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転生しました。本業は、メイドです。

岡パンダ

ーメルの過去③ー

グランベール家に来てすぐの私は、


「今日から君達と同じ使用人として働く事になったメルだ。皆、仲良くしてくれ。さぁ、メル自己紹介して?」


「う、はい。メルです。今日から宜しく………お願いします。」


ーービクゥッ


その視線だけで他の使用人達を怯えさせる程の刺激的な見た目をしていた。


「とりあえず、体を綺麗にして髪も整えようか。」


アンドレア氏……旦那様は私にそう言い、私はメイド長のフリージアさんにお風呂に入れて貰える事になった。


「あの、自分で入れる……から!」


「動かないで!ほらっ!逃げない!」


右目の包帯は死守したが、それ以外はひん剥かれて全身を洗われた。


「………あなた酷く傷だらけね。それに痩せすぎよ。辛かったわね。」


私は傷の治りが早い方だったが、母が死に食事をろくに取らなくなってから傷がなかなか直らなくなった。

その為私の全身は任務で出来た傷だらけで、普通の人が見たら目を背けたくなるような状態だった。それでもフリージアさんは、キズを労り丁寧に丁寧に私を洗ってくれた。

この時の私はなんとも思ってなかったが、今の私だったらフリージアさんの優しさに泣いていただろう。



全身綺麗になり髪を整えてて包帯を眼帯に変えても、当然元々の私の目付きは変わることは無く、特に2才上のリアさんは相当私を怖がっていた。

なんとか近づこうと努力をしてくれているのは分かったが、つい目線を送るとその場でフリーズしガタガタと震えていた。


私はなんとか笑おうと努力したが、殺人ドールになってから笑っていなかった為作り笑いも満足に出来なかった。

一人で鏡の前で練習したが上手く行かない。

そんな時フリージアさんが自分と笑顔の練習をしようと言ってくれた。

自分では上手く笑えていると思っても全然笑えていないようで、何度もフリージアさんに指摘された。スパルタだった。


ということは、シルヴィア嬢……お嬢様にあった時に向けた笑顔も上手く出来ていなかったということだが、あの時のお嬢様は全く怖がっていなかった。

周りが暗かったおかげもあったのかもしれない。

あの時怖がられていたら今ここにはいなかったかもしれないので本当に奇跡だったと思う。



「わたしも一緒にやりたい!!」


そしてそれからもお嬢様の存在はいつだって私を助けてくれた。

笑顔の練習も3人でやった。


私の作り笑いも徐々に様になって来て、使用人のビクつく回数も減り、リアさんとも会話出来るようになった。



二週間程たった頃、お嬢様は令嬢の作法の授業をめちゃくちゃ嫌がって家族を困らせた。

「いやです!やりたくないです!!」

元々嫌いな様子だったが、それが爆発したらしい。

「シルヴィア、いい加減にしなさい!お前は貴族令嬢なんだよ?しっかり作法を身に付けないといけない。我慢しなさい。」

「うわぁぁーん、嫌ですー!!」


「シルヴィア、がんばったら美味しいお菓子をあげるわよ?」

「……嫌ですー!!」


「シルヴィア、がんばったら僕の宝物をあげるよ。」

「ぐす、ぐす、……お兄様の宝物……?…………でも嫌ですー!!」


どんなに説得しても、物で釣ってもお嬢様は嫌がった。

さすが頑固者だ。


家族も使用人もお手上げ状態でどうしようか悩んでいた頃、自室に籠ったシルヴィアに私は会いに行った。

何か作戦があるというでも無く、ただ会いに行った。

この時の私はまだメイドとしての修行は本格的には始まっておらず、『生活に慣れながら使用人の仕事を見学する』段階だった。


ーーーコンコン


「シルヴィア……?メルだけど、入ってもいい……?」

本格的に始まってからでいいと言うことで、この時はお嬢様呼びも敬語も免除されていた。(シルヴィアが駄々をこねた為)


「……うん。」


返事を聞き部屋に入ると、お嬢様はベッドに腰掛けてションボリしていたので、私はお嬢様の前に膝をついて座わった。


「シルヴィア、なんでそんなに嫌がるの?」


「だって、だって、疲れちゃうよ。言葉遣いだっていっぱい覚えなきゃいけないし、作法だって……。走り回りたい、思いっきりごはんもお菓子も食べたい!!」



「…………私もこれから沢山覚えなくちゃいけない。」


「え?」


「ここにいる為に、シルヴィアと一緒にいる為に沢山覚えなくちゃいけないの。」


「……。」


「私、知らないことばっかりで、きっと上手く行かなくて辛くなったりすると思う……でも、シルヴィアと一緒にいたいから頑張るって決めたの。」


「メル……!わたしも!わたしもメルと一緒にいたい!」


「私がんばってシルヴィア付のメイドになるから、そしたら私と二人の時は普通でいいよ。自然なシルヴィアでいいよ。」


「……わかった。メルががんばるなら、わたしも、がんばる!約束する!」



この日からお嬢様は嫌がりながらも授業をしっかり受けるようになり、私も本格的にメイドの研修を始めた。

それからお嬢様は一層私になつき、私は家族からの信頼も得ることが出来た。


この頃の私は、『仕事の為にどうにかしなくては』という気持ちしか無かったが、シルヴィアやグランベール家を思う気持ちが芽生えていたんだと思う。


グラベール家に来て食事も美味しいと感じるようになった。

疲れも感じるようになった。楽しい、嬉しいはまだハッキリしなかったが気持ちが高揚する事があるようになった。

私は確実に『ドール』では無くなっていったのだ。




そして月日は流れお嬢様が11才の誕生日を迎えてしばらく経った頃、

あの日がやってくる。


私が前世を思い出す、運命の日が。


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