転生しました。本業は、メイドです。
ー1ー
お嬢様が勉強の為に家庭教師と自室に入った後、わたしはシフォンケーキを作るため調理場へ向かった。
昼食の仕込みがすでに始まっており、料理人達が慌ただしく動いている。
「お、メルちゃん!お菓子作りにきたのかい?」
気さくな感じで声をかけてきたのは料理長のベンさんだ。本名はベンジャミンだけど、みんなベンさんと呼んでいる。
「ベンさん、皆さん、お忙しいところ申し訳ありません。いつもの奥のスペースお借りしますね。」
「そんな聞かないで勝手に使っていいって言ってるだろ!メルちゃんの場所なんだから!」
私は調理場の隅っこをお菓子作りの為に間借りしていて、お菓子作りに必要な調理器具や材料を揃えている。お嬢様の誕生日ケーキを作ろうとしばらく練習していたのがきっかけで、それ以来このスペースでたびたびお菓子作りに精を出している。
「メルちゃん、今日は何作るんだ?」
「お嬢様のリクエストでシフォンケーキです。」
「…。」
言った途端にベンさんが真顔になった。
聞いた他のシェフ達も作業の手を止め私に視線を送って来ている。
「……今日は膨らむといいね。」
真顔だったベンさんが急に眉毛を下げ哀れんだ顔で言った。
他のシェフを見るとやはり哀れんだ表情で頷いている。
そしてポンポンと私の肩を叩き笑顔を向けるべんさん。
その顔が『どうせ無理だろうけどせいぜい頑張れよ』と言ってるように見えた。
カッチーン。
「大きなお世話です。私の事はほっといて皆さん仕事をして下さい。」
そう言ってギンッと鋭い視線をベンさん含むシェフ達に送るとヒィッと小さく悲鳴をあげたシェフ達がバタバタと作業に戻っていき、ベンさんも「ごめんごめん」と私の頭を撫でた後作業に戻っていった。
よし、今日こそはふわっふわっにしてやる。
~1時間半後~ トゥルトゥー
「Oh...。」
わたしの目の前にはオーブンから出したばかりのペシャンコのシフォンケーキと、
「ぶふっ、、うん、そう、だよな、、メルちゃんの、ふふっ、シフォンケーキは、こうぢゃなくちゃね、ふ、ふははははっ」
爆笑するベンさん。
他のシェフ達も目を合わせず肩を震わせている。
仕 事 を し ろ 。
「ねぇねぇ、メルちゃん、一口食べていい?」
「……どうぞ。で、いかがですか?」
ベンさんはいつも出来たばかりのお菓子を一口食べたいと言ってくる。そして、
「うん、不味くはないね。」
安定のこのコメントである。
膨らむ系以外は美味しいと言ってくれるが。
前世ではお菓子作りなんてしたことはなかった。
今世になって始めた事だが、それにしてもおかしい。
何度ベンさんに教えてもらっても、何度分量を変えてチャレンジしても、膨らむ系のお菓子は膨らまない。
呪いか?悪役だから?《膨らまない呪い》か?なんて地味な呪いなんだ。認めんぞクソが。
あ、ヤバいヤバい前世の口の悪さが出てしまった。
「お!もう午前の授業終わるな!昼食後のデザートに出してやれよ。シルヴィア嬢ちゃん喜ぶぞ!」
ベンさんは時計を見てそう言うと、いつの間に用意したのかホイップクリームの乗った皿を出してきた。
ベンさん、いつのまにホイップクリームを!!
