魔法世界の例外術者《フェイク・マジック》 - 魔力とは無力である -
夏休みといえば:プール1
それから何日か経った後の夕方ごろ。
「はい、ケンジくん! マジックデバイスでテレパシー通信ができるようにしておいたよ!」
「おお……」
笑顔でデバイスを渡す三縁に、俺はよくわからずただ返事をするしかできなかった。
「試しに私にかけてみるか。えーっとね、このアイコンをタップして番号を入力するんだけど……」
と、三縁がすいすいと使って俺に説明していく。
図書館の日以来、三縁はコンピュータに張り付いたままで、色々いじっていたのは知っていたが……何かすごいものを作ってしまったらしい。
「で、これが私のテレパシー番号ね。じゃあいくよ!」
「お、おう」
えーっと、このボタンを押せばいいんだっけ?
と俺が押してみると、マジックデバイス越しから
『やっほー!』
という三縁の元気な声が聞こえる。
ちらりと隣を見てみるが、三縁は一切口を開いておらず、依然とニコニコしているだけだ。
『ケンジくんは声を出さないといけないからね』
「お、おう」
『あと、その状態のまま話されても声が小さいし、私の声も少し聞こえにくいでしょ? マジックデバイスの上の部分にスピーカー、下の部分にマイクがあるから上の部分は片耳につけて、それでそのまま下半分は口元に寄せて……』
「こ、こうか?」
俺が言われた通りにできているのかわからないが、まあ言われた通りにやると、耳からさっきより大きな三縁の声が聞こえる。
『うん、オッケー! 成功したみたいだね!』
と、三縁が俺に無言でウインクする。
『じゃあ切ってみて。確かアイコンで切るボタンがあるから』
三縁の言われた通りにそれらしきボタンを押してみると、通信は切れた。
「うん、完璧!」
通信が切れたのを確認した三縁がニコッと笑う。
「三縁……お前、凄いな」
俺が正直な感想を言うと、三縁はキョトンとする。
「え? いや、デバイス自体にスピーカーとかマイクは最初から搭載されてたし、元々あのソフトにアプリの完成形が作られてたから、それをインストールさせただけ。簡単な事だよ?」
「いや、簡単な事って……」
俺には全くわけがわからないぞ。
独自に学習して使いこなせる所が三縁の凄い所だな、と思う。
「さあ、テストプレイが済んだ事だし、実践をしてみよっか!」
「実践……?」
俺が首を捻ると、三縁はコクリと頷く。
「はい、じゃあこの番号に通信よろしく!」
三縁がサラサラと番号を書いていく。
「えっ、お、おう……」
俺は特に考えず、言われるがままに番号を入力して発信ボタンを押す。
「ところでこれ、誰に繋がるんだ?」
という俺の疑問に、三縁はニッと笑って口を開く。
「千恵子っち」
『――もしもし』
三縁が答えたのと同時に聞き覚えがある声が耳に入ってくる。
「え、ちょっ……」
『……? 失礼ですが、どちら様?』
慌てふためく俺に豊岸が疑問符を浮かべている。
と、とりあえず、なんか言わないと。
「えっと、俺だ。志野ケンジ」
プツッ。
名を名乗った途端、通信が切れた。
「……切れたぞ?」
「あー……」
俺がとりあえずと言った形で報告すると、三縁は微妙な返事をする。
「千恵子っちだから仕方ないな……。じゃ、もっかいかけてみて」
「…………」
俺は何が言いたかったが、それより豊岸に切られたのが若干ムカついたので、言われた通りに掛け直す。
『――もしもし』
と、再び豊岸の声が聞こえてくる。
「俺だ、志野ケンジだ」
『失礼ですが、どちら様?』
「志野だ! 志野ケンジ! お前のクラスメイトの!」
『あぁ、なんだ、志野くんか。きちんと言ってくれないとわからないじゃない』
「さっきからそう言ってるだろうが……」
俺が呆れた声で言うと、豊岸がフッと笑う声がスピーカー越しに聞こえる。
『あら、そうだったかしら? ごめんなさいね、私どうでもいい事は忘れる主義なの』
「お前の頭はトリ頭か」
『頭がすっからかんな志野くんには言われたくないわ』
本日も豊岸の毒舌は稼働中みたいだ。
『というか、どうやって私と通話してるの? 貴方、テレパシー出来ないでしょう?』
「それは置いといて。えーと、三縁、要件はなんだ?」
「やっほー千恵子っち! 元気してるー?」
と、三縁がずいっと近づく。
『あら、三縁さん。ご機嫌よう』
「久しぶり! そっちはどう?」
『特にこれといったことはないわね。田舎町だし』
「そっかそっか。ところでさ、千恵子っち。今すぐこっちに来れる?」
『今すぐ? いや、まあ親には言えば大丈夫だけど、今すぐはちょっと無理があるわね……』
豊岸は少し困ったような声を出す。
俺もそれに同意だ。というか、何で今すぐなんだ?
