海の声

漆湯講義

98.友達は変なコ

「コレ…なんの写真?」

そのコピー用紙には、人混みの写真がプリントアウトされているだけで特に変わった物は映っていない。ただ、その人混みは一定方向に顔を向け、何かに視線を送っているようだった。

『何か分かるか?』

「えっ、ナニコレ?全然わかんない。」

『ここの部屋見たことないか?』

そう言われ、画質の荒い紙に目を凝らし顔を近づけた。

部屋…見たことがある?どこだ…

「あっ、ココ父さんの会社が展示会やってるとこだ。」

『そう、正解だ。そしてこの人だかりができているのは…お前の写真だ。どうだ?凄いだろ?』

「へぇっ?!どーゆーこと?!」

この人だかりの先に俺の写真??俺の写真がこんなに沢山の人に見られてるって事??ってか俺の写真ってなんだ?!

『この前誠司に頼んだ写真、締切が近かったから送っといたんだよ。そしたら今日この写真が送られてきたという訳だ。"この風景は何処なんですか?"とか"何処に行けばこの景色を見れますか?"とか問い合わせ殺到だったらしいぞ?凄いな、誠司。』

なんか変な感じだ。こんな何も無い島なのに…

その時、風呂場の方から楽しげな声が聞こえてきた。
そうだ、海美たちにも自慢してやろ♪

『あれ?彼女の他にも誰か来てるのか?』

えっ?!そうだ…海美の存在は知られてないのに!!何やってんだよ美雨は!!

「えっと、別に彼女なんかじゃないけど…来てるのは…1人だよ、多分1人でテンション上がっちゃってんじゃないかなぁ、あははは♪ま、まぁそういうヤツだから気にしないで!!」

『はは…そうか、明るい…子だね。』

うわぁ…美雨のコト絶対頭おかしいヤツって思ってるよ。自業自得だかんなっ!!

『お父さんお帰りっ、あっ、誠司。どうかした??』

「いや、どーもしないけどさ…」

浴室の方を振り返り暫くフリーズしていた母さんも思ったコトだろう。美雨は"変わった友達"なんだと。




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