転生しました。本業は、メイドです。
ー13ー
蝋燭の灯りが揺れる、薄暗く窓の無い部屋に二人の男がいた。
1人は黒いフードつきのローブで顔を隠した男、もう一人は上等そうな服を着た初老の男。
初老の男は持っていた鞄から重そうな布袋を取りだし丸テーブルの上に置いた。
「金ならいくらでも払う。。」
フードの男は布袋を手に取り中を確認するとニヤリと口角を上げ、そのままローブの中にしまう。
「ほぉ、で、依頼内容は?」
フードの男は明らかに上機嫌な口調で初老の男に問う。
それに対し初老の男は眉間にシワを寄せ、若干額に汗を滲ませながら重い口を開いた。
「……国王の宰相の長女、シルヴィア・グランベールを殺してくれ。」
それを聞いたフードの男は、ハハッと軽く笑うと上機嫌なまま初老の男に答えた。
「なるほど……いいだろう。我ら、『フェンリル』に任せておけ。」
会話はそれで終わり、初老の男は早々に部屋から出いき、フードの男だけが部屋に残った。
フードの男はテーブルの上の蝋燭の炎に視線を移しフッを息を吹き掛けた。当然炎は消え、部屋は完全な闇と化す。
「さぁ、はじめましょうか。」
直後、フードの男だけのはずの室内に妖艶な女の声が突如響き、
そして気配は蝋燭の炎のようにフッと消えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「シルヴィア、今度一緒に出掛けない?」
「あ、兄上ズルいです!僕も一緒に行きたいです!」
「ダメ。」
「そんなぁ~!あ、このメルの作ったクッキーおいしい!」
「ーコソコソ、メル、この状況は一体……。」
「ーコソコソ、私にもわかりません。」
「シルヴィア、聞いてる?」
「は、はい!聞いてますわ!お出掛けですわよね!是非!」
今私達の目の前には、最近婚約した相手であるリカルド・ウィルヘルム殿下とその弟君であるアーノルド・ウィルヘルム殿下が座ってお菓子を食べている。あれ、なんかデジャブ。
リカルド様は婚約後アポなしで頻繁に遊びに来るようになり、なぜかアーノルド様もたまにくっついて来るようになった。
「よかった。明後日でいいかな?朝迎えに来るよ。」
「兄上!僕も行きたいです~!」
「だから、ダメだってば。」
「あの、どこに行かれるんですか?」
「あぁ、森を抜けた先の町に隣国の行商が来ているらしくてね。珍しい物も沢山あってとても賑わっているそうなんだ。頻繁に来るわけぢゃないからこの機会にどうかと思って。」
「そうなんですか!?是非行きたいです!!」
「わぁ~!兄上!尚更僕も行きたいです!」
「ダメ。」
「兄上の……ケチ。」
「アーノルド様、お土産を買ってまいりますわ!!」
「シルヴィア、優しい……。」
あ、パーティーとかお茶会では無いからメルも連れていけるかも!!
「リ、リカルド様、あの、メルも一緒に宜しいですか……?」
「ふふ、シルヴィアは本当にメルの事が好きだね。僕は構わないよ。」
や、やったぁ~~!!
「お嬢様、私は一緒に行けませんよ?」
え!え!?なんで!!
「日帰りのお出掛けで、しかもリカルド様がお迎えにいらっしゃるのですよ?リカルド様の従者の方もいらっしゃいますし、普通はこちら側は付いていきませんよ。」
「そ、そうなのですか!?」
「まぁ、そうだね。日帰りだしね。」
そうだったのかー!!メルと一緒に行けると思ったのに……。
「お嬢様、私にもお土産をお願い致しますね。」
「……わかったわ。」
しかたない、素敵なお土産を見つけてプレゼントしよう。。
ーーーーーーーー
「シルヴィア、でわまだ明後日に。」
「また遊びに来ますね!」
「はい、リカルド様。アーノルド様もまたお待ちしておりますね。」
「リカルド様、アーノルド様、お気を付けてお帰りくださいませ。」
ーバタンッ
「……はい!作戦会議はじめます!!座ってメル!」
「かしこまりました!」
玄関で二人を見送った後自室に戻った私は作戦会議をすることにした。メルにも座るように言うと、サササッと紙とペンを用意して私と向かい合って座った。
「二人きりでお出掛けとかハードル高いわ……お兄様とは何度もあるけど、婚約者と二人きりなんて……何話そう!!どうしよう!!」
「お嬢様なら話すことは湯水のように溢れて来ますから問題ありません。問題があるとすれば…………ん?よく、考えたら何も問題無いではありませんか。では、作戦会議を終了致します。」
「ちょっとぉぉぉ!!」
そう言うとメルはスッとエプロンのポケットに紙とペンをしまうとそそくさと出ていこうとしたので私は慌ててメルを捕まえて退室を阻止した。
「お嬢様、心配しなくても自然にしていれば大丈夫ですよ。木に上ったり豪快に走ったりガツガツ食事したり大声を出したりしなければ大丈夫ですよ。」
「メルそれ昔の私の事ぢゃん。」
「……?」
完全にとぼけてる!!昔はやんちゃだったけど、今は令嬢としての振舞いがしっかり身に付いているのでそんな事はしない。断じてしない。
私が気にしているのは、令嬢としての振舞いでは無く、婚約者としての振舞いなのだ!!
