海の声

漆湯講義

151.特別授業

「あっ、タキナカ…先生??」

俺の顔を覗き込むように見た先生は『おっ、誠司くんか!!』と手に持ったファイルをパンパンと鳴らし教室へと入ってきた。

美雨と俺の顔を交互に見ては『そーゆー事かぁ』とニヤつく先生に、俺は"ある答え"が脳裏に浮かび、開きかけた先生の口から声が出る前に「違いますから!!」とその言葉を封じた。

『えっ??なに言おうとしたかわかったっけ??』

そう言って頭を掻く先生に念を押すように「ただの噂ですよ!!ったく、誰から聞いたんですかぁ??」と呆れた声を掛ける。

『沖さんってヒト。なんだぁ…そうなんね、ごめんごめん。』

沖さんってあの定食屋の爺さんか!!ったくあの爺さん何言いふらしてんだよ。

"なんのことー??"と話が読めていない美雨を敢えてスルーして俺は話題を変えることにする。

「ていうか先生東京モンでしょ??変に訛ってますよ。」

『えっウソ??あはは♪それは嬉しいなぁ。』

「嬉しい??なんでですか??」

すると先生は窓際に歩いていき、窓枠に手をつくと遠い海を見つめて言った。

『この島に馴染んできたって事じゃん♪』

まぁ…海美も美雨も訛っても方言言ったりなんかも無いけど。ま、いいか。

『そういえば美雨ちゃん学校来る気になったの??』

美雨のやつ学校行ってなかったってコトだよな。まぁこんなヤツでも色々あんだよなきっと。

『考え中ー。まぁ行ってもいいかなって最近思ってるかも。』

『そっか♪ありがとね誠司くん!!それじゃぁ…』

いやッ、なんで俺?!と思った次の瞬間『授業をはじめまーすッ!!』と先生の声が教室に響いた。

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