ありがたく皿を受け取り食べやすく切ったシフォンケーキを乗せ、昼食の乗った台車に乗せる。
「ありがとうございました。残りのシフォンケーキはお召し上がり下さい。では、失礼致します。」
いつも余ったお菓子をお裾分けしているが、どうせなら成功したお菓子をお裾分けしたいのが本音だ。
でもベンさんは、
「いつもありがとな!皆で食うよ!」
と言ってどんなにペシャンコでも喜んで貰ってくれる。
他のシェフ達も。
本当にいい人達ばかりだ。
次は安全安心なクッキーを焼いてべんさん達に配ろうかな。
さぁ、お嬢様の所に行こう。
昼食の仕込みがすでに始まっており、料理人達が慌ただしく動いている。
「お、メルちゃん!お菓子作りにきたのかい?」
気さくな感じで声をかけてきたのは料理長のベンさんだ。本名はベンジャミンだけど、みんなベンさんと呼んでいる。
「ベンさん、皆さん、お忙しいところ申し訳ありません。いつもの奥のスペースお借りしますね。」
「そんな聞かないで勝手に使っていいって言ってるだろ!メルちゃんの場所なんだから!」
私は調理場の隅っこをお菓子作りの為に間借りしていて、お菓子作りに必要な調理器具や材料を揃えている。お嬢様の誕生日ケーキを作ろうとしばらく練習していたのがきっかけで、それ以来このスペースでたびたびお菓子作りに精を出している。
「メルちゃん、今日は何作るんだ?」
「お嬢様のリクエストでシフォンケーキです。」
「…。」
言った途端にベンさんが真顔になった。
聞いた他のシェフ達も作業の手を止め私に視線を送って来ている。
「……今日は膨らむといいね。」
真顔だったベンさんが急に眉毛を下げ哀れんだ顔で言った。
他のシェフを見るとやはり哀れんだ表情で頷いている。
そしてポンポンと私の肩を叩き笑顔を向けるべんさん。
その顔が『どうせ無理だろうけどせいぜい頑張れよ』と言ってるように見えた。
カッチーン。
「大きなお世話です。私の事はほっといて皆さん仕事をして下さい。」
そう言ってギンッと鋭い視線をベンさん含むシェフ達に送るとヒィッと小さく悲鳴をあげたシェフ達がバタバタと作業に戻っていき、ベンさんも「ごめんごめん」と私の頭を撫でた後作業に戻っていった。
よし、今日こそはふわっふわっにしてやる。
~1時間半後~ トゥルトゥー
「Oh...。」
わたしの目の前にはオーブンから出したばかりのペシャンコのシフォンケーキと、
「ぶふっ、、うん、そう、だよな、、メルちゃんの、ふふっ、シフォンケーキは、こうぢゃなくちゃね、ふ、ふははははっ」
爆笑するベンさん。
他のシェフ達も目を合わせず肩を震わせている。
仕 事 を し ろ 。
「ねぇねぇ、メルちゃん、一口食べていい?」
「……どうぞ。で、いかがですか?」
ベンさんはいつも出来たばかりのお菓子を一口食べたいと言ってくる。そして、
「うん、不味くはないね。」
安定のこのコメントである。
膨らむ系以外は美味しいと言ってくれるが。
前世ではお菓子作りなんてしたことはなかった。
今世になって始めた事だが、それにしてもおかしい。
何度ベンさんに教えてもらっても、何度分量を変えてチャレンジしても、膨らむ系のお菓子は膨らまない。
呪いか?悪役だから?《膨らまない呪い》か?なんて地味な呪いなんだ。認めんぞクソが。
あ、ヤバいヤバい前世の口の悪さが出てしまった。
「お!もう午前の授業終わるな!昼食後のデザートに出してやれよ。シルヴィア嬢ちゃん喜ぶぞ!」
ベンさんは時計を見てそう言うと、いつの間に用意したのかホイップクリームの乗った皿を出してきた。
ベンさん、いつのまにホイップクリームを!!
ありがたく皿を受け取り食べやすく切ったシフォンケーキを乗せ、昼食の乗った台車に乗せる。
「ありがとうございました。残りのシフォンケーキはお召し上がり下さい。では、失礼致します。」
いつも余ったお菓子をお裾分けしているが、どうせなら成功したお菓子をお裾分けしたいのが本音だ。
でもベンさんは、
「いつもありがとな!皆で食うよ!」
と言ってどんなにペシャンコでも喜んで貰ってくれる。
他のシェフ達も。
本当にいい人達ばかりだ。
次は安全安心なクッキーを焼いてべんさん達に配ろうかな。
さぁ、お嬢様の所に行こう。
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