村人から世界最強の魔王へ

金田拓也

8刹那の本気

その再開はあまりにも突然だった。真冬が連れてきた綺麗な赤髪の女性がゆなだと、悠人にははっきりと分かった。そして、それはゆなも同じだったようで、ゆなは両手で口元を手で隠していて、信じられないと言うような表情が見て取れた。先に声を発したのはゆなだった。
ゆな「悠人…なの?本当に悠人なの?」と途切れ途切れにゆなは、聞いてきた。
それに悠人は、どう答えればいいか分からなくなった。考えた結果出た答えは
悠人「あぁ、俺だ。ゆな」
と言って、目を逸らした。その行動は、自分が魔族だと知られるのを恐れてしまってからの行動なのかは自分でもよく分からなかった。
ゆなは、目から涙をこぼしながら
ゆな「悠人…よかった。本当によかった」
と嬉しそうに言ってきた。教室には何とも言えないような優しい空間に包まれていた。誰も声を発するものはいなかった。
だが、その空間は、一瞬にして崩れ去った。
ゆながふと悠人の隣にいるルシフェルを見た瞬間に、教室の中に重く張り詰めた空気が重くのしかかってきた。背筋がビリビリしていて、体が本能的に警告音をうるさく鳴り響かせている。
ゆな「悠人、その人って…誰?」
と、ゆながルシフェルに殺気を向けていた。
視線を後ろにすると、ルシフェルはその場でゆなを見ていた。そのルシフェルの顔が楽しそうに見えて、ルシフェルがこの状況を楽しんでる事に驚く。それは、恐らく絶対に負けない事からのものだからかは、分からなかった。
ここで改めてルシフェルを見て悠人は思った。これが、悪魔なんだろうと。
そして、アリスは、俺を守るためにいつでも能力を使う準備をしていた。こちらはかなり警戒して、焦っているように見えた。かなり緊迫した空間がゆなによって作り出された。
しかし、その空間はゆなの横にいた真冬によって打ち破られた。
真冬「ゆな。その人は違う」
と、真冬が静かに、それでいて反論を許さない強い口調で言った。
ゆな「えっ!?ご、ごめんなさい。ある魔族に似ていた気がしたもので」
と、頭を下げた。
それに二人は警戒を徐々に緩めていった。
すると、その時を待っていたかのように新たな来訪者が現れた。
「む?騒がしいの?何をしておるのじゃ?」
「おぉっ!何だこの空気?俺を除け者にして何したんだよ」
と二人の生徒が教室の中に入ってきた。
二人のうち一人は俺らと同じクラスの坂木だった。もう一人は、女子生徒で頭に帽子をかぶっていて、青色の髪で白い制服に短めのマントを羽織っている、150cmくらいの髪の長い女が入ってきた。
「嘘?賢者様?」「え?嘘だろ」「この教室に勇者と賢者が揃ってるってまじかよ」
とクラスメイト達が騒いでいた。賢者と呼ばれた少女が
賢者「むぅ〜。何だこんなところにいたのか?妾を一人にするとは何事かぁー!!」
と賢者が言い、それに続いて坂木が
坂木「そのとおりです。賢者様。おい。悠人これどんな状況なんだ?勇者が、教室の中にいるのって結構すごいことなんだけど」
とまた、うるさくなってしまう。
賢者が教室に入ると、真冬達の前にいる悠人達を初めて認識したようだった。悠人の前に立つと
賢者「妾は、ミナ・クリスタルだ。そなたらは?」
悠人「俺は雨宮悠人で、後ろの二人がルーカスとエリナだ」
と言ったところでミナ・クリスタルが目を見開いていた。
悠人「?何か変か?」
と尋ねるとミナ・クリスタルは、ふふ。と少し笑った。
ミナ「お主気に入ったぞ。村人で妾に対してそのような言葉遣いで話されたのは初めてじゃ」
それに悠人は、その言葉の意味を考えると、すぐに答えは出た。賢者とは、この国を守っている言わば守護神のような物だ。人々から崇拝すらされていると聞く、その存在に対して、同等の立場で会話をするのは国王か、英雄である勇者だけだろう。
そして、今の雨宮悠人は魔王ではなく、親のいない村人だったのをすっかり忘れていた。故にそのような立場の人間から、同等に話されたのは、もしかしたらはじめての経験かもしれない。
悠人「すまない。世の中のことについては疎くてな。どうやって話せばいいのか分からないんだ。気を悪くしたなら謝る。ミナ・クリスタル」
と、精一杯の下から目線で話した。そこでふと思う。真冬やゆなに対しても失礼だったのかもしれないと、思考していると
ミナ「それは良い。せっかくじゃからミナと呼んではくれぬか?」
悠人「いや、賢者様を呼び捨てになどー」
その言葉を遮りミナ・クリスタルは、背伸びをして悠人に顔を近づけて来て
ミナ「ミ・ナ!」
と言ってきた。
悠人「わかったよ。ミナ」
と言うと満足そうにしていた。
ミナは、ふむふむと、言いながらこちらを頭からつま先まで見回すと、
ミナ「それにしても、お主があの悠人か」
と言った。
その言葉に悠人が反応した瞬間
真冬「私が教えた」
と真冬が言ってきた。
真冬の方を見ると、真冬は
真冬「なぜ知っているのか?って顔をしてたわよ」
と言われた。
しまった。表情に出してしまったか。
と思い
悠人「勝手に人の表情を読むな」
と手で顔を隠し表情が読まれないようにする。
ゆな「昔から顔に出やすいもんね。悠人は」
とゆなが会話に入ってきた。
坂木「え!?雨宮お前、勇者ゆな様と幼馴染なのか!?」
と坂木が驚いたように言ってきた。それにゆなが
ゆな「うん。いつも一緒でとっても仲が良かったんだよ私達」
坂木「羨ましいな。こんな可愛い子と幼馴染なんてよ」
と坂木が言いながら左肩を叩こうとしてきたので、それを悠人は右足を軸に時計回りに180度回転して避けた。
ゴホンとアリスが咳をして
アリス「それでは、私達はここで」
と言った。その様子が少し焦っているように見え、これ以上は危険と判断したのかもしれない。
悠人「あぁ、そうだな」
と短く答えて帰ろうと歩き出すと、真冬がピッタリ悠人の隣を歩きはじめた。
悠人「なんだ。何か用事か?」
と聞くと真冬は、悠人の方を見ながら小首を傾げながら
真冬「?特にないわ」
と短く返してきた。
悠人「ならなんで付いてくる?」
と言おうとした瞬間、真冬が右手に持っている、1日に必要な物と言いきるには明らかに大き過ぎる荷物が目に入り
悠人「その荷物はなんだ?何に使う?」
それに真冬は、持っている荷物に視線を下ろした後、こちらを見て
真冬「?泊まるため?」
と不思議そうに返してきた。

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