ラブコメで幼馴染が報われない法則について

和銅修一

第65話 夜食は健康には良くないけどついつい食べてしまう法則について

 世の男性は女性に好かれたい。
 これは不変の真理であり、俺も例外ではないがだからといって最近知り合った教育実習生が自分の布団の中に潜り込んでいるというのは望んだことではない。
 つまりこれは秘宝だとか関係なく、姫路 臥阿が勝手に起こした行動ということ。しかし、この人は一見大人しそうだが五十嵐並みの行動力がある。
「言っておきますけど、我が家に泊まらせる気はありませんからね。先生は大人なんですから」
「でもお姉ちゃん的にはやっぱり何か如何わしいことが起きていないか心配で心配で」
 上目遣いと涙目のコンボは強烈だがここで屈してはいけない。ここで心を鬼にしなくては。
「だからといって勝手に他人の布団に潜り込んだ理由にはなりませんよ。それともう何も起きてないことは確認できましたよね」
「そんなに露骨に催促しなくても良いじゃないですか。お姉ちゃんに対して辛辣過ぎませんか?」
「別に、普通の対応だよ」
 血の繋がりも、戸籍上の繋がりもないというのに唐突に姉宣告されてもおかしな人を受け入れることなんて出来るはずもない。
「む〜、お姉ちゃんは不服ですが確かに私の思い違いでしたしこれ以上ここにいると斑鳩先生に勘付かれそうなので失礼します。ですが、これだけ覚えておいてください。私はいつだって可愛い弟と妹の味方ですから」
 笑顔でそれだけ言い残すと荷物をまとめて部屋を出ていった。
 近くに車を停めていたようで直後にエンジン音が鳴り響く。気になって外を見てみるとまだ月が明るく街を照らしていた。
「はぁ……まだこんな時間か」
 二度寝しようにも目が冴えてしまっているし、布団にはあの教育実習生の温もりが残っていて落ち着かない。
 何もすることがないので冷蔵庫に何かないか漁りに行くとそこには先客がいた。
「蓮さんも夜食ですか?」
「もって何だよ。最近一人増えて何かと出費がかさんでるんだから」
 母さんが毎月生活費を送ってくれるし、潤香も同棲することになったことを知っているのでその額は前より増えているからお金に困るということはないが無駄遣いは出来ない。
「いつまは夜食は控えているんですよ。ですが今回は能力を使ったのでエネルギー消費が激しかったのです」
「ふ〜ん。まあ、良いけどさ」
「そういえば、先ほど姫路先生が帰っていきましたよ。今度は先生としてではなく、姉として遊びに来ると仰っていました」
「そんな日が来るのはゴメンだが……まあ、来る者は拒まずだ」
 というか拒んでもあの人なら堂々と入ってきそうだが。
「蓮さんはどちらにしますか?」
 リリエルは両手に冷蔵庫から見つけ出したアイスを取り出して質問する。
 左手にはバニラ味、右手にはソーダ味。蓮はそっと左を指差す。
「じゃあ、こっちかな」
 今日は自分の魂を探索されたり、教育実習生が我が家に押しかけてきたりと精神的に疲れた。
 バニラ味のアイスを食べた後は布団の中に潜り、明日に無意識の願いがどんな影響を与えているかを確認することを決意した。

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