少女寿命

こむぎ子

散れども枯れども花は芸術的なのに。(中編)

でもね、あたしね、嬉しかったの。
これであなたに愛されるって思ったから。
あたしね、電話をかけたの。
あなたの耳に早く伝えたかったから。

報告を聞いた途端あなたは声のトーンが下がった。その次の言葉はあまり覚えていないけれど「困る」だとか「あのさぁ」とか「堕ろしてくれないか」って聞こえた気がする。
あぁ、要らないんだ。そっか。
涙は流れた、気がする。心臓の輪郭を伝って、染みることなく蒸発した気がする。

その後病院で検査したら、本当に腹の中に子がいたと聞いて、溜息が出た。
帰り道、道端に咲いていた白い花を踏み潰した。
散れども枯れども花は芸術的なのに
ヤって孕んだら女は不要品なのね。

でも考えることなんてないわ。
悩むことなんてないわ。
堕ろせばいいだけなんでしょ?
身体ン中に居るだけで、"これ"は全くの他人。
あなたじゃない、不純物なんか要らない。
そう全部はあなたに愛される為。だから"これ"を捨てる。
ただそれだけがあたしとあなたを結び付けられる方法なら。


ねぇ、あたしね、愛していたの。
だからね、ノリのようなあなたに身体あげてたの。
だからね、子供が出来たことを嫌がったあなたの為に子供堕ろすの。
だからね、愛して。

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