『リカルド様に好きな人が出来るまで』の婚約だとしても、現状正式な婚約者であることに変わりはない。
初めて出来た婚約者なのだ!!
そしてすなわち今回のお出掛けは人生初の『デート』!
緊張しないはずがない。。だから上手くいくように作戦を立てたいのだ。
「デートってどんな事するの!?」
「私もしたことが無いので解りかねますね。」
「Ah……。」
「そんな哀れんだ顔しないでください。普通にリカルド様のエスコートに任せて楽しめば宜しいのではないですか?リカルド様だってお嬢様に家族以外の異性に免疫が無いのは百も承知でしょうし。男性にリードして頂くのは恥ずかしい事ではありませんよ?」
「ぐぬぬ……免疫が無い……何も言い返せないわ……。でもまかせっぱなしも良くない気が……。」
「リカルド様からのお誘いですし、色々考えてらっしゃるかもしれませんよ?ですからお嬢様に出来ることは、当日お洒落をする事だけです。」
そう言うとメルはポケットから紙とペンを取りだし何か描き始めた。
「華やかにしたいですがお忍びですから、派手すぎてはいけませんね。」
メル、何を書いてるの?
「町を歩かれるなら、歩きやすい服装がいいですよね。」
あ、服を描いてるのね。でも、これどっちが上?
「髪型もアップに致しましょう。」
今から顔を描くの?あ、こっちが上だったのか。え、顔の半分がもじゃもじゃして……これもしかして横顔?髪型どうなってるの?
「靴はヒールの無いものにしましょうか。」
…あ、足かと思ってたのは服の裾か…。
「はい、こんな感じですかね。」
Oh……。
「ねぇ、馬描いてみてくれない?」
「馬ですか?突然ですね。えーとまず……」
「………だから、なんで頭から描かないの……。」
メルが最初に描いたのは関節の多すぎる足だった。
メルは、馬は難しいから仕方がないと言ったが、その後描いてもらった猫も足から描いて関節が多かった。
そしてこの後わたしはメルの絵を使用人達と家族に見せメルの画力の無さが話題となったが、その思いがけないメルの才能に気を取られたせいで作戦会議は忘れ去られ、再度開かれることなく当日を迎えることになってしまった。
メル……まさかこれを狙っていたんぢゃ………いや、ないか。
1人は黒いフードつきのローブで顔を隠した男、もう一人は上等そうな服を着た初老の男。
初老の男は持っていた鞄から重そうな布袋を取りだし丸テーブルの上に置いた。
「金ならいくらでも払う。。」
フードの男は布袋を手に取り中を確認するとニヤリと口角を上げ、そのままローブの中にしまう。
「ほぉ、で、依頼内容は?」
フードの男は明らかに上機嫌な口調で初老の男に問う。
それに対し初老の男は眉間にシワを寄せ、若干額に汗を滲ませながら重い口を開いた。
「……国王の宰相の長女、シルヴィア・グランベールを殺してくれ。」
それを聞いたフードの男は、ハハッと軽く笑うと上機嫌なまま初老の男に答えた。
「なるほど……いいだろう。我ら、『フェンリル』に任せておけ。」
会話はそれで終わり、初老の男は早々に部屋から出いき、フードの男だけが部屋に残った。
フードの男はテーブルの上の蝋燭の炎に視線を移しフッを息を吹き掛けた。当然炎は消え、部屋は完全な闇と化す。
「さぁ、はじめましょうか。」
直後、フードの男だけのはずの室内に妖艶な女の声が突如響き、
そして気配は蝋燭の炎のようにフッと消えた。
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「シルヴィア、今度一緒に出掛けない?」
「あ、兄上ズルいです!僕も一緒に行きたいです!」
「ダメ。」
「そんなぁ~!あ、このメルの作ったクッキーおいしい!」
「ーコソコソ、メル、この状況は一体……。」
「ーコソコソ、私にもわかりません。」
「シルヴィア、聞いてる?」
「は、はい!聞いてますわ!お出掛けですわよね!是非!」
今私達の目の前には、最近婚約した相手であるリカルド・ウィルヘルム殿下とその弟君であるアーノルド・ウィルヘルム殿下が座ってお菓子を食べている。あれ、なんかデジャブ。
リカルド様は婚約後アポなしで頻繁に遊びに来るようになり、なぜかアーノルド様もたまにくっついて来るようになった。
「よかった。明後日でいいかな?朝迎えに来るよ。」
「兄上!僕も行きたいです~!」
「だから、ダメだってば。」
「あの、どこに行かれるんですか?」
「あぁ、森を抜けた先の町に隣国の行商が来ているらしくてね。珍しい物も沢山あってとても賑わっているそうなんだ。頻繁に来るわけぢゃないからこの機会にどうかと思って。」
「そうなんですか!?是非行きたいです!!」
「わぁ~!兄上!尚更僕も行きたいです!」
「ダメ。」
「兄上の……ケチ。」
「アーノルド様、お土産を買ってまいりますわ!!」
「シルヴィア、優しい……。」
あ、パーティーとかお茶会では無いからメルも連れていけるかも!!
