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適性ゼロの魔法勇者

風見鳩

第13話 絶対に、許さない

 青髪少女に連れてこされたのは校庭だった。
 普段は授業で使う校庭で、何やら人だかりが出来ている。

 人ごみをかきわけて前へ進むと。

「オラァッ!」
「がっ!?」

 大柄の赤髪の男が西洋剣を振るう。
 ガドラと同じくらいの体格ではないだろうか。

 そして西洋剣に吹っ飛ばされるのは金髪の男子、ユアン。

 その瞬間、周りから歓声する者と落胆する者に分かれる。

「……これは?」
「見ての通り、喧嘩してるのよ」
「いや、そうじゃなくてな」

 こっちは真剣に聞いてると言うのに、おちょくってるのだろうか。

「向こうは剣技学科の人なんだけど、たまたま魔法学科わたしたちが通りかかって……」
「あー、なるほど」

 どうせ剣技学科と魔法学科の優劣とか、そういう理由なのだろう。

 というか俺の時といい、喧嘩が好きだなユアンよ。

「で、俺にどう助けろと?」

 喧嘩しているというだけじゃ、全く助けの内容がわからないのだが。

 まさか、喧嘩に加勢しろとか言うんじゃないだろうな。

「喧嘩に加勢して欲しいの」
「断る」

 青髪少女の言葉が予想通りすぎて、即座に否定の言葉が出てきた。

 うわ、すげえな俺。エスパーとかあるんじゃないだろうか。

「他所の喧嘩だろ? なんで俺が喧嘩に加わらなくちゃいけない」

 全くもって俺が加勢する理由がないじゃねえか。
 呆れかえる俺に、青髪の少女は目を潤ませる。

「……悪いのはあいつらよ」
「は? どういう──」
「ハル、行こう」

 と。
 理由を詳しく訊こうとしたところで、急に手を引かれた。

 リリヤが手を引いてきたのだ。

「こいつらの言うことなんて聞く必要なんてない。そうでしょ」
「ちょ、ちょっと」
「大体」

 少女の言葉を遮り、リリヤが口調を強める。

「この前、私たちを馬鹿にしてきたのは誰? ハルの話を聞かずに攻撃してきたのは誰?」
「そ、それは」
「私とハルを貶してきて、今度は助けて? ……都合が良すぎるんじゃない?」

 怒りをぶつけるようにリリヤは続ける。

 ……口では決して言わないが、お前も俺の話を聞かずに攻撃しようとしてたよな。

 だが真面目な雰囲気なので、決して口には出さないで心の中に留めておく。

「私はあの男がどうなろうと知ったことじゃない。ただの自業自得」
「…………っ!」
「喧嘩なら勝手にやっていればいい。私とハルには関係ない」

 何も言い返せず、噛み締めるように俯く青髪の少女。

 まあリリヤの言ってることは正論だしな。
 確かに、いきなり連れてきて助けろだなんて都合が良すぎる。

 というかただの喧嘩だし、勝とうが負けようがどっちだっていいだろ。
 俺が加勢する理由はない。

「ハッ、もう終わりか? 魔法学科様よ!」

 ふとそんな声が聴こえてくる。
 気になって見てみると、燃えるような赤い髪の男が嘲笑いながら地面に転がるユアンを見下した。

「所詮、魔法学科は魔法学科。底辺の学科か!」

 赤髪の男の言葉に湧き上がる周囲。
 まあ湧き上がっている大半は剣技学科の奴らだが。

 逆に暗い顔をしているのは魔法学科の面々。
 いずれも見たことがあるメンツから、同じ一年だろう。

「……だ、まれ」

 ユアンは身体中砂だらけになりながらも、立ち上がる。

「君が行ったことは決して許せない……! 何が何でも!」
「ああ? その辺の石ころを蹴ったことか?」
「石ころじゃない! 彼女だ!」

 ……彼女?

 ユアンの指差す方向を見てみると、そこにはボロボロの格好で泣きじゃくる女子がいた。
 制服の種類から見て、剣技学科だろう。

「彼女が弱いから……そんな理由で彼女をモノ扱いするのか! 集団で!」
「おいおい、俺らは実力主義の剣技学科だぜ? てめえらの温い魔法学科とはわけが違うんだよ」

 そういえば小耳に挟んだことがある。
 剣技学科は完全な実力主義で、優劣の関係が激しいようだ。

 つまり──彼女は、集団でいじめに遭っていたということか。

 じゃあ、あいつが喧嘩をしている理由は……。

「だから、弱いやつは剣技学科には要らない。なんせ、剣技学科の顔に傷がつくからな」
「……っ!」

 ユアンの魔力が一点に集中されていく。

「『フランシュペア』!!」

 程なくして生み出される炎の槍。
 だが……。

「……学習しねえな魔法学科ぁ!」

 男は一瞬で間合いで詰めると、ユアンの腹を蹴りつける。
 ユアンが再び地面を転がっていき、炎の槍は程なく消えてしまう。

 ──速い。

 少なくとも未経験者じゃない。
 というか、熟練者そのものの動きだ。

 これはユアンに勝ち目がないということは、誰が見ても明白だった。

 中には泣き出す人も出てきた。

「剣技、学科の顔に傷がつく、だと……」

 しかし、ユアンはそれでも立ち上がる。

「傷つけてるのは、君たちだ……!」

 もう立てないくらいにボロボロの癖に。

 金髪碧眼の男は諦めなかった。

「彼女に謝るまでは……絶対に、許さない!」

 …………。
 ……………………。

「リリヤ」
「……はあ」

 名前を呼んだだけだと言うのに、返ってきたのは呆れるようなため息だった。
 まるで、俺の考えがわかっているかのようだ。

「ローブ、持っといてくれ」

 自分のローブを投げると、それをキャッチするリリヤ。

「えっ……えっ?」

 未だ状況が掴めない青髪少女は突然グローブをはめて準備運動を始めた俺に目を白黒させている。

「よかったね、ハルがお人好しで」

 そんな彼女に、リリヤはイラつくかのように吐き捨てた。


 悪いなリリヤ。
 加勢する理由が出来ちまったんだ。

 群がっている人を掻き分けいき、まだ立ち向かおうとする勇敢な同士の肩を掴むと、後ろに押しのける。

「──選手交代だ、加勢するぜ」

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