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【銃】の暗殺者

ヨナ

水の都





やってきました、水の都イース!

と、まぁ、無駄にテンション上げてみたけどついたその日は疲れていたから宿に直行した。魔の森で半年間眠っている時でさえ周囲を警戒し続けていた俺からしたら肉体的にはなんの問題もないんだけど精神的に疲れた。
今回の教訓は暇すぎても疲れるということだ。ティグさん達にお礼を言って母娘に別れを告げて宿に行って速攻で寝た。



で、翌日

目を覚ました俺は朝飯を終えてイースの観光に行くことにしたのだった。
イースの街は結構広い。歩きで回るのは大変だ、そこで利用されるのが辻舟だ。辻舟というのは水路に浮かべた2〜3人乗りの小舟のこと。要するにタクシーの舟版だ。


「おっちゃん、食料とかの市場があるところはどの辺?」
「食料?なら街の西側だな」
「じゃあそこまで乗せて」
「銅貨5枚だ」
「はいこれ」
「よしきた!さあ、乗れ」
辻舟のおっちゃんに市場まで連れて行ってもらうことにした。おっちゃんはこの道20年のベテランだそうで大した揺れもなくなかなか気持ちよく乗って入られた。
「ありがと、おっちゃん」
「おう。またいつでも声かけてくれ!」


市場についた俺は色々みて回る。この世界には自動車や飛行機などがないため長距離を短時間で移動できる手段がない。そのため街の市場に出る作物は周辺地域で取れるものとなるため街によって市場に並ぶものは大きく違う。
アイシスは魔の森の資源が1つの産業となっているためそこで取れるものが多く市場に並んでいた。例えば魔物から取れる素材である肉、毛皮、角、牙、爪など、それから魔の森で取れる果実や薬草などだ。
このイースではやはり川魚が多い。それから小麦だろうか、豊富な水を利用して育てているんだろう。米もないかと期待したが残念ながらなかった。対して肉類はそれほどなかった。聞いたところによるとこの辺りに出る魔物は水生の魔物が殆どなんだそうだ。因みにこの世界には家畜は存在しない。


「あー、市場に来たけど魚買っても調理する場所がないな」
アイテムバックの中も時間は流れているので腐るものは腐る。だから生ものは入れておけない。
「しょうがない、屋台で我慢しよう」
俺は目についた旨そうなものを片っ端から買って行く。魚の塩焼き、よくわからない蒲焼き、魚の切り身の入った汁物、他にも色々食ったがどれもうまかった。


腹ごしらえを終えた俺は当てもなくプラプラと街を歩く。ティグさんが次の街に行くのは3日後なのでそれまでは暇なのだ。その間は観光をして時間を潰すことになる。


「うん?なんとなく雰囲気が変わってきたな」
街を歩いていると食べ物の店はなくなり、屋台もなくなる。だが人の多さはかわっていない。周囲の店の呼び込みの盛況さ変わっていないが、、、ここは
「おや、ジョンさん。こんなところでお会いするとは」
そんな時に声をかけて来たのはティグさんだった。
「ティグさん、ここは」
「ええ、奴隷市場です」
そう、ここは奴隷市場だったのだ。商品が並んでいなかったのは呼びかけをしているその人自身が商品だったからというわけだ。
「私は契約奴隷の更新に来たのですがジョンさんは何故ここに?」
「いえ、街をふらふら歩いていたらここに辿り着いたもので」
「成る程。そうだ、私がこの奴隷市場を案内いたしましょう。ジョンさんが気に入った奴隷がいましたら買えばよろしい」
「そう、ですね。見るだけ見てみましょう」
こうして奴隷市場をティグさんに案内してもらうことになった。


「この辺りで呼び込みをしているのは全員契約奴隷です」
周囲にいる奴隷は呼び込み、、、というかずっと自己アピールをしていた。契約奴隷になる人は金に困っている人なので綺麗な格好はしていないがそれでも精一杯汚くないようにしているのが見て取れる。要するに彼らは就活中なのだ。
奴隷は人間だけでなく獣人達も多くいた。、、、アレかな、奴隷を買えばモフモフさせてくれるのかな。仕事内容は俺にモフモフされることってのは流石にダメか。

自分は力が強い、文字が読める、計算ができる、何でもするなどどうにか買ってくれと呼びかけてくる。ティグさんが所有している奴隷も以前にここで買ったそうだ。
「契約奴隷を買うのは私のように商店を開いているものが殆どです。契約奴隷は奴隷とはいえ半分従業員ですから養わないといけません。だからジョンさんが買うには向かないでしょうね」
「そうですね。今の俺は収入が不定期ですし、やってもらいたい仕事もないですから」



「ここからが借金奴隷です」
先程までとは打って変わって静かな場所に来た。店の前には鉄格子があり、牢屋のようになっている。そこに複数の人がいた。顔色は一様に悪く、絶望しているようだった。
借金奴隷はこの先強制労働が待っていて借金額に届くまで働かされ続ける。みんな目が合うたびに慌ててそらしている。強制的に働かせられる未来しかないのだから出来るだけ買われたくないのだろう。なんだかいたたまれなくなってくる。まぁ、どうにか解放してやりたいなんて思うほどの正義感は持ち合わせてはいないが。
事業に失敗したか、酒に溺れたか、詐欺に引っかかったか知らないが借金なんだから自己責任だ。この世界には戸籍なんてないので奴隷になる前に姿を消すことも出来たはずだ。それをしなかったのだからしょうがない。

「やはりジョンさんは普通とは違いますね」
「?というと?」
「ジョンさんはまだ15歳くらいでしょう。その年頃の子は中途半端な正義感を持っていることが多いですから彼らを助けてあげようなんて言い出すんです」
「それはそれは、、、先の見えていない」
「ええ本当に。助けた場合のメリットはその時だけ自己満足に浸れることだけだというのに」
俺とティグさんは困ったものだと首を振る。



「ここからは犯罪奴隷です」
更に進むとまた雰囲気が変わった。借金奴隷と同じく牢屋に入れられているが更に足枷と首輪がついて鎖で繋がれている。
それでも怒鳴り散らしているものや睨みつけているもの、自分はやってないと叫ぶもの、色々だ。思ったよりも反抗的なものが多い。
「ジョンさんが買うのでしたら借金奴隷か犯罪奴隷でしょうが借金奴隷の方がいいと思います。犯罪奴隷は高額ですから」
「どれくらいです?」
「ふむ、一概にどれくらいと言えません。性別、種族、健康状態、年齢、経歴などで大きく値段が変わってきます。私はお目にかかったことはありませんが過去には白金貨で取引された犯罪奴隷がいたとか」
「うわぁ」
白金貨とかやばい。なにそれ。傾国の美女とか?希少な能力を持っているとかかな?


そんなことを思いながら進んでいると1人の奴隷が目に留まった。10歳前後の少女で髪の色は黒に近い紺色、他の奴隷とは違い大人しくしているので目立つ。怒っているわけでも憎んでいるわけでもない、さりとて絶望しているわけでもないその眼に俺は惹かれた。なんというか無垢な眼だ。



「ティグさん、この子を買う」
俺は迷わずそう言った。





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