勇者な俺は魔族な件
第二十五話 ようやく『準備完了』
ということを二週間ほど繰り返して今に至る。
この二週間でシーナも魔法の威力、発動タイミングが上達してそれなりに戦えるようになった。
ただ、魔法以外の攻撃をしようとしないのが不安な点だが……いずれは一人でも戦えるようになるだろう。
またデルドニとベレドニの二人もそれなりに戦闘経験があることがわかった。
そういえば『七変化のドニー兄弟(笑)』だなんて二つ名もあるんだし、昔から二人で冒険者として(はたまたいつぞやのコソ泥として)過ごしてきたのかと思ったのだが、どうにもそうではないらしい。
「俺たちは元々技術屋なんですよ。俺が元魔術研究師で、ベレドニが元魔道具開発師です」
「ちなみに俺とデルドニは兄弟なんかじゃないっす。ただ偶然、名前の後ろに『ドニ』が被っただけなんすよ」
ということらしく、この二人は元々戦闘向きの仕事をしてなかったらしい。
しかし、それならば何で冒険者になったのか気になるところだが……まあこのブサイク二人のことだ。
どうせ下らない理由なのだろう。
その他ミミヤという受付嬢もこの二週間で態度が変わった、悪い方向に。
最初はFランクの俺たちがA級魔獣と出会ったと聞いたとき、すごく心配してくれた。
それはもう、ものすごく。
まあ心配するのは当然だろう。
まだ冒険者に成り立ての奴らが、上ランクの魔獣と出会ったのだから。
普通は死ぬか逃げるかだ。
だが、そんな事を二週間繰り返している内にミミヤ嬢は心配いらないと判断したらしい。
報告しても「そうですか」と素っ気なくなった。
しかも、俺たちがやっていることは他の冒険者のクエストを妨害するギリギリの行為。
偶然遭遇したと言って誤魔化して何も言われてないが、向こう側からしたら違反気味な俺たちなど気に食わないだろう。
最初は怯えていたがだんだんと普通に接してくれるようになり、そして次第に不審感を抱き始めて素っ気なくなった──まあそんな感じだ。
そして他冒険者の邪魔をするような行為を繰り返すということは、他の冒険者たちからも毛嫌いされる。
まあ、元々この格好のせいで最初から警戒されていたが。
そんな中で、ゴーラのような普通に接してくれる冒険者は稀であると言えよう。
「しかし、お前強いんだな。まさか赤竜も狩っちまうなんて」
「前からそう言ってるだろ?」
ビールもどきのアルコールを含んだ飲み物をジョッキを片手に絡んでくるゴーラ。
ちなみに今はさっき約束した夕食会。
場所はよく利用する巨大な食事処だ。
木造建築の店だけではなく、机や椅子も木製のウェスタン風な店で、雰囲気が結構好きだったりする。
「はっはっは、こりゃ将来が楽しみだ」
「ところでゴーラ、今日はいつに増して人が多くないか……?」
「んん? ああ、今日は複数パーティーでキングフットを狩ってきたからな。その全員を呼んだってわけだ」
「なるほどな」
こうしてゴーラたちのパーティーと食事をする(もしくは奢る)のは、これが初めてではない。
なのでゴーラがリーダーを務めるパーティー『蒼の剣撃』のメンバー十人たちは、既に俺たちへの警戒は薄れている状態だ。
キングフットというのはA級の魔獣で、ウッドフットというC級魔獣を統一している魔獣らしい。
なんでも、ヤツの周りには数十体のウッドフットがいるために大勢で挑むのが定石だそうだ。
ちなみにどうしてこんなに魔獣に詳しくなったのかというと、全てデルドニから聞いたのだ。
なかなか物知りな奴で、魔物や魔獣の知識の他にもこの地域周辺で採れる植物の種類や、生息している動物の種類、更にブゾウテナの代表料理も知っていた。
「しかしいつ来ても美味いな、この店は」
「だろ? モストーボルの料理はどの地域より美味いんだぜ?」
得意げに竜の串焼きを振るゴーラ。
まあ確かに元いた世界の日本料理ほどではないが、それなりに美味しい。
討伐した魔獣の一部の肉などはこうして料理にされたりする。
黒い部分を切り取れば、魔獣も普通に食べられるようだしな。
デルドニとベレドニはジョッキを片手に、顔を真っ赤にしながら楽しそうに他の冒険者と語っている。
