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転生しました。本業は、メイドです。

岡パンダ

ー16ー訪れた・・・

活気に溢れる町の大通り沿いにある一軒の小さな古い店。

『本』と書かれた木製の看板がぶら下がっているその店は、看板がなければ何の店かも店かどうかもわからない、そんな外観をしていた。


一つしかない窓からの外光だけが光源の薄暗い店内には、ぎっしりと本が詰まった背の高い本棚がいくつも並んでおり、入りきらない本は本棚近くの台車に何冊も積まれている。店というよりは書庫といった方が合っているかもしれない。


そんな本で溢れた狭い店内の奥へ進むとそこには小さなカウンターがあり、年配の男と中年の恰幅のいい男がカウンター越しに話をしていた。


「…ほう、中々の情報だな。で、いくらだ?」


恰幅のいい男が年配の男に問うと年配の男は右手で『3』を表した。それを見た恰幅のいい男は苦笑いをして口を開く。


「はっ、金貨30枚か。相変わらずだな。まぁ、しかたないレベルの情報ではあるが……なぁ、俺の持っている情報で割引してくれないか?………損はないぜ?フェンリルについてだ。」


恰幅のいい男の言葉に年配の男の眉がピクリと動いた。


「……聞こうか。」


この店は表向きは古い稀覯本きこうぼんや専門書を扱うマニア向けの本屋だが、裏の仕事は情報を売り買いする情報屋。

本を買いにくる客よりも情報の売買に来る客の方が多い。


「あぁ、実はな……」


中でも『フェンリル』の情報は価値が高い為提供される情報が多いが、ほとんどガセばかりだ。それだけフェンリルの隠蔽工作が優れているということだろう。


「それは、本当か……。」


「あぁ、間違いない。どこの家かまではわからないがな。」


だが、もちろんガセではない情報もある。そして、店主である年配の男はそれを見抜く事ができる。それはただこの道のプロだからという訳ではない……。


「……代金はいい。相殺だ。」


「おぉ、本当か!ありがとよオヤジ!また来るぜ。」



ーーーギィィ、カランカラン


「こんにちわ。」


話が終わり、恰幅のいい男が上機嫌で椅子から立ち上がると同時に店の玄関のドアが開いた。外の光が逆光になって顔はよく見えないがシルエットからして女性の様だ。


「お、客か。じゃあまた宜しく頼むぜ。」


恰幅のいい男は店主に挨拶すると玄関に向かって歩き出し、入ってきた女性とすれ違う。迷い無く奥へ進む彼女はこの店の常連だろうか。

恰幅のいい男はこの空間に若い娘がいることに違和感を覚えつつもそのまま外へ出ていった。





ーーーー本屋(情報屋)ーーーー




「やぁ、メル。外で待たせてすまなかったね。」


「いえ、そこまで待っていませんのでお気になさらず。」



休みを頂く理由、それは月に1~2度この店に来る為。


ここは本屋兼情報屋。


そして、


「こないだ送ってくれた報告書の返事、フェンリルの本部から届いてるぞ。」


フェンリルの情報拠点である。


「あ、それとこないだの襲撃者だがこっちで処理しといたからな。」


先日グランベール家に奇襲をかけてきた賊の事だ。


「申し訳ありません。私のせいで……。」


私は前世の記憶が戻った後、オヤジさんと『殺さない』約束をした。その為、今は彼がその部分・・・・を担ってくれている。


「はっはっはっ、『殺人ドール』の見る影もないなぁ。まぁ、わしにとっては嬉しい事だ。頻繁にある事では無いし、お前はそれでいい。処理はわしにまかせておけ。」


彼、『オヤジ』さんは私の亡き両親の親友で、私が幼い頃の武術の先生だった人だ。今はここの責任者として本屋兼情報屋をしながらこの辺り一帯に潜伏、潜入している仔犬達の管理、フェンリルの情報管理、世間の動向の把握を行っている。