「あ、行けるんなら大丈夫だよ。とりあえず急いで着替えとか荷物まとめといてね」
『え? それってどういう――』
「詳しくは優梨っちが説明してくれるから!」
『ちょ、三縁さんっ。待って、どういうこと――』
「じゃ、またねー!」
豊岸がよくわかってない内に、三縁は勝手に通信を切る。
「お前、酷いな……」
「ん?」
少し豊岸に同情する俺に、三縁はいやいやという風に手を横に振る。
「だって千恵子っちだよ? 何かと否定してきそうだからあれがベストなんだよ」
「あー……」
なんとなくわかる気がする。豊岸には強引なのがいいかもしれないっていうのは、俺も常々感じている。
……というか、俺も詳細を知らないんだが。何、どっかに行くの?
「さて、千恵子っちのOKは取ったね。それじゃ次は、はいっ」
と、また手渡される番号が書いてある紙。
「今度は誰だ?」
「優梨っち」
『はいっ、どちら様ですか?』
発信ボタンを押して間もなく、聞きなれた声がスピーカーから聞こえてきた。
なるほど、優梨か。それなら豊岸より話しやすい。
俺はさっきと同様、名を名乗るところから始める。
「俺だ。し――」
『ケ、ケケケケンジくん!? ほ、本物ですか!?』
「…………」
すげえ。
まだ名乗ってないのに、声だけで当てやがった。
なんだ、俺の声ってそんなに特徴的なのか?
「あー、まあ、何て言えばいいんだ……。えっと、本物だぞ」
『わ、わあっ! ケンジくん! 本物のケンジくんです! 握手してもいいですか!?』
「お前の中で俺はどういう認識になってるんだ……」
ヒーローショーの戦隊ものか何かか。
『ということはケンジくんと初通話ですね! なんだか新鮮です!』
「そ、そうか……?」
というか、テンション高いな優梨。何でそんなに元気なんだ? いや、俺のすぐ隣の子も元気の塊みたいな子だけどさ。
「はいはーい、失礼するよ。やっほー優梨っち!」
『あっ、三縁ちゃん! やっほーです!』
話が進まないことに焦れったくなったのか、三縁が割って入ってくる。
「千恵子っちの件だけどさ。OK取れたから、お願い!」
『あ、わかりました! じゃあ今から迎えに行きますね!』
「じゃあ報告は以上で! またねー!」
と、三縁は通話を切る。
「ところで、さっきから何の話をしてるんだお前ら?」
「まあそれは後で話すとして。次の人、いってみよう!」
と、三縁は再び番号を教えてくる。
うーん、とりあえず話してくれるみたいだし、まあいいか。どうせこれも知人の番号だろう。
発信ボタンを押すと、間もなくして聞き覚えがある声が聞こえる。
『もしもし、どうかしたかケンジ?』
プツッ。
そんな暑苦しい声が聞こえた途端、気が付くと俺は反射的に通話を切っていた。
「だめじゃねえか三縁。知らない人にかけさせちゃ」
「えっ、いや、うーん」
俺が叱るように言うと、三縁は曖昧に返事をして微笑む。
と、かかってくる通話。
「はい?」
『ケンジ、いきなり切るなんて酷いではないか!』
仕方なく出てみると、声の主である大崎シュウの少し泣きそうな声が聞こえてくる。
「いや、何の用だよお前。何もないなら切るぞ」
『自分から掛けておいて、それは酷いのではないか!?』