その隣にいるシーナも酒を飲んでいるのか、若干頬が染まっている気がする。
この世界で酒が飲めるのは十五歳かららしく、かく言う俺もこのビールもどきを飲んでみている。
しかし、元いた世界のビールがどんな味なのかわからない為に、どちらが美味しいのかはわからない。
ただまあ「こんなものか」という程度の味だと言っておこう。
「おいゴーラ、もう肉はないのか!?」
と、俺たちの間に割って入ってくる女性の声。
赤髪のショートヘアに赤目の女性。
俺より背丈はやや低めで、やや大きめの胸らへんだけに銀鎧を纏って他は軽装──というより布が少ない格好で、見ていて寒くなる。
腰には白と銀の大刀が二本下げられていて、そして何より特徴的なのが犬のような耳と後ろにチロリと見える赤毛の尻尾……つまり彼女は獣人族なのだ。
初めて見る顔だなと見ていると、赤毛の獣人族がこちらの視線に気がつく。
「き、貴様は!」
女性は警戒したように目を吊り上げ、ふーっと威嚇をし始める。
おお、恐い恐い。
「落ち着けアーミャ。アズマは悪いヤツじゃないって、言ってるだろ?」
と、興奮する女性を宥めにかかるゴーラ。
「おっと、そういえばこいつの紹介がまだだったな。こいつはアーミャ。『猛獣の祭壇』というパーティーの一人だ」
「ふうん」
女性──アーミャに対し、出来るだけにこやかに握手を求めてみる。
「俺はアズマだ。よろしくな」
「ふんっ、いくらゴーラがいい奴と認めようが、あたしは貴様のことを認めないぞ」
と、予想通りの反応。
アーミャは鼻を鳴らしてそっぽを向く。
まあ別にこいつなんてどうでもいいので、仲良くできなかろうとどうでもいいのだが。
ふと、俺の皿に盛られている竜の骨付き肉がまだ残っていることを思いだす。
……ふむ。
「そういえば肉が欲しいんだろ? 俺の余ってるからやるよ」
「なんだ貴様、超いい奴だな! ありがとう!」
あ、こいつ馬鹿だ。
食べ物一つで警戒を解くようなチョロさに若干引きつつも竜肉を渡してやると、アーミャは嬉しそうにパタパタと尻尾を振る。
この二週間でシーナも魔法の威力、発動タイミングが上達してそれなりに戦えるようになった。
ただ、魔法以外の攻撃をしようとしないのが不安な点だが……いずれは一人でも戦えるようになるだろう。
またデルドニとベレドニの二人もそれなりに戦闘経験があることがわかった。
そういえば『七変化のドニー兄弟(笑)』だなんて二つ名もあるんだし、昔から二人で冒険者として(はたまたいつぞやのコソ泥として)過ごしてきたのかと思ったのだが、どうにもそうではないらしい。
「俺たちは元々技術屋なんですよ。俺が元魔術研究師で、ベレドニが元魔道具開発師です」
「ちなみに俺とデルドニは兄弟なんかじゃないっす。ただ偶然、名前の後ろに『ドニ』が被っただけなんすよ」
ということらしく、この二人は元々戦闘向きの仕事をしてなかったらしい。
しかし、それならば何で冒険者になったのか気になるところだが……まあこのブサイク二人のことだ。
どうせ下らない理由なのだろう。
その他ミミヤという受付嬢もこの二週間で態度が変わった、悪い方向に。
最初はFランクの俺たちがA級魔獣と出会ったと聞いたとき、すごく心配してくれた。
それはもう、ものすごく。
まあ心配するのは当然だろう。
まだ冒険者に成り立ての奴らが、上ランクの魔獣と出会ったのだから。
普通は死ぬか逃げるかだ。
だが、そんな事を二週間繰り返している内にミミヤ嬢は心配いらないと判断したらしい。
報告しても「そうですか」と素っ気なくなった。
しかも、俺たちがやっていることは他の冒険者のクエストを妨害するギリギリの行為。
偶然遭遇したと言って誤魔化して何も言われてないが、向こう側からしたら違反気味な俺たちなど気に食わないだろう。
最初は怯えていたがだんだんと普通に接してくれるようになり、そして次第に不審感を抱き始めて素っ気なくなった──まあそんな感じだ。
そして他冒険者の邪魔をするような行為を繰り返すということは、他の冒険者たちからも毛嫌いされる。
まあ、元々この格好のせいで最初から警戒されていたが。
