海の声

漆湯講義

47.新たなる出会い

えっと…誰?こいつ。

そこに立っていたのは海美ではなかった。

日焼けした小麦色の肌に極端に短い短パン、タンクトップ…セミロングくらいな長めの黒髪。

『キモいんだけどお前。』

はぁ?!会ったばっかの人間になんだこいつ!!
だけど…明らかに小学生かそこらの男の子だもんな…俺は遥かに歳上の中学生。

「こ…これはな、仕事だっ!!俺はカメラマンなんだよ!」

大きな瞳が軽蔑の目で俺を睨んでいる…

『中学生で仕事なんてできるわけないじゃん。言い訳下手すぎ。』

なんだこいつ!!まじムカつく!!ガキのくせに可愛くねー!

「うっせー!仕事は仕事なの!ちゃんと父さんに頼まれて父さんの会社の展示会にも出すんだぞ!!れっきとした仕事だっ!」

『あ、そう。だけどブツブツ気持ち悪い事言わなくてもいいよね?"あーいいよー"とか"もうちょっと開いてみようか"とか。キモ。』

……


『ところでお前さぁ、東京モンだろ。』

…えっ、お前?東京モン?!なんか生意気なヤツ!!

「そうだよ!東京モン!そういうお前は田舎モンだ!都会の荒波に揉まれてきた俺は田舎でのうのうと暮らしてきたお前とは違うんだッ!!」
そう言って俺はバシッと指を指した。

大人げないかもしれないけど俺は大人じゃねー!!こういうガキには少しくらいキツい事いってやらないとな!

『うぅー…田舎田舎ってバカにすんなっ!!てか他所者のクセに海美ねぇの代わりなんてするなぁっ!!ボクは認めないからなっ!!』

「海美…ねぇ?」

海美の…知り合い??なのか?
しかもこんなヤツにも俺が渡し子ってやつやる事知られてんだ…

『そうだよッ!!海美ねぇはボクの姉ちゃんだっ!!ホントは海美ねぇが渡し子やるハズだったのになんでボクじゃなくてお前なんだよっ!!』

「えぇーっ!!お前海美の弟なのっ?!?!」

『おとっ…て…あぁ!そうだよ!!ボクの、ボクだけのお姉ちゃんだッ!!』

まじっすか!!それは…絶対有り得ねーよ…なんであんな大人しくて可愛い子の弟がこんなヤツなんだよ…
まぁ、顔だけは美形ってことは認めてやる…けど有り得ねー…
しかしまぁ、コイツの言う事もわかるよ。俺は海美の役目を取っちゃったんだもんな…
「そっか…あの…なんかゴメン。」

色んな意味ですっかり意気消沈した俺を、ムスっとした顔の小さな"弟"が黙って睨み続けている。
俺は本当に"渡し子"をやっていいんだろうか、そんな気持ちがぐるぐると頭の中をかき乱した。




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