海の声

漆湯講義

132.当たり前

村長は続ける。
『私が…幼い頃は、"当たり前"が次の瞬間には無くなってしまうかもしらんのが"当たり前"でした。授業で戦争はいつ終わったと?』

「えっと…いつだっけ。明治?じゃなくて大正?」

『1945年だよッ。昭和…20年かな?』

「あっ、1945年です!!」

『御名答。だが正解は"まだ終わっていない"んですわ。正確に言うと終わる事はない。』

「えーと…終わることが無い…ですか?」

『その通り。戦争は終わりました。でも戦争によって受けた身体的、精神的な傷が治ることは無いんです。』

俺は何やら話題がスムーズに切り替わって長話が始まる予感がした…

『…というのも当たり前なんですわ。』

俺の頭にクエスチョンマークが漂う。

『諸行無常。簡単に言うと全ての事柄に常たるものは無いという事です。今話した"当たり前"な事すらも変化し続けている。いつかはその"当たり前"も当たり前で無くなるかもしれんっちゅう事で…』

「あの…すいません、それも海石と関係あるんですか?」

『…もし、もしですがお兄さんに海の声が聞こえたっちゅうんならそれは大切にしなさい。海の声は尊い。今、次の瞬間にはもう届かんかもしれん…昔の私は"当たり前"に囚われていた。突然訪れた幸せも、時間が経てば"当たり前"に感じるようになってしまう。それは人ならばしょうがない事だ。だけれども、それが突然失われた時に訪れる"これからの当たり前"がどんなに辛いことか…』

村長はそう言って天井を遠く見つめたまま止まってしまう。

「それって…村長さんも海の声を聞いたって事なんですか??」

あれ?

「すいません!!村長さん?」

『ちょっと村長ッ!?セイジ!!これヤバいよ!!』

「えっ??村長さんっ!!村長さんっ!!」

焦った俺が身を乗り出し村長の肩を揺らすと、ふぅと息を吐いて村長が現世に戻る。

『そろそろ昼の時間か…』

俺はホッと胸を撫で下ろし、再び先程の質問を問いかけた。




コメント

  • 漆湯講義

    …裂けてます(゚Д゚≡゚Д゚)
    めっちゃ裂けてますよΣ(。°ロ°。)

    有難うございます(。^ω^。)
    そして…これから更新お待たせさせます( ´・ω・)ノ<確信犯>

    0
  • 漆湯講義

    更新が追いつかないのでゆっくりでお願いします!!(゚Д゚≡゚Д゚)とか言ってみますw

    0
  • 漆湯講義

    あいすさんコメントどうもです(。^ω^。)

    いや、それは私の表現能力の問題かと…(゚Д゚≡゚Д゚)[切実]
    頑張りますっ(。>ω<。)ノ
    ホントに有難うございます(。TωT。)

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  • あいす/Aisu

    むむむ…
    話が難しい…(私が無能なだけですが…)
    (´・ε・`)ムムム
    更新頑張ってください!

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  • 漆湯講義

    速読ですねッ!!(゚Д゚≡゚Д゚)
    忙しい中有難うございます(´。-ω-)ペコ
    今日も学校お疲れ様でありますwww(`・ω・´)ゞビシッ

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