神々に育てられた人の子は最強です
幼き子供たち
「おーい、そこの兄ちゃん達も一緒にご飯食べるかー」
「みんなで食べた方が美味しいですよー」
子供たちがこちらに笑顔で手を振りながら聞いてきた。その顔で感情が少しずつ治まった。
「そうじゃな、シンヤとその仲間たちよ、我らと一緒に飯でも食おう」
アリアも子供たちの言葉に乗って言ってきた。
子供たちの目は「食べよう、一緒に食べよう」と言っている。「でも、俺らもうご飯食べたし」と言うと、えぇーー、と言う声が上がり一人の少女がアホ毛がだらぁ〜んとさせてやって来て、涙目と上目遣いで「食べてくれないの?」と言ってきた。
ぐっ!少女の上目遣い+涙目となると、攻撃力は絶大だ。いくらステータスやスキルなどが強力だろうと、これには勝てない。
「わかった。じゃあ一緒に食べようか」
「うん!」
俺は苦笑いをしそう言った。
少女はパァーと明るい顔になりアホ毛もピコピコ動いて、俺の手を引いて子供たちの元に行った。アホ毛ついてる幼女って可愛いよな〜、やっぱ。
「おいおい、アリア。お前、この子たちに魔法を教えたのか?」
子供たちは火魔法を使い、石をアツアツにしてその上に解体した魔物の肉を焼いていた。
言い忘れていたが、この世界の肉は魔物の肉なのだ。直接食べると人間の体には毒で体をどんどん腐らせるが、加熱をすればその毒は無くなる。
「そうじゃ。む?なんじゃその意外そうな顔は。これでも我はものを教えるのは上手いぞ」
そう言うが、俺は意外そうな顔をしていたのだろう。アリアは子供たちに聞きに行った。そして帰ってきたらテンションがめっちゃ下がっていた。
「で、なんて言われたの?」
「言っていることが意味不明で、よくわからないって言われた」
「あっ、そう」
地面に手をつきドヨーンとなっているアリア。たが次の瞬間、顔を上げ笑っていた。
「でも、たまに的確な指示があるからそこはいいよ、とも言われたのじゃ!」
少しテンションが戻っていきたのでよかった。
ハクとルナは自分たちと同じ年ぐらいの子供たちと走り回って遊んでいて、ネルは子供たちと一緒に料理を作っている。
「なぁ、アリア。あの首輪って外せないのか?」
「何を言っているんじゃ?あれを外すには奴隷商人の魔法が必要じゃぞ」
「えっ、あの奴隷にするのって魔法でやってんの?」
「うむ、そうじゃが。それがどうかしたのか?」
「よし、それなら大丈夫だ」
俺はよいしょと立ち上がる子供たちに近づく。
「やめるのじゃ!首輪を無理やり外せば爆発する!」
後ろでアリアが声を荒らげる。だが俺はその声を無視して俺を誘ってくれた少女の元に向かった。
「おい、君名前は?」
「ミネア?ミネアはねー、ミネアっていうのー」
「そうかミネア、一つ聞きたいことがある。その首輪を取ってみたいと思わないか?」
その言葉を聞きミネアと他の子供たち、ネルも驚いていた。そしてミネアを守るように子供たちは俺とミネアの間に入ってきた。
その様子が気になったのかハクとルナも来た。
それを見ていると、後ろから肩に手を置かれたので振り向いた。
すると、そこには怒りに染まっているアリアが居た。
「やめろ、シンヤ」
その声と瞳には殺気が乗っていた。だから俺もわざとアリアより強い殺気をぶつけた。アリアの顔は徐々に青白くなっていった。
だから可哀想なので殺気を消した。
「アリア、俺はミネアに聞いているだけだ」
「それでもやめろ。シンヤ、向こうの壁際を見るんじゃ」
アリアが指を指した方を見ると、そこには白骨化した骨が何個も落ちていて、首から上が胴体と離れていた。
「あれは奴隷商人に捨てられ首輪を外そうとして死んだ、過去にここに居た子供じゃ。他にも捨てられて3年経っても爆発する」
ミネアを見ると体が震えている。多分見たことはないが話は聞いていたのだろう。
「我はもうあんな子達が無残に死ぬ姿を見とぅない。だからやめるのじゃ」
アリアはさっきまで怒っていた表情は、悲しみに変わっていた。たぶんアリアも俺と同じように、自分の子供のように育ててきたのだろう。
「ばか、誰も俺の目の前では死なせねーよ。大丈夫だ」
俺はできるだけ優しくそう言った。
「お前ら、それを外しても生きれる可能性があれば、その希望を信じるか?もし信じるならその手を伸ばせ」
俺はキザな言葉を放ち手を子供たちに伸ばす。
やばいな。この台詞、かなり恥ずかしいぞ。
子供たちは困惑している。それもそうだ、たった数分前に出会った奴にそんなこと言われても信じれるわけがない。
「ミネアはいいよー」
そう言って俺の手を取ったその声の主はこの中の子供たちの中でも幼くさっきまで怯えていたミネアだった。まさかここでミネアが言うなんて思っていなかった子供たちとアリアとネルは、目を丸くしている。
「どうしてそんな簡単に信じれる?」
「だってお兄ちゃんは大丈夫って、可能性があるって言ってた。お兄ちゃんは悪そうじゃないし信じれる!」