そんな中で、ゴーラのような普通に接してくれる冒険者は稀であると言えよう。
「しかし、お前強いんだな。まさか赤竜も狩っちまうなんて」
「前からそう言ってるだろ?」
ビールもどきのアルコールを含んだ飲み物をジョッキを片手に絡んでくるゴーラ。
ちなみに今はさっき約束した夕食会。
場所はよく利用する巨大な食事処だ。
木造建築の店だけではなく、机や椅子も木製のウェスタン風な店で、雰囲気が結構好きだったりする。
「はっはっは、こりゃ将来が楽しみだ」
「ところでゴーラ、今日はいつに増して人が多くないか……?」
「んん? ああ、今日は複数パーティーでキングフットを狩ってきたからな。その全員を呼んだってわけだ」
「なるほどな」
こうしてゴーラたちのパーティーと食事をする(もしくは奢る)のは、これが初めてではない。
なのでゴーラがリーダーを務めるパーティー『蒼の剣撃』のメンバー十人たちは、既に俺たちへの警戒は薄れている状態だ。
キングフットというのはA級の魔獣で、ウッドフットというC級魔獣を統一している魔獣らしい。
なんでも、ヤツの周りには数十体のウッドフットがいるために大勢で挑むのが定石だそうだ。
ちなみにどうしてこんなに魔獣に詳しくなったのかというと、全てデルドニから聞いたのだ。
なかなか物知りな奴で、魔物や魔獣の知識の他にもこの地域周辺で採れる植物の種類や、生息している動物の種類、更にブゾウテナの代表料理も知っていた。
「しかしいつ来ても美味いな、この店は」
「だろ? モストーボルの料理はどの地域より美味いんだぜ?」
得意げに竜の串焼きを振るゴーラ。
まあ確かに元いた世界の日本料理ほどではないが、それなりに美味しい。
討伐した魔獣の一部の肉などはこうして料理にされたりする。
黒い部分を切り取れば、魔獣も普通に食べられるようだしな。
デルドニとベレドニはジョッキを片手に、顔を真っ赤にしながら楽しそうに他の冒険者と語っている。
その隣にいるシーナも酒を飲んでいるのか、若干頬が染まっている気がする。
この世界で酒が飲めるのは十五歳かららしく、かく言う俺もこのビールもどきを飲んでみている。
しかし、元いた世界のビールがどんな味なのかわからない為に、どちらが美味しいのかはわからない。
ただまあ「こんなものか」という程度の味だと言っておこう。
「おいゴーラ、もう肉はないのか!?」
と、俺たちの間に割って入ってくる女性の声。
赤髪のショートヘアに赤目の女性。
俺より背丈はやや低めで、やや大きめの胸らへんだけに銀鎧を纏って他は軽装──というより布が少ない格好で、見ていて寒くなる。
腰には白と銀の大刀が二本下げられていて、そして何より特徴的なのが犬のような耳と後ろにチロリと見える赤毛の尻尾……つまり彼女は獣人族なのだ。
初めて見る顔だなと見ていると、赤毛の獣人族がこちらの視線に気がつく。
「き、貴様は!」
女性は警戒したように目を吊り上げ、ふーっと威嚇をし始める。
おお、恐い恐い。
「落ち着けアーミャ。アズマは悪いヤツじゃないって、言ってるだろ?」
と、興奮する女性を宥めにかかるゴーラ。
「おっと、そういえばこいつの紹介がまだだったな。こいつはアーミャ。『猛獣の祭壇』というパーティーの一人だ」
「ふうん」
女性──アーミャに対し、出来るだけにこやかに握手を求めてみる。
「俺はアズマだ。よろしくな」
「ふんっ、いくらゴーラがいい奴と認めようが、あたしは貴様のことを認めないぞ」
と、予想通りの反応。
アーミャは鼻を鳴らしてそっぽを向く。
まあ別にこいつなんてどうでもいいので、仲良くできなかろうとどうでもいいのだが。
ふと、俺の皿に盛られている竜の骨付き肉がまだ残っていることを思いだす。
……ふむ。
「そういえば肉が欲しいんだろ? 俺の余ってるからやるよ」
「なんだ貴様、超いい奴だな! ありがとう!」
あ、こいつ馬鹿だ。
食べ物一つで警戒を解くようなチョロさに若干引きつつも竜肉を渡してやると、アーミャは嬉しそうにパタパタと尻尾を振る。
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