【銃】の暗殺者
店舗
「見つからん」
俺とシェリーは中央区にある広場のベンチで空を仰いで呻いた。
俺達は金のかかる宿暮らしを辞めるために店舗探しを始めた。早いうちにカモフラージュの職は必要だし、店舗を買えばそこで寝泊まりすればいい。そう思ったのだが、、、、
「不動産屋はどこだ、、、」
そう、不動産屋が見つからないのだ。朝から探し始めてもう既に昼過ぎている。半日中央区を歩き回ったのだが見つからない。あるとしたら中央区だと思ったんだが。
・
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・
ありました。
あの後、人に聞いたらあっさり見つかりました。一度行ったことあるところだったし。というのもこの王都で不動産屋は専業ではなく、兼業だったのだ。大商会は大抵不動産屋もやっているそうだ。
「いやぁ、お待たせして申し訳ない」
店舗を買いたい旨を伝えると応接室に通されて待たされることになった。しばらく待って入ってきたのはハゲの幸薄そうなオッサンだった。
「この度は我がミート商会をご利用下さりありがとうございます。えぇと店舗の購入と聞いておりますが、、、」
「ああ、その通りだ」
このハゲ入ってきた瞬間、俺達が子供だからあからさまにがっかりした顔をしたの見逃してねぇぞ。
今もタメ口だったせいかこめかみがピクピクしてるし。
「て、店舗となりますとそれなりの金額が必要になりますが、、、」
「薬屋をするから小さいものでいい。その代わり店の部分の他に調薬をする部屋も欲しい。予算は金貨30で」
「ほう、金貨30」
予算を提示すると若干にやけたな。子供が大金持ってたんでカモだと思ったのか。此処はハズレだな。このまま店舗選んでもぼられるに決まってる。サッサと切り上げよう。
「そうですな、店舗となりますと金貨30では些か足りませんが、、、今回だけは特別に」
「ならいい、他を当たる」
俺はシェリーを連れてサッサと部屋を出る。
「は?え、いや、少々お待ちを!」
「いや、あんたの所では買わねえよ。俺達が子供だってわかった時あからさまにガッカリしただろ」
「そ、それは」
「しかも予算を提示したらにやけたな?カモだと思っただろ」
「そ、そんなことは」
狼狽えるハゲを無視して店を出た。
此処は食料品を扱ってるし今後利用しようと思ってたけどやめだな。"我が"って言ってたし多分商会長だろ。アレが商会長とか商品を信用できねえよ。
その後、大商会を巡ったが同じようなもので6件目でようやく良さげなところを見つけた。
俺たちの相手をしたのは先代の商会長だという白い髭の老人だ。孫を見るような目が気になるが無視しよう。
「ふむ、あいわかった。薬屋をする店舗、調薬を行う別室付き、しばらくはそこで寝泊まりする、予算は金貨30じゃな?ちょっと待ってなさい」
そう言うと部下に何やら指示を出す。
それほどかからずに部下が戻ってきてその手には冊子があった。
「どれ、要望に合うのはこの辺りじゃろう。北区に4つ、南区に2つ、西区に12、中央区に5つじゃ」
「ふむ」
「西区は歓楽街じゃから価格の低い店舗が多いがのそこにしばらく済むということはそこで眠るんじゃろ?彼処は夜は五月蝿いから住むのには適さないんじゃよ」
「成る程」
この人良い人だな、場所の説明をしてくれる。商人としてはアレかもしれないけど隠居しているけら問題ないのだろうか。
「儂のオススメは此処じゃの。中央区で大通りにも面している。なかなかいい場所じゃと思うぞ」
「?結構いい場所に思うがどうして安いんだ?」
「此処は前の持ち主があまりいい評判を聞かない奴等での、人が近寄らなくなったんじゃ。儂が見るにお前さんはそう熱心に商売するつもりはないんじゃろ?」
「わかるのか」
「ほほ、長く生きとるからの」
好々爺という感じで笑う爺さんは結構好きになれそうだ。引退してスローライフを送っている感じが羨ましい。俺もシェリーを愛でながらのんびりと暮らしたい。
「そこにする。因みに元の持ち主は誰なんだ?」
「タタル商会という所じゃよ」
何処かで聞いたような、、、、あ、俺が殺した奴の家か。
「では、コレが鍵じゃ」
「ああ、ありがとう」
「いいんじゃ。ウチは色々なものを扱っておる。是非また来て欲しい」
契約書を交わして、鍵をもらう。コレで店舗を手に入れた。
「ここか。シェリー、これから俺たちが住む所だぞ」
コクコク
俺達は鍵を受け取ってすぐに店舗まで来た。店舗は中央区の大通りに面している所だが店が小さいせいか目立たない。周囲には大きい商会も多く、冒険者ギルドは遠いが商人ギルドが近くにある。買い出しには便利な所だ。
「よし」
気合いを入れて扉を開くとこじんまりとしたいい感じの店内だった。入って正面の左角にカウンターがあり、扉がある方以外の三方の壁に棚があり商品を並べられる。中央が空いているがテーブルか何かを置けばいいだろう。
カウンターの奥に扉があって、扉を開けると店側と同じ大きさの部屋がもう1つあった。そっちにはキッチン台のようなものがあった。キッチン台といっても水道があるわけでも、シンクがあるわけでも、コンロがあるわけでもない。本当に台と引き出しがあるだけだ。
そもそもこの世界に上下水道はなく、まずは井戸から持ってくるか、魔法で出すくらいだ。
「シェリー、取り敢えず掃除道具とベットを買ってくるぞ」
コク
「う〜ん、シェリー。ベットは一緒でいいか?」
コク
ベット2つも買っても置くとこないしな。それにこれから調薬道具を買ったり、薬草を仕入れたりしなきゃいけないから金は必要だしな。
「じゃあこれ、ウチの店に運んでくれ」
「おうよ。今すぐでいいか?」
「ああ」
「よし来た!、、おい!馬車を表につけろ!」
「「「へい」」」
まず俺とシェリーが向かったのは家具店だ。部屋に入る大きさのベットの中から選んだのだが、ベットの善し悪しなんてわからないから感覚で決めた。俺はまだ15歳だし、シェリーは年齢はわからないけど俺よりも身体が小さい。だから1つのベットで充分なのだ。
買った物は馬車で運んでくれるし部屋の中で組み立ててくれる。どうやって部屋に入れるのか不思議だったが入れてから組み立てるのなら簡単そうだ。
ベットを運び入れた後はもう一度買い出しに出る。今度は調薬道具だ。他の家具を揃えようかとも思ったけど、将来はあそこは店として住む場所はどこか別に買いたいから家具はあえて買わないことにする。家を買うときは絶対風呂付きにしてみせる。家庭菜園なんかもスローライフには良さそうだ。
調薬道具を揃えるともうほとんど金が残っていない。薬草は王都の外の森で自分で取れるけど毎回自分で調達するのは面倒なので何処かから仕入れたい。その為の金も必要だ。
「ハァ。シェリー、これから暫く闇ギルドで依頼を受けて金を稼ごうな」
コク
どこの世界でも金がなければ始まらない。
世知辛い世の中だ。
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