いや、別に俺は特に用事なんてないし。ぶっちゃけどうでもいい。
「っていうかなんで俺からだってわかったんだよ」
テレパシー能力でもついているのか、気持ち悪い。
『それはだな。“ケンジくんから電話が来た”と、さっき優梨くんから連絡と番号がきたからであって』
「個人情報が流出されている!?」
とりあえず、今の俺の目的は優梨の暴走を止めることなのではないのだろうか……。
『……と、話すことがないなら僕から話すことがあるのだが、いいか?』
「お好きにどうぞ……」
どうせ拒否しても面倒になるので、俺は適当に返事をする。
『実はだな、今ロンドンにいるのだが、それはそれは日本とは違った風景がなかなか』
「じゃあな」
割とどうでもよさそうな話だったので、俺は即座に切った。
「っていうかシュウに掛けた理由はあったのか?」
「特にないよー!」
「そうですか……」
なら、別にどうでもいいか。
「とりあえず、テレパシー通信の方に問題はないみたいだね」
「……そうだな」
何せロンドンにいるシュウにすら通じた。特にこれといった問題はないみたいだろう。
「さて、テストプレイも済んだことだし……そろそろ夕飯にしましょうか!」
「おっ、今日は何にするんだ?」
「えっとねえ……ん? ケンジくん、誰か忘れてない?」
「え?」
と、唐突に三縁に言われ、俺の目が点になる。
「ほら、もう一人掛けるべき相手がいなかったっけ?」
「掛けるべき相手? ……いや、俺自身なんでみんなに掛けたのか、よくわからないし……」
掛ける要素がないと言ってもいい。
そんな俺を見て、三縁ははぁと小さなため息をつく。……? 何か間違ったことを言ったのだろうか?
と、それが合図かのようにデバイスから着信がかかってくる。
表示されている番号を見る限り、まだ掛けたことない人物のようだ。一体、誰だろうか。
俺は少し疑問に思いながらも通話ボタンを押してみる。
『私のことを忘れてんじゃないわよっ!』
途端にそんな金切り声がスピーカーから聞こえ、思わず耳から遠ざける。
……というか、今の声。
「あ、京香か。どうしたんだ?」
『どうしたんだ、じゃないわよ! なんで他の人には掛けて、私には掛けないのよ!』
と、通話の主、京香はかなり怒っているようで、声に怒りを感じる。
『三縁、千恵子、優梨、シュウ……そこまで掛けたのならば、私にも掛けるべきでしょうがっ!』
「いや、掛けるべきでしょうがって……」
別に俺から掛けたわけじゃないんだけどな。
「京香っちはもっと積極的に攻めないとねー」
と、その隣で三縁がニコニコしている。……攻めるって、なんのことだろう?
「もう少しぐいぐい攻めないと他の人に盗られちゃうよ、京香っち?」
『え? 盗られる? 何が?』
と、京香もよくわかっていないらしく、疑問形で三縁に聞く。
その反応が予想外だったのか、三縁は少し驚いた顔をする。
「……京香っち、ケンジくんが他の女の子とイチャイチャするのは?」
『えっ、別にいいんじゃない? というか、今まさにそんな状況じゃない』
「……なるほど、これは複雑そうだ」
『……?』
京香の答えに三縁はうーんと唸る。……いったい、何の話をしているのだろうか?
