの?」
「俺の血だ。吸血鬼の血には飲ませた相手を吸血鬼にさせて眷属にするとい効果があるが俺の血は少し特殊でな。飲んだ者は吸血鬼と同等の力を得ることができる。一定時間経つと元に戻ってしまうが」
本来、吸血鬼は眷属を増やして自身の力量を他に知らしめつつ闇に生きる化け物だが、俺はその化け物にもなり損ねたという事だ。
しかし、これはこれで便利なものだ。本来は吸血鬼のノウハウを教え込んで駒を育てるところから始めなくてはいけないがこれはその必要がない。何せこの血を飲ませただけで一人前の吸血鬼が完成してしまうようになっているのだから。
「まさか聖なる獣を吸血鬼にさせる日が来ようとは思いもしなかったが、ここの神に遠慮は必要ないしすぐに戻る。それよりもしっかり掴まっていろ。振り落とされないようにな」
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