「リ、リカルド様、あの、メルも一緒に宜しいですか……?」
「ふふ、シルヴィアは本当にメルの事が好きだね。僕は構わないよ。」
や、やったぁ~~!!
「お嬢様、私は一緒に行けませんよ?」
え!え!?なんで!!
「日帰りのお出掛けで、しかもリカルド様がお迎えにいらっしゃるのですよ?リカルド様の従者の方もいらっしゃいますし、普通はこちら側は付いていきませんよ。」
「そ、そうなのですか!?」
「まぁ、そうだね。日帰りだしね。」
そうだったのかー!!メルと一緒に行けると思ったのに……。
「お嬢様、私にもお土産をお願い致しますね。」
「……わかったわ。」
しかたない、素敵なお土産を見つけてプレゼントしよう。。
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「シルヴィア、でわまだ明後日に。」
「また遊びに来ますね!」
「はい、リカルド様。アーノルド様もまたお待ちしておりますね。」
「リカルド様、アーノルド様、お気を付けてお帰りくださいませ。」
ーバタンッ
「……はい!作戦会議はじめます!!座ってメル!」
「かしこまりました!」
玄関で二人を見送った後自室に戻った私は作戦会議をすることにした。メルにも座るように言うと、サササッと紙とペンを用意して私と向かい合って座った。
「二人きりでお出掛けとかハードル高いわ……お兄様とは何度もあるけど、婚約者と二人きりなんて……何話そう!!どうしよう!!」
「お嬢様なら話すことは湯水のように溢れて来ますから問題ありません。問題があるとすれば…………ん?よく、考えたら何も問題無いではありませんか。では、作戦会議を終了致します。」
「ちょっとぉぉぉ!!」
そう言うとメルはスッとエプロンのポケットに紙とペンをしまうとそそくさと出ていこうとしたので私は慌ててメルを捕まえて退室を阻止した。
「お嬢様、心配しなくても自然にしていれば大丈夫ですよ。木に上ったり豪快に走ったりガツガツ食事したり大声を出したりしなければ大丈夫ですよ。」
「メルそれ昔の私の事ぢゃん。」
「……?」
完全にとぼけてる!!昔はやんちゃだったけど、今は令嬢としての振舞いがしっかり身に付いているのでそんな事はしない。断じてしない。
私が気にしているのは、令嬢としての振舞いでは無く、婚約者としての振舞いなのだ!!
『リカルド様に好きな人が出来るまで』の婚約だとしても、現状正式な婚約者であることに変わりはない。
初めて出来た婚約者なのだ!!
そしてすなわち今回のお出掛けは人生初の『デート』!
緊張しないはずがない。。だから上手くいくように作戦を立てたいのだ。
「デートってどんな事するの!?」
「私もしたことが無いので解りかねますね。」
「Ah……。」
「そんな哀れんだ顔しないでください。普通にリカルド様のエスコートに任せて楽しめば宜しいのではないですか?リカルド様だってお嬢様に家族以外の異性に免疫が無いのは百も承知でしょうし。男性にリードして頂くのは恥ずかしい事ではありませんよ?」
「ぐぬぬ……免疫が無い……何も言い返せないわ……。でもまかせっぱなしも良くない気が……。」
「リカルド様からのお誘いですし、色々考えてらっしゃるかもしれませんよ?ですからお嬢様に出来ることは、当日お洒落をする事だけです。」
そう言うとメルはポケットから紙とペンを取りだし何か描き始めた。
「華やかにしたいですがお忍びですから、派手すぎてはいけませんね。」
メル、何を書いてるの?
「町を歩かれるなら、歩きやすい服装がいいですよね。」
あ、服を描いてるのね。でも、これどっちが上?
「髪型もアップに致しましょう。」
今から顔を描くの?あ、こっちが上だったのか。え、顔の半分がもじゃもじゃして……これもしかして横顔?髪型どうなってるの?
「靴はヒールの無いものにしましょうか。」
…あ、足かと思ってたのは服の裾か…。
「はい、こんな感じですかね。」
Oh……。
「ねぇ、馬描いてみてくれない?」
「馬ですか?突然ですね。えーとまず……」
「………だから、なんで頭から描かないの……。」
メルが最初に描いたのは関節の多すぎる足だった。
メルは、馬は難しいから仕方がないと言ったが、その後描いてもらった猫も足から描いて関節が多かった。
そしてこの後わたしはメルの絵を使用人達と家族に見せメルの画力の無さが話題となったが、その思いがけないメルの才能に気を取られたせいで作戦会議は忘れ去られ、再度開かれることなく当日を迎えることになってしまった。
メル……まさかこれを狙っていたんぢゃ………いや、ないか。
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