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声を失った少年の物語

響夜

10.食事とこれから




エリーンさんに連れられて食堂みたいな所へ来ている。

「食事を作ってくるからここに座って少し待っていて。」

そういうとエリーンさんは調理をしに奥へと入って行った。

私は椅子へと座り周りを見渡す、所々埃をかぶっているところがあるがそれを除けば傷はなく綺麗なものだと思う。

さっきエリーンさんの名前を聞いたとき何かを忘れているような感覚がしたんだけど、上手く思い出せない。大事なことを忘れているような気がするけど、まぁいいか。

しばらく経ち奥からエリーンさんが奥から出てきた、手には手作りであろう料理がある。

「ささ、出来たよ。おかわりもあるからどんどん食べてね。」

『はい、いただきます。』

出てきたものは、肉の入ったスープとパン、それと野菜の入った器。近くには多数の果物が入った籠があった。

食べるためスープをスプーンで掬い口へと運ぶ。

その瞬間体に伝わる拒絶反応、僕はびくっと体を震わせた。

「どうしたの、そんなに美味しかった?」

『はい…。とても美味しいです。』

私はやや引きつり気味になりながら答える。

美味しいとしか言えないじゃないか!助けてもらった恩人の作った料理に対してまずいなんていうなんて恩知らずにも程があるよ。
うん、本当だったら美味しいかもしれない。僕がたまたまこの味に合わないかっただけだろう。

そうに違いないと決めつけ、もう一度スープを口に運ぶ。

やはり不味かった…。

「そうか、それは良かった。この量で足りなかったらまた新しい料理でも作るよ。」

僕は焦った、まだこんな料理が出てくるのかと。けど、まずいという事を理由に断るのは駄目だと思いこう言った。

『すみません、食事は美味しいのですが元々私は小食でこの量で十分です。お気遣いありがとうございます。』

「あ、そう?食べながらでいいからさっきの事について考えておいてくれると嬉しいな。」

さっきの事、弟子についての事だろうか。

『弟子の事ですか?』

「そうだよ、もし万が一に君がまた襲われることになった時の対抗手段を持っておいた方がいいと思うしね。」

言っていることはもっともだ、声を失う前までに稽古していた魔法は詠唱式のものだ、声のない今非詠唱で使える魔法は先ほど教えてもらった念話だけで、自分の身を守る攻撃魔法などは会得していない。

もし現状の私が襲われた時頼りになるのは、声を必要としない剣術のみだ。
しかし、相手は魔法を使用してくるかもしれない。そうなると圧倒的に不利だ。

ここでエリーンさんに弟子として迎えてもらい、無詠唱魔法を伝授してもらう。
この場にエリーンさんと共にいる間は身の危険はないと思う。

だから私はエリーンさんの提案を受けることにしようと思う。

『エリーンさん、私は貴方の元で魔法の勉強をしたいです。そしていつかは、家に戻れなくとも色々な場所を旅して回りたいです。』

先ほどエリーンさんが言っていた通り今、家に戻り元の生活に戻ることは絶望的だと思う。
現在はとても帰る事は出来ないけれど、いつかまた戻れるという事に希望を持ち今私が出来ることをやって行こうと思う。

「よし、分かった。君は今日から僕の弟子だ!明日から魔法の勉強など頑張って行くよ!
 私の事は師匠と呼びたまえクロック君。」

『分かりました、師匠。』

エリーンさん改め師匠は、私から師匠と呼ばれたからかとても嬉しそうな表情をしている。
「師匠か…弟子を取って一度は呼ばれてみたかったんだぁ…」と小声で呟いている。

ここが私が今日から生活する場所。









こうして私と師匠の師弟生活が始まった。







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