海の声

漆湯講義

87.見え方

下へと降りると母さんがエプロン姿のままソファーへと腰掛けテレビを見ていた。

「母さんっ、さっきのアレ誤解だかんなッ!!」

母さんはゆっくりと振り返り、ニヤッと不敵な笑みを浮かべ、何も言わずにテレビへと視線を戻す。

何なんだよッ、まじウゼェーッ!!

俺はお盆を手に取り、おかずを小皿へと移していく。そして、その姿を見た母さんがふと悲しげに言う。

『なぁーんだ、2階で食べるの??せっかく美雨ちゃんと色々お話できると思ったのに。』

いや、しなくていい。マジで迷惑だから…

俺は無言のまま部屋へと戻り、テーブルの上へ夕食を並べた。

『うっわ、うまそーだなぁー♪ケド、ボクんちにもご飯あるんだよなぁー…海鮮丼。ま、いっか♪』

いや、ちゃんと連絡しとけよ…というかだからなんだよ!!うまそーだナァッ!!海鮮丼!!えぇ?

『なんかごめんねぇ…けどすっごい嬉しいよ♪こんなフッツーのご飯久しぶりっ♪』

申し訳なさそうに言う海美には申し訳ないが、"フッツーのご飯"は無いだろ、これでもいつもより豪華だぞ。

『いつもひじきばっかりだったからなぁー…』

「そっち?!?!」

『何だよセイジ!!海美ねぇ?』

『あんまり他の食べるとびっくりさせちゃうかなぁーって思ってさ…』

「いや…お代わりあるからいっぱい食べて。んで?そー、海美だよっ。いちいち聞くなよー、オレ通訳じゃねんだからさぁ。」

『ありがと♪それじゃ、いただきます♪』

『だったらいちいち海美ねぇの言葉に反応するなぁ。気になるだろ。』

「どーすりゃいんだよ!!シカトなんてできねーぞ俺は!!」

『あ、そっか。って、おおぉぉ♪海美ねぇが食べてるッ!!』

そっか…コイツには空中に浮かぶ箸とおかずなのか。ってどう見えてんだろ。めっちゃ気になるわぁー…

「なぁ、美雨にはどー見えてんの?」

俺は海美の方を見て言った。












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