「まあいいか。それより、京香っち、明日の日程をケンジくんに発表を!」
「明日の日程?」
三縁の言葉に、俺は首を捻る。
明日何かするつもりなのだろうかと疑問に思っていると、京香から驚いた声が聞こえる。
『えっ、まだケンジに言ってなかったの?』
「……言ってなかったもなにも、今初耳なんだが」
「なので、京香っちから発表をどうぞ!」
『……はあ。別に私が言わなくてもいいことだけど……まあいいか』
と、『ケンジっ』と京香が俺を呼びかけてから、明日の日程を俺に告げる。
『明日、プールに行くわよ』
「はい、ケンジくん! マジックデバイスでテレパシー通信ができるようにしておいたよ!」
「おお……」
笑顔でデバイスを渡す三縁に、俺はよくわからずただ返事をするしかできなかった。
「試しに私にかけてみるか。えーっとね、このアイコンをタップして番号を入力するんだけど……」
と、三縁がすいすいと使って俺に説明していく。
図書館の日以来、三縁はコンピュータに張り付いたままで、色々いじっていたのは知っていたが……何かすごいものを作ってしまったらしい。
「で、これが私のテレパシー番号ね。じゃあいくよ!」
「お、おう」
えーっと、このボタンを押せばいいんだっけ?
と俺が押してみると、マジックデバイス越しから
『やっほー!』
という三縁の元気な声が聞こえる。
ちらりと隣を見てみるが、三縁は一切口を開いておらず、依然とニコニコしているだけだ。
『ケンジくんは声を出さないといけないからね』
「お、おう」
『あと、その状態のまま話されても声が小さいし、私の声も少し聞こえにくいでしょ? マジックデバイスの上の部分にスピーカー、下の部分にマイクがあるから上の部分は片耳につけて、それでそのまま下半分は口元に寄せて……』
「こ、こうか?」
俺が言われた通りにできているのかわからないが、まあ言われた通りにやると、耳からさっきより大きな三縁の声が聞こえる。
『うん、オッケー! 成功したみたいだね!』
と、三縁が俺に無言でウインクする。
『じゃあ切ってみて。確かアイコンで切るボタンがあるから』
三縁の言われた通りにそれらしきボタンを押してみると、通信は切れた。
「うん、完璧!」
通信が切れたのを確認した三縁がニコッと笑う。
「三縁……お前、凄いな」
俺が正直な感想を言うと、三縁はキョトンとする。
「え? いや、デバイス自体にスピーカーとかマイクは最初から搭載されてたし、元々あのソフトにアプリの完成形が作られてたから、それをインストールさせただけ。簡単な事だよ?」
「いや、簡単な事って……」
俺には全くわけがわからないぞ。
独自に学習して使いこなせる所が三縁の凄い所だな、と思う。
「さあ、テストプレイが済んだ事だし、実践をしてみよっか!」
「実践……?」
俺が首を捻ると、三縁はコクリと頷く。
「はい、じゃあこの番号に通信よろしく!」
三縁がサラサラと番号を書いていく。
「えっ、お、おう……」
俺は特に考えず、言われるがままに番号を入力して発信ボタンを押す。
「ところでこれ、誰に繋がるんだ?」
という俺の疑問に、三縁はニッと笑って口を開く。
「千恵子っち」
『――もしもし』
三縁が答えたのと同時に聞き覚えがある声が耳に入ってくる。
「え、ちょっ……」
『……? 失礼ですが、どちら様?』
慌てふためく俺に豊岸が疑問符を浮かべている。
と、とりあえず、なんか言わないと。
「えっと、俺だ。志野ケンジ」
プツッ。
名を名乗った途端、通信が切れた。
「……切れたぞ?」
「あー……」
俺がとりあえずと言った形で報告すると、三縁は微妙な返事をする。
「千恵子っちだから仕方ないな……。じゃ、もっかいかけてみて」
「…………」
俺は何が言いたかったが、それより豊岸に切られたのが若干ムカついたので、言われた通りに掛け直す。
『――もしもし』
と、再び豊岸の声が聞こえてくる。
「俺だ、志野ケンジだ」
『失礼ですが、どちら様?』
「志野だ! 志野ケンジ! お前のクラスメイトの!」
『あぁ、なんだ、志野くんか。きちんと言ってくれないとわからないじゃない』
「さっきからそう言ってるだろうが……」
俺が呆れた声で言うと、豊岸がフッと笑う声がスピーカー越しに聞こえる。
『あら、そうだったかしら? ごめんなさいね、私どうでもいい事は忘れる主義なの』
「お前の頭はトリ頭か」
『頭がすっからかんな志野くんには言われたくないわ』
本日も豊岸の毒舌は稼働中みたいだ。
『というか、どうやって私と通話してるの? 貴方、テレパシー出来ないでしょう?』
「それは置いといて。えーと、三縁、要件はなんだ?」
「やっほー千恵子っち! 元気してるー?」
と、三縁がずいっと近づく。
『あら、三縁さん。ご機嫌よう』
「久しぶり! そっちはどう?」
『特にこれといったことはないわね。田舎町だし』
「そっかそっか。ところでさ、千恵子っち。今すぐこっちに来れる?」
『今すぐ? いや、まあ親には言えば大丈夫だけど、今すぐはちょっと無理があるわね……』
豊岸は少し困ったような声を出す。
俺もそれに同意だ。というか、何で今すぐなんだ?