このような情報拠点は地域ごとに存在しており、仔犬達は最低週に一度必ず最寄りの拠点に現状報告書を提出し、月に一度は拠点に足を運び、報告した事に対する本部からの返答や連絡事項を聞くことを義務付けられている。

このせいで私は月に一度は必ず休みを取らなくてはいけないというわけだ。


ちなみに報告は一般的な郵便では無く、フェンリル専用のウィングバードを秘密裏に飛ばし一度拠点に届いた後、隠密の得意なフェンリルが直接本部に届けるシステムになっている……らしい。





「私の我が儘をきいて下さりありがとうございます。」


私が『殺さず』にいれるのはこの人のおかげだ。本当に感謝している。


「あーあーやめやめ、わしが良いといっとるんだからそれでいいだろう!もう仕事の話をするぞ!まずこないだの報告書にあった質問の回答からだ。リト!」


オヤジさんが店の奥に声をかけると、「はぁ~い」と元気な声が聞こえ少年が紙の束を持って現れた。


「はい!オヤジさん!本部からの報告書諸々です!こんにちわ、メルさん!」


この元気な少年リトはオヤジさんがどこかのスラムで拾ってきた子で、現在14歳。焦げ茶色の短髪につり上がり気味の糸目は開いているのかいないのか分からないくらい細いが、ニコニコしている様に見えて可愛らしくて和む。


ここへ来て2年だが、オヤジさん曰く『もう教えること何もない』らしい。何者だよ。



「こんにちわ、リト。」


ニコニコと元気に笑うリト。

今のリトからは想像できないが、拾った当初は人間不振で大変だったらしい。

オヤジさんが私と似ていると言っていたのでたぶん『見た目』が原因で何かあったのだろう。



「メルさん、月に1~2回しか来てくれないから僕寂しいです。。」



キュン。


オヤジさんが私の事をどう話したのか知らないが、滅多に来ない私に懐いてくれた様で、ここへ来ると必ず私の隣でオヤジさんと私の会話をニコニコしながら最後まで聞いている。可愛い。


余談だがゲームには二人共出てこない。フェンリルはメルの裏切りで明るみに出てすぐ『壊滅した』という事になりゲームのストーリーから消える為、出るタイミングが無かったのだろう。


登場していたらリトは人気出てただろうな。絶対。




「はっはっはっ、本当にリトはメルが好きだなあ。それで、質問の件だが回答はyesだ。頭領は魔女との取引を始めた。内容の記述はないからたぶん極秘なんだろうな。」


魔女と取引……もう、なんか嫌な予感しかしないな。


「そんな深刻な顔をするなよ。取引自体は最近始まった事だが、魔女との関わりは今に始まった事ぢゃない。前の組織から関わりはあった……。」


「…え、そうなのですか?」

前の組織ということは父が頭領だった頃か……知らなかった。



「まぁな。今回どんな取引かはわからんが、そのうち何かしら本部からあるだろう。わしも少し調べてみるさ。だからお前は大人しく待ってろよ。」


「……はい。」


腑に落ちないが、実際私には何もできないので待つしかない。下手に動いて何かあって取り返しがつかないことになったら困るし……なるべく大人しくしていなくては……。




「よし、いい子だ。で、メル。お前にもう1つ話さなくちゃいけないことがある。」


オヤジさんの顔が急に険しい表情に変わり、真剣な眼差しで私を見た。

何かあったのか?嫌な予感がする……。


「なん…ですか?」


私の中の何かがザワザワしている。


「いいか?落ち着いて聞けよ?ーー












ーーーシルヴィア・グランベール嬢の命が狙われている。」







ーーーーーーーーー



ーーーゲームのメルは必ず、シルヴィアに自分の素性を明かした後死んでしまうーーー


私はその事実がどういう事を意味しているのか

記憶を取り戻した瞬間、感じ取ってしまったのです。



だから私は決めたのです。固く決意したのです。



お嬢様と共に生きるために為に

決して、決して諦めずに




そのフラグ・・・・・と闘い続けると。




ーーーーーーーーーー




「……詳しい話を聞かせてください。」



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