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勇者な俺は魔族な件

風見鳩

第十九話 『冒険者』とは:皆の憧れ

 ロウ・ブロッサム国から去って三日目。

 まず俺たちが向かったのは、モストーボルから南東にある地域、ニチトールのブゾウテナという町だった。

「なんでそこに行くんだ?」

 と訊く俺に、デルドニが答えてくれる。

「ブゾウテナはですね、極めて安全な町と言われてるんですよ」
「極めて安全? なんだ、ロウ・ブロッサム国みたいに周り全てを壁で覆っているとかか?」
「いえいえ。多少の魔物や魔族が出ようと、それを狩ってくれる職業の者たちがこぞって集まっているからですよ」
「……ああ、なるほどな」

 つまり、冒険者の町ということか。

「聞いた限りだと兄貴は金を持ってないんでしょう? 魔族とも十分に戦えるし、冒険者として稼ぐ方がいいと思うんです」
「で、冒険者の登録はどこでも出来るから、まずは大量のクエストが受注されるブゾウテナに向かおうという事になったんすよ」

 デルドニの言葉に、ベレドニが付け足すように会話に加わる。

 ちなみに、このデルドニとベレドニはしばらく連れて行くことにした。

 まだこの世界に来てばかりの俺だけではなく、きっと元お姫様のシーナも様々なことに関して疎いといった感じだ。
 そこで、この世界の世間一般に詳しそう尚且使い勝手が良さそうなこの二人を一緒に連れて行き、色々なサポートをしてもらうことにしたのだ。

 いやしかし、冒険者か。

 この世界に来る前までは、自分は完璧超人だから何でも就職できると思っていたけど……。
 まさか冒険者に就職するとは夢にも思わなかったな。

「ぼ、冒険者……!」

 と、何やら頬を赤らめながら目を輝かせているのはシーナ。
 昔から冒険者に憧れていたという話もあるから、嬉しいのだろう。

「ところで、冒険者の登録ってのはどうすればいいんだ?」
「名前を登録すればいいだけっすよ」
「なんだそりゃ」

 名前を書いたら合格と言われている馬鹿校みたいな制度みたいだな。

「まあ冒険者ってのはそんなもんっすよ、何て言ったって自由ですからねえ」
「自由、ねえ……」

 ベレドニの言葉を反芻する。

 確かに自由かもしれないが、自由すぎるにも程があるんじゃないか?
 もっとこう、冒険者としての登録管理をしっかりするべきなのではないのだろうか。

 ……と考えてしまうのは、俺が元いた世界がそういう環境だったからだろうか。
 まあ、これがこの世界で当たり前の管理ならそれでいいのだろう。

「冒険者の階級はF、E、D、C、B、A、S、SS、SSS、Zと十段階あります」

 なるほど、そう考えるとレオナードとガリウムはかなり強い部類にあったんだな、とイケメン銀狼と残念イケメンロン毛の顔を思いだす。

「初めて冒険者となる者はSSS級を目指すでしょうが、まあ行っても凡人じゃS級止まりですかねえ」
「……ん? SSS級が目標なのか? Z級じゃなくて?」

 さっきの順番的に、Z級が一番上だと思っていたのだが……違うのだろうか?
 と謎めく俺に、デルドニとベレドニが渋い顔をする。
 更にわけがわからなくなると、俺の肩をトントンと叩く者が。シーナだ。

「あのですね、アズマくん……Z級冒険者は『危険人物』の象徴なんです」
「危険人物?」
「その、確かに強いは強いのですが……あまりの常軌を逸しているような強さと異常すぎる精神が故に、『魔の領域に達してしまった者たち』とも呼ばれています」
「ふーん……」

 おずおずといった感じで説明してくれるシーナ。

 危険人物か。

「危険人物って……どこがどう危険なんだ?」
「下手すれば一人で国を一つ消す事が可能とも言われてますね」
「なるほど、それは確かに危険だな」

 国一つって……Z級のやつらは、核兵器か何かかよ。

「あれ、そんなに強いんならむしろ歓迎しないか?」

 魔族からの護衛にも苦労しないし、他国との戦闘の時に即戦力になる。
 メリットは大きいはずだ。

「それもそうなんですが……何しろ彼らは異質な性格ばかりだそうで、そういうことには興味がないそうなんです……」
「……そうなのか」

 よくわからんが、とりあえずキチガイな性格が国とか人類の為に動くかと聞かれたら、「NO」と答えるだろうと覚えておこう。

「そういえば兄貴って、黒竜を一人で倒せるほど強いよな……」
「兄貴って、魔族の象徴となる黒が好きだよな……」
「っていうか、兄貴の名前に『マ』がつくよな……」
「兄貴って、いずれはZ級冒険者になるんじゃね?」
「「あり得るな」」
「おいこら、そこの二人。誰が危険人物になるだって?」

 なるほど、それならばZ級を目指そうと思う人は少ないだろう。

 わざわざ危険人物なんて呼ばれたくないからな。
 そう話し合っている間に、目の前から建物らしきものが見えてきた。

「あれが、そうか?」
「はい、あれがブゾウテナです」

 ユニコーンのような馬に引かれながら、俺たちは『冒険者の町』に足へと踏み入れることになる。


 * * *


「ここか……」

 看板に『ギルド』と書かれている山吹色の建物。

 俺たち四人はその目の前に立っていた。
 こうして目の前に立ってみると、少し緊張が走る。

 冒険者となる──その言葉から、自分の胸に秘めている何かをくすぐるような感覚がする。

 まだ見たことのない新境地が目の前に広がっているのだ。
 期待を胸に寄せて、俺はゆっくりと木製の両開きのドアを開けた。

 中へと入ると、十数人に及ぶ冒険者たちで賑わっている。

「お、おぉっ……!」

 その光景に、少し感動を覚える。

 如何にもお手製といった感じの円卓テーブルに座って、狩猟話で盛り上がる冒険者たち。
 動物を丸焼きにしたどでかい肉をそのまま食らいつき、かたわらにビールを一気飲みする冒険者たち。

 三メートルはありそうな巨大な掲示板にたくさんの羊皮紙が貼り出されており、その羊皮紙を受付嬢まで持っていってクエストを受注する冒険者たち。

 小説やゲーム、アニメで見たような光景が現実となって目の前にある。
 俺はこれほどない高揚感が湧き上がるのを感じていた。

 ……だが。

「……?」

 入ってきた俺の存在に気がつくと否や、賑やかだった周りはだんだんと静まり返ってしまう。

 怯えたような目つきで見る者や鋭い視線を向けている者、中には武器に手をかけている者までいた。

 何が彼らをそうさせているのか──その答えを見つけ出すのは極めて簡単だった。

「なんだあいつ……」
「黒い……鎧?」
「もしかして、マレティア……いや、奴は女だったな……」
「髪も黒いぞ……あいつ、魔族か?」
「…………」

 ああ、そうだった。

 全てを理解した途端、俺の中にあった高揚感は何処かに消え失せ、あったのはいつも通りの平常心だった。

 自分は何を勘違いしてたのだろうか。こんなこと、前にも経験していたのに。

 それは俺もみんなと平等だと思っていた中学生の頃。
 俺が異質な存在であることが明らかになったときに、俺一人で変わっていく空気。

 そうだ、自分は異世界ここでも、変わらない異質な存在なのだ。

「ア、アズマくん……」

 何か言いたそうにシーナが声をかけるが、それを無視して受付まで歩んでいく。

 あまりこの場所にいたくないからな、話なら別の場所でするとしよう。

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