「あ、行けるんなら大丈夫だよ。とりあえず急いで着替えとか荷物まとめといてね」
『え? それってどういう――』
「詳しくは優梨っちが説明してくれるから!」
『ちょ、三縁さんっ。待って、どういうこと――』
「じゃ、またねー!」
豊岸がよくわかってない内に、三縁は勝手に通信を切る。
「お前、酷いな……」
「ん?」
少し豊岸に同情する俺に、三縁はいやいやという風に手を横に振る。
「だって千恵子っちだよ? 何かと否定してきそうだからあれがベストなんだよ」
「あー……」
なんとなくわかる気がする。豊岸には強引なのがいいかもしれないっていうのは、俺も常々感じている。
……というか、俺も詳細を知らないんだが。何、どっかに行くの?
「さて、千恵子っちのOKは取ったね。それじゃ次は、はいっ」
と、また手渡される番号が書いてある紙。
「今度は誰だ?」
「優梨っち」
『はいっ、どちら様ですか?』
発信ボタンを押して間もなく、聞きなれた声がスピーカーから聞こえてきた。
なるほど、優梨か。それなら豊岸より話しやすい。
俺はさっきと同様、名を名乗るところから始める。
「俺だ。し――」
『ケ、ケケケケンジくん!? ほ、本物ですか!?』
「…………」
すげえ。
まだ名乗ってないのに、声だけで当てやがった。
なんだ、俺の声ってそんなに特徴的なのか?
「あー、まあ、何て言えばいいんだ……。えっと、本物だぞ」
『わ、わあっ! ケンジくん! 本物のケンジくんです! 握手してもいいですか!?』
「お前の中で俺はどういう認識になってるんだ……」
ヒーローショーの戦隊ものか何かか。
『ということはケンジくんと初通話ですね! なんだか新鮮です!』
「そ、そうか……?」
というか、テンション高いな優梨。何でそんなに元気なんだ? いや、俺のすぐ隣の子も元気の塊みたいな子だけどさ。
「はいはーい、失礼するよ。やっほー優梨っち!」
『あっ、三縁ちゃん! やっほーです!』
話が進まないことに焦れったくなったのか、三縁が割って入ってくる。
「千恵子っちの件だけどさ。OK取れたから、お願い!」
『あ、わかりました! じゃあ今から迎えに行きますね!』
「じゃあ報告は以上で! またねー!」
と、三縁は通話を切る。
「ところで、さっきから何の話をしてるんだお前ら?」
「まあそれは後で話すとして。次の人、いってみよう!」
と、三縁は再び番号を教えてくる。
うーん、とりあえず話してくれるみたいだし、まあいいか。どうせこれも知人の番号だろう。
発信ボタンを押すと、間もなくして聞き覚えがある声が聞こえる。
『もしもし、どうかしたかケンジ?』
プツッ。
そんな暑苦しい声が聞こえた途端、気が付くと俺は反射的に通話を切っていた。
「だめじゃねえか三縁。知らない人にかけさせちゃ」
「えっ、いや、うーん」
俺が叱るように言うと、三縁は曖昧に返事をして微笑む。
と、かかってくる通話。
「はい?」
『ケンジ、いきなり切るなんて酷いではないか!』
仕方なく出てみると、声の主である大崎シュウの少し泣きそうな声が聞こえてくる。
「いや、何の用だよお前。何もないなら切るぞ」
『自分から掛けておいて、それは酷いのではないか!?』
いや、別に俺は特に用事なんてないし。ぶっちゃけどうでもいい。
「っていうかなんで俺からだってわかったんだよ」
テレパシー能力でもついているのか、気持ち悪い。
『それはだな。“ケンジくんから電話が来た”と、さっき優梨くんから連絡と番号がきたからであって』
「個人情報が流出されている!?」