「そうか」
俺は少し笑ってミネアを撫でたいが子供たちに阻まれそれが出来ない。
「アリア、たった数分前に出会った俺だが信じてくれないか?」
「……っ!」
アリアは俺の目を見て俯いた。そしてミネアを見てその眼差しにやられてしまい渋々頷いた。
「だが、もし死んでしまったらシンヤ、お主を殺す」
アリアのその目の中には、しっかりと俺を捉えている殺意があった。
「ああ、煮るなり焼くなりしてくれ」
そう言ってミネアに近づく。子供たちは道を開けてくれた。
「ミネア、なんか変なこと言った?」
「いいや、人間己が死ぬとわかっている時、生きれるという希望があればどんなに小さくてもそれに手を伸ばすものだ。ではミネア、今からその首輪を外す」
「うん」
俺はミネアの首輪に触れた。そして首輪はパキン!と音を出し首から何事もなく落ちた。
「な、信じろって言ったろ?」
俺はニッ、と笑った。
子供たちもアリアもネルもフリーズしていた。
「ん?大丈夫か?」
『え』
「え?」
『えええええぇぇぇぇぇえええ!!!??』
そんな声が谷の中なのでよく響き渡り、ハクとルナと俺は耳を抑えていた。
その後、他の子供たちからも首輪を外してくれ、と沢山来たので順番ずつして外してあげた。
「し、シンヤよ。お主何をしたのじゃ……」
「これは俺のスキル、【全魔法無効】の効果が発動したんだ」
「ぜ、全魔法無効………って強すぎじゃ!!」
「ああ、だからどんな魔法が来ても全然大丈夫だ」
俺は笑いながら言った。
「なぁなぁ、そんなことはほっといていいだろ?」
「そ、そんなこと……。結構大事かと思うんじゃが」
「なんでここって幻惑の谷って呼ばれてるんだ?」
「なんでって、この谷を囲っている森が幻を見せ谷に入るまでにほとんどの人が死ぬからよ」
ネルがそう応える。
あれ?でも俺は効いていなかったぞ?
「シンヤも森の中では幻を見ながら頑張ってたんじゃないの?」
「いや、俺幻見てないんだけど」
「は?そんなはずないじゃん」
「シンヤよ、お主の目から特別なものを感じるんじゃが」
「ああ、だからか。俺の魔眼が効いていたのか」
俺が魔眼と言った時、またもアリアたちは驚いた表情を見せる。
「お主、魔眼を持っていたのか!」
「なんだ?珍しいのか?」
「当たり前じゃ、魔眼とは生まれた時から持つ魔力を宿したもの、それが魔眼じゃ。魔眼は一つだけ能力を持っているというが、お主は幻を見せない能力か」
「何言ってんだ?俺の魔眼は他にも能力があるぞ?」
その言葉を聞き、アリアはぁ、とため息をつき「お主は規格外すぎじゃ」と呟いていた。
「そう言えばアリア、子供たちも幻惑の谷の森から普通に出てきたが、誰か魔眼を持っているのか?」
「いや、あれは我のスキルと【視界共有】じゃ。他の五感も共有できる。我ならあんな幻惑など効かないから視界を貸してやってるんじゃ」
「ほー、そんなことも出来んのか。じゃあ、どうやって森の魔物を倒したんだ?この子たちじゃ倒せないだろう」
「それは身体強化の魔法を属性魔法付与してるんじゃ」
あー、なんか修行の時レーネ様がそんなことも出来るって言ってたな。たしか、無属性の魔法だったか?
「人間に属性魔法付与!?」
属性魔法付与のことに、ネルがおもいきり食い付いてきた。
属性魔法付与を人間に掛けるのは、極めて難しいことだ。武器に属性魔法付与するのにかかる修行の月日は、5年はかかるものだ。
だが物である武器とは違い、人間は生物だ。王宮で使える宮廷魔法使いの者が、10年、20年かけて出来るぐらいだ。
「ほー、面白そうだな。俺もできるかな?」
アリアたちは、なにいってんだ?みたいな目を向けてくる。
俺は試しにネルに向かって掛けてみた。
「身体強化属性魔法付与!」
すると、ネルの体が少し赤くなった。
「あっ、体が軽い」
「おっ、できたか」
間抜けな声を出したネルだが、すぐにハッとした顔になる。
アリアの方を見るとまたフリーズしてる。
「「な、なんだとぉぉぉぉぉおお!!」」
アリアとネルの二人が叫んだ。
その後も二人は、慌てて何かヒソヒソと喋っていた。
俺は、少し焦げ臭い匂いがしたのでそちらを見ると、料理中のものから出ているものだった。
「っと、それよりも、もうすぐご飯ができんじゃねぇのか?」
「あっ、ほんとだ!みんな、お皿出してー!」
子供たちの中でも一番年上と思われる子が、他の子たちにそう言ってご飯の準備をする。
よく出来た子たちだ。
「我、属性魔法付与覚えるのに、結構頑張ったのに」とアリアが言っているのを、ネルが「さっきアリアさんが言ってたじゃない。シンヤが規格外なたけよ」と慰めている。
まぁ、それからみんなで無駄話をしながら騒ぎ、楽しくご飯を食べていった。
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さすが神々に育てられた人の子!