声を失った少年の物語
14.ハルミナの町へ
俺達は目的地であるハルミナの町へ足を踏み入れた、
まず伝わってきたのは賑やかな雰囲気だった。
商売をする人の大きな声、走り回る少年たちの燥ぐ声などとても平和そうだ。
『ハルミナの町、とてもいいところですね。』
「そうですよね、ここは商業が盛んで冒険者ギルドもある事から人がとても集まってくるんです。」
そう言いながらナリィさんは肩に下げていたバッグから地図を取り出し俺達に見せて来た。
「この町の高台の方へ向かう道の途中に大きな建物が見えますよね、それが目的地の冒険者ギルドです。」
俺は高台の方を見ると確かに、大きな建物がある。そこに至るまでの道にもたくさんの人や店などがあった。
『では、早速向かいたいと思うのですが一点だけ気になった事があったので聞いてもいいですか?』
「大丈夫ですよ。」
少しナリィさんは首をかしげながら了承した。
『先ほど地図を見せてもらった時に街の端の部分が黒く塗りつぶされていた所が気になったもので、その場所には何があるのかなと思いまして。』
そう俺が答えるとナリィさんは表情を暗くしながら答えた。
「そこの場所には私も行ったことがないのですが、父たちが言うには貧民街、通称スラムがあるとのことです。この地図が黒く塗りつぶされているのは貰った時からです。」
貧民街か、このように表が賑やかな場所でも裏があるということか。
『ごめん、辛い事を聞いちゃって。』
「大丈夫です、案内したいと言ったのは私ですので!後クロさんは見たところ年上のようなので私の事は呼び捨てで構いませんよ。」
『じゃ、ナリィ改めて案内を頼むよ。』
「はい、こちらですクロさん。」
ナリィはどことなく嬉し気な様子で俺達の先導を再び始めたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は歩きながらふと猫に変化している師匠に念話で話しかけた。
『師匠俺がもし冒険者となって依頼を熟すようになったら、師匠はどうするんです?』
『どうするって、付いて行くに決まってるじゃないか。他の姿にも変化でもして戦闘にも参加するさ。』
師匠の表情は猫で今窺えないが、きっと元の姿だったら「僕がじっとしてると思う?」とにやけ顔になっているに違いない。
『そう言うと思ってましたよ。』
『よく分かったね、偉いよクロック。』
俺はむかついたので、猫になっている師匠の尻尾を引っ張った。
『いだだだッ!ごめん、ごめんって。』
少しやり過ぎたか?師匠は猫ながらもハァハァと息を切らしている。
「クロさん着きましたよ、ここが冒険者ギルドです。」
俺が師匠をいじめている間にどうやら目的地へ到着したようだ。
ナリィさんが指をさす方向を見てみると先ほどの遠くから見ても大きかった建物があり、マジかで見てみるととてつもなく巨大な建物だったことが分かった。
『こんなに大きかったんですね…』
俺はこの建物を見て思わず立ちすくんでしまった。
「大きいも何も、ここが冒険者ギルドの本部ですからね。」
こんなものが他の町にもあるのか!?
「安心してください。こんな大きな建物は他の町にはありませんから。」
ナリィさんが俺の表情を読んで答えてくれたようだ、何故かは知らないが安心した。
「じゃ入りましょうか。」
ナリィさんの先導の元俺達はギルド本部へと入って行った。
その時はまだ周りから見られていた視線には気づいてはいなかった。
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