とりあえず、今の俺の目的は優梨の暴走を止めることなのではないのだろうか……。
『……と、話すことがないなら僕から話すことがあるのだが、いいか?』
「お好きにどうぞ……」
どうせ拒否しても面倒になるので、俺は適当に返事をする。
『実はだな、今ロンドンにいるのだが、それはそれは日本とは違った風景がなかなか』
「じゃあな」
割とどうでもよさそうな話だったので、俺は即座に切った。
「っていうかシュウに掛けた理由はあったのか?」
「特にないよー!」
「そうですか……」
なら、別にどうでもいいか。
「とりあえず、テレパシー通信の方に問題はないみたいだね」
「……そうだな」
何せロンドンにいるシュウにすら通じた。特にこれといった問題はないみたいだろう。
「さて、テストプレイも済んだことだし……そろそろ夕飯にしましょうか!」
「おっ、今日は何にするんだ?」
「えっとねえ……ん? ケンジくん、誰か忘れてない?」
「え?」
と、唐突に三縁に言われ、俺の目が点になる。
「ほら、もう一人掛けるべき相手がいなかったっけ?」
「掛けるべき相手? ……いや、俺自身なんでみんなに掛けたのか、よくわからないし……」
掛ける要素がないと言ってもいい。
そんな俺を見て、三縁ははぁと小さなため息をつく。……? 何か間違ったことを言ったのだろうか?
と、それが合図かのようにデバイスから着信がかかってくる。
表示されている番号を見る限り、まだ掛けたことない人物のようだ。一体、誰だろうか。
俺は少し疑問に思いながらも通話ボタンを押してみる。
『私のことを忘れてんじゃないわよっ!』
途端にそんな金切り声がスピーカーから聞こえ、思わず耳から遠ざける。
……というか、今の声。
「あ、京香か。どうしたんだ?」
『どうしたんだ、じゃないわよ! なんで他の人には掛けて、私には掛けないのよ!』
と、通話の主、京香はかなり怒っているようで、声に怒りを感じる。
『三縁、千恵子、優梨、シュウ……そこまで掛けたのならば、私にも掛けるべきでしょうがっ!』
「いや、掛けるべきでしょうがって……」
別に俺から掛けたわけじゃないんだけどな。
「京香っちはもっと積極的に攻めないとねー」
と、その隣で三縁がニコニコしている。……攻めるって、なんのことだろう?
「もう少しぐいぐい攻めないと他の人に盗られちゃうよ、京香っち?」
『え? 盗られる? 何が?』
と、京香もよくわかっていないらしく、疑問形で三縁に聞く。
その反応が予想外だったのか、三縁は少し驚いた顔をする。
「……京香っち、ケンジくんが他の女の子とイチャイチャするのは?」
『えっ、別にいいんじゃない? というか、今まさにそんな状況じゃない』
「……なるほど、これは複雑そうだ」
『……?』
京香の答えに三縁はうーんと唸る。……いったい、何の話をしているのだろうか?
「まあいいか。それより、京香っち、明日の日程をケンジくんに発表を!」
「明日の日程?」
三縁の言葉に、俺は首を捻る。
明日何かするつもりなのだろうかと疑問に思っていると、京香から驚いた声が聞こえる。
『えっ、まだケンジに言ってなかったの?』
「……言ってなかったもなにも、今初耳なんだが」
「なので、京香っちから発表をどうぞ!」
『……はあ。別に私が言わなくてもいいことだけど……まあいいか』
と、『ケンジっ』と京香が俺を呼びかけてから、明日の日程を俺に告げる。
『明日、プールに行